ネコ耳の容疑者
耳が何度もピクピクする。
『な、何があったのだっ!異世界より召喚されたドラゴンとの戦いのあとかっ!?古より導かれし血のまぐわいかっ!?』
ランとロンは全身擦り傷。ヤマさんも服がぼろぼろ。
寮に帰ってみれば、誰もおらず、風呂上がりにリビングに来てみれば、負傷者が3名。
『え、エミリちゃん、バスタオルから溢れ出んとするその育ち盛りの双丘もたまらんね、チラリズムの極み。』
耳がピクピク。
さすがに、負傷者を張り倒す気にはならない。
額を小突く。
♦︎
『そんなことが・・・。』
『姉様が傷ついた、姉様が傷ついた、姉様が傷ついた・・・。』
帰ってからランはテーブルに目を伏せて、見開いたまま念仏のようにつぶやいている。
ヤンデレは面倒だ。地獄の火炎釜で茹で上げたい。
グツグツグツグツ。
『とにかく無事でよかったわ。はあ・・・。』
両手を後ろにつき、脱力する。
『いやいや、遅くなったねえ。』
ヤマさんとロンが鍋いっぱいの肉じゃがと、ご飯、味噌汁を運んできた。
『とにかく食べようか。お腹が一杯になれば冷静になれるからね。』
『姉様が傷ついた、姉様が傷ついた、姉様が傷ついた・・・。』
『ラン、私ご飯食べたい。』
ロンがランを上目遣いで見つめる。
『はっ!姉様!申し訳ありませんっ!食べましょう!!いや、食べさせてくださいっ!!』
『・・・そこは自分で食べて。』
『『『『いただきます!』』』』
とにかくガツガツ食べる一同。考えない。とにかく食べることに集中する。
肉!
米!
じゃがいも!
味噌汁!
米!米!米!米ーーーーーっ!!
わしわし
かっかっか!
食べまくる。食べまくり、食べまくる。
食べまくって、その多幸感のまま、一同は泥のように寝た。
♦︎
チュンチュン。
『う・・・っ。』
目が覚める。リビングの天井。畳の匂い。
体を起こす。
『いつつつ・・・。』
寝相が悪かったか、体が痛い。
ランもロンもヤマさんも、私も疲れきっていたのかご飯を食べたまま寝てた。
ヤマさんにいたっては、茶碗に顔を突っ込んだまま寝ている。
ランはロンを抱き枕にして寝ていた。
『・・・食器、かたさないと・・・。』
かちゃかちゃ。
『よっと・・・。』
台所に持っていく。
今日が日曜日で良かった。学校に行く気力はない。
ピンポーン。
『誰かしら、こんな早朝に。』
ドアを開ける。
『こちらはネコ耳族寮の嶺二寮ですか?』
耳がピクピク動く。
『おはようございます、朝早く申し訳ありません。私、〇〇警察署の刑事です。こちらにお住まいのロンさんに署までご同行願いたく馳せ参じました。』