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葵ちゃん蛇が嫌いだ

 その後は無事何事もなく、お昼が終わった。

 怜と旬はまた別れ、それぞれ教室に移動した。

 葵も疲れてきたのか、ウトウトしながら浮いて付いてきた。

 二階を歩いていると、誰かと軽く肩がぶつかった。

 怜はすぐに謝った。


「あ、すみません」

「あ!?お前冬風じゃん! 元気してるかぁ。まぁ元気なわけねぇーよな、只の怪我で部活ズル休みですか。もういっそ部活辞めちまえよー」


 ぶつかった人は怜のサッカー部の先輩鬼沢剛(おにざわつよし)だった。身長は大型の190cmで、単発の鬼のようなイカつい顔だ。

 ぶつかったよりかは、怜がいたからわざとぶつかってきたに違いない。何せ怜に怪我を負わせた張本人はこの先輩である。1年でレギュラー入りをした怜に嫉妬していたのだろう。

 怜にとっては只のクソ先輩だったが、部活を休ませてくれた恩人でもある。怜は犬のウンコを見るような目で話した。


「先輩も一年に負けないよう頑張ってくださいね」

「チッ! 舐めやがって」


 剛は周りを気にし、去っていった。

 その様子を見ていた葵はブルブル震え、柱の後ろに隠れていた。

 そんな葵を気にせず、怜は教室に入っていった。

 最後の授業だったので、寝ずに目をびっちり開け、頑張った。

 その間も葵は怜の方をチラチラ見ながら何かを伝えようとしていたが、怜は全く気が付かなかった。

 鐘がなり授業が終わった。

 怜は背伸びをし、教科書をリュックに詰めた。リュックを背負い、階段を降りていった。

 先輩に会ってから葵の様子はおかしく、浮かんで付いていった。

 下駄箱を開けると一通の手紙が入っていた。そこで怜の妄想スイッチに火がついた。


(うわ! マジかよ。まさかの手紙だ。これこれ! これこそが青春ってうやつだよ。一度は経験してみたいと思って、毎回期待を抱いて開けていたが、等々この日がきてしまったかー。クゥー、緊張するなぁ。やっぱり1年生か、俺の顔に一目惚れとか! あり得る、あり得るぞー。まぁとりあえず中身を確認してみよう)


 手紙を開けると『放課後19時に桜公園に一人で来て下さい』と書いてあった。

 怜は勝負に勝ったようなガッツポーズをして思った。


(やっぱりそうだったかー、柚奈ちゃんも捨てたがいが、粋な計らいをする彼女も絶対可愛いだろうな。これでブスとか辞めてくれよな。おっと、フラグを立てるとこだったぜ。いや〜でも19時とか俺結構暇だなー。家からも遠いし、部活やってると勘違いされちったかー。まぁ学校で暇つぶしでもしてから行くか)


 怜はそっと大事そうに手紙を取り出し、自分の教室に戻った。

 葵は喋れないため、渋々一緒に戻った。

 怜はその後気持ち悪いほど、その手紙を何度も読み返した。たった1行しか書いてない手紙を舐め回すようだった。。

 葵はその様子を見て、ドン引きし遠目で怜を見守った。

 そして時間が18時45分になる頃、怜は立ち上がった。


「よし! 行くかっ。華々しい青春の始まりだ!」


 怜はその時間になるまで手紙を300回以上読んでいた。

 階段を一段一段噛み締めて降りた。下駄箱に上履きを入れ、靴を履いて学校を飛び出した。


「会いたい会いたい会いたいー! はーやーく会いたいー。待っててねー俺のお嫁さーん」


 怜は目にも止まらぬ速さで駆け出した。

 気分が悪いのか、葵はプカプカ浮かび上がりながら引っ張られるようについていった。

 桜公園に着くとまだ人の姿はなかった。

 怜はブランコに腰掛け、手紙の主をまった。


(あれ? まだいないのかー、仕方がないなぁ。緊張しているに違いない、今から告白しに来るんだもんな〜。いやー俺まだ緊張してきたなぁ。あ! そしたらこの公園は俺たちの大切な公園になるな。忘れないようにしなきゃ。それと今日の日付と時間……天気と)


 葵は木に座ってその様子を見守った。


 そして時間が19時を回った。

 カサカサと音を立てて誰かが近づいてきた。

 怜は胸を踊らせ、その様子を伺った。

 月に照らされその正体が明らかになった。


「待たせたなぁ怜」


 その正体は先輩の剛だった。

 その瞬間怜は最悪だと思ったが、手紙の主を探した。


「あのー、先輩今から自分他の子と会う約束があってー、今は相手にしてられないんですよ」

「あぁ会う約束!? はははは!! それってその手紙か? それ俺が書いたんだよ!」


 怜の脳内は一気に真っ白になった。


(はぁ!? 手紙こいつかよぉ!! ふざけんじゃねぇよ。俺の今までの気持ち返せよ。何より300回以上読んだんだよ。妄想膨らませてよ!! 俺の青春返せ。俺の時間返せ、暇すぎたんだよぉ)


 怜は脳内で怒り狂い、今すぐ先輩を殺してもいいと考えていた。

 剛は近づきながら、指をパチンッと鳴らし、話した。


「もう出てきていいぜ」


 指を鳴らしたと同時に公園のライトが照らす剛の陰から女性が出てきた。

 女性の体は全身『蛇』のように白く鱗があり、尻尾は剛の陰と繋がっていた。

 紫色の髪をなびかせ、黄色の細い目で獲物を狙う蛇のように怜を凝視していた。

 そして剛がまた話し始めた。


「なぁ怜。お前は守護霊を隠さないんだなぁ。はっきり俺の目には見えたぜ。守護霊使いを売れば、大金が手に入るらしいな。とりあえずお前を半殺しにするぜ。覚悟しな! 行け蛇どもその男に襲い掛かれ」

「は!?」


 公園の周りから蛇が一斉に飛び出し、怜に向かってきた。

 向かってくる蛇に怜は対処のしようがなかった。それよりも怜はいくつか思ったことがあったが今は生きることを考えた。

 とりあえず戦おうと、葵に話しかけた。


「葵ちゃん! 俺と一緒に戦ってくれ! とりあえず木から降りてきてくれ!」

「嫌よー、私蛇がこの世で一番大っ嫌いなのー。自分で何とかしてー」


 使えない葵に怜はイラつきながらも、蛇から逃げた。

 怜は足の怪我で思うように逃げることができなかった。怜の右足に1匹の蛇が噛み付いた。怜は痛みを堪え走り続けた。その間に2匹3匹と次々に噛み付かれた。

 限界になった怜は柚奈の説明を思い出した。

 そして葵に向かって命令した。


「葵ちゃん! すまない! 俺の武器になってくれ」

「えぇぇぇ!!」


 葵の体は光だし、怜の手元に何かが誕生した。よく見ると雪だるまが描かれた『スノードーム』だった。

 その様子を見た剛が笑いながら話した。


「お前なんだよそれ? 武器なのか? お前を売った時に本当に大金が貰えるか不安になってくるぜ。まぁ精々足掻いて見せな」

「うるせぇー、これでお前の蛇全員倒してやるよぉ」


 一か八か怜は思いっきりスノードーム振った。

 怜が降った瞬間、スノードームから吹雪が吹き荒ぶり、一面雪化粧になった。

 一面雪になったせいか蛇たちは土に潜り、冬眠してしまった。

 剛は驚き、奥の手を出してきた。


「クソー怜! やりやがったな。こうなったら奥の手だ。おい蛇女! 一体化だ」


 蛇の女性は剛の陰に潜り、消えていった。消えた瞬間剛の体は真っ白くなり、鱗が生えてきた。目も変わり黄色く蛇のような縦細い目になった。

 そして怜が息を飲むと一瞬で剛が消えた。

 次の瞬間怜の前に現れ、思いっきり怜の腹部を殴った。

 その勢いは蛇の俊敏さを生かし、岩を砕くくらいの力だった。

 まともに受けた怜は口から血を吐き出した。なんとか追い払おうとスノードームを振るが、全然効いていなかった。

 剛は蛇と一体化になることで蛇の弱点を消していたのだ。

 ピンチになった怜は何もすることがなかった。さぁこのまま怜はどうなってしまうのか。

 パラパラと怜を追い詰めるように予報の雨が降ってきた。

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