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繁栄の王都

 長らく目にしていなかった王都は、戦乱の中であったにも関わらず、全く変わるところがない。


 白い街、白い城。平和が戻ったことで喜ぶ人々が、街中を花や布飾りで色付けて、華やかに新たなる王の誕生を祝っている。


 招待状を片手に、ドレスや小物の詰まった鞄を担いで馬車から降りる。この長ったらしい階段を上がらなくてはならないのかと躊躇っていると、横から身なりのいい老人が声をかけてきた。


「失礼、もしやアステリア殿ですかな」

「ええ。その名をご存知というのなら、貴方はライラック様のお知り合いであられる?」


 その男は軽く礼をすると、自分はボルドヴァルという貴族であると名乗った。かつては宮廷で皇帝に仕え、今はライラック・ラインを王にするべく身を粉にして働いているらしい。


「ライラック卿から、白い髪の美しい女性が来たら城まで案内せよ、とのご命令でしてな、この馬車停留所(ビッグポイント)でお待ちしておりました」

「それはさぞ大変だったでしょう、待たせてしまってごめんなさい」

「なんの、あのライラック卿があれほど称えた方をこの目で見られるのですから、百年待っても構いませんとも」


 恥ずかしい。一体どんな話をしたと言うのだ、彼は。

 ボルドヴァルは付き人に私の荷物を持たせると、私の少し先を歩きながら誇らしげに王都を自慢し始めた。


「美しい街でしょう?」

「ええ、本当に。でも、昔にはこのような水路はなかったと思うのですけれど」

「先の皇帝陛下の最後の望みでした。上水と下水を分け、城の水源地から湧く水を綺麗なまま下まで流れるようにしたい、と」


 その後すぐに内乱が始まったが、ボルドヴァルを始めとした穏健派貴族は、戦に明け暮れ都を荒廃させることを良しとしなかったのだという。


「民の協力も受け、皆で少しずつ完成させました。平地の運河まで水路を繋げ、水を通せたのはほんの昨年の話です」


 水路以外も、皇帝がこの街に望んだことでまだ済ませていなかったことは全て行ったとボルドヴァルは懐かしそうに言った。もう少し政治が落ち着けば、王城の隣には学び舎を開く予定らしい。


「貴族も平民も才あれば学べる場所です。維持費の問題はありますが、まあ、追々なんとか出来るでしょう」


 そう語る彼の目は、まるで少年のように輝いていた。きっと、ボルドヴァルも、街の人々も、夢の続きを見ているだけなのだ。かつて皇帝が見た夢を、失くすのが惜しくて拾い集めているのだろう。

 新しい王というのは、夢を映す偶像なのだ。


「年甲斐もなく心が躍ります。長生きはするものですな」

「まだお若いでしょう、ライラック様のためにもっと働いていただかなくては」

「既にこの老骨、馬車馬のように働かされておりますとも」


 そんな話をしている内に、とうとう王城の門が見えてきた。この階段続きで汗一つ見せない私に、ボルドヴァルは驚いたようだった。荷物を持たせた付き人は遥か下方で悲鳴を上げている。


「…………なんと、流石の体力でありますな。白鷲の騎士の勇名もどうやら確かなようで」

「…………ライラック様にご招待されたことが実に嬉しく、体が羽のように軽くなりましたの」


 私はそう言いつつも内心で、城に入ったらもう少し振る舞いに気をつけようと固く誓った。今日の私はただのアステリア、人並みにか弱い令嬢でいなくてはなるまい。

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