襲来!襲来!襲来!襲来ッ!
『う、うわあああああっ!!』
間一髪。
腰が抜けた俺の股下の歩道に打ち付けられる、ナタ。こいつには明確な殺意を感じる。ナタは歩道に深く食い込み、抜くのに時間がかかっている。
くそっ、ここで死ぬのかっ!まだ、俺は死ねない。まだ俺は・・・。
なんとか這いつくばる。
『で、電話だっ!』
警察か。エミリちゃん?誰ならすぐ来てくれるのだ。
ブンッ!
ガンッ!
携帯が壊される。ナタでの殺害を諦めたのか、奴は首を絞めてくる。
『あ・・・が・・・っ。』
締め付ける腕を叩く。さながら、今にも獅子に喰われそうな子鹿のごとく非力な抵抗。
意識が・・・・。
『はあああああああああっ!!!!』
ドンッ。
何かが、この殺人犯を蹴り飛ばす。衝撃で俺も転がる。
『くはっ・・・ゲホッ、、』
前方を見る。
『ヤマさん、大丈夫かしら?姉様が犯人を蹴り飛ばしたからもう大丈夫よ。』
ランが介抱してくれる。
ロンは犯人を追っかける。
『待ちやがれっ!!』
ロンが耳をピンッとたてて、爪を出す。そのまま殺人犯を引っ掻く。
『・・・・ぐっ!?』
殺人犯の二の腕に傷をつける。しかし、腹を蹴り飛ばされてロンは吹っ飛んだ。
『姉様ッッッッッッッッッ!!!』
ランも耳をピクピクさせ、目を見開く。眉間に何重も皺を寄せている。血ばしった目は犯人に向かい、爪を出す。
『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!』
ランは風を切るように、足を高速回転させ、犯人へ向かう。唇を噛みすぎて血が流れている。
ダッダッダッ!!
『や、やめろ、ラン。私はだ、大丈夫だ。』
ロンが、ランの足を掴む。
『わっ!』
ドンッ!!グキッ!
ランはものすごい音を立てて歩道に倒れる。
・・・。
『おおーい、ラン、大丈夫かあ??』
いつのまに、抜けてた腰が元に戻っていた。
『や、ヤマさんが大丈夫ならよろしくてよ・・・。』
鼻血ブーだ。文字通り鼻血ブーだった。メイド服が血まみれだ。
耳がピクピクいっている。
ムフフ。
犯人はもう逃げてしまったようだ。
ロンに俺が興奮しているのを悟られる前に、
とりあえずタクシーを呼ぶことにし、安全に帰宅することにした。