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葵ちゃん授業を受ける!?

 旬が無駄に爽やかな笑顔で、怜に話しかけてきた。


「怜、おはよう。何だよそのくま。どうせ昨日もゲームでオールでもしたか? でもそしたら大体寝坊か休みのはずなんだが、まぁ流石に2年になったばかりで、休むのはちょっと気が引けたのかな。えらいえらい!」


 旬は大げさに怜の頭を撫でた。

 怜は面倒くさそうに手で払った。まるで嫌がる猫を無理やり触るようだった。

 そのやりとりを見ていた葵は、怜の意外な一面を見れて、悪い顔でにやけていた。

 その表情を見た怜は、旬を追い払い机で蹲って寝たふりをした。

 葵は近づき、そっと怜の耳元で口ずさんだ。


「怜って意外とMなんだね」


 怜は驚き、ハッと起き上がり、教室をキョロキョロ見渡し、葵を探した。

 葵は教卓の上で座っていた。


(クソー、何なんだよ。Mって言葉よく知ってたな。俺をバカにしやがって、本当に許さねぇからな。これじゃ1日中気を張ってないといけないじゃねーか。連れて来るんじゃなかったー、でも来なかったら来なかったらで、面倒くさいことに巻き込まれちゃアレだからなぁ。まぁとりあえず我慢、我慢か)


 連れてきたことを後悔しつつも、今日1日を死ぬ気で乗り越えようと、決心した怜であった。

 学校の鐘がなり、担任がホームルームをしにドアをガラガラと開け、入ってきた。


「はい、みなさーん。おはようございます。今日から授業開始ですねー、みんな居眠りはダメだぞー。では後3日頑張れば休みなので、頑張っていきましょう」


 ホームルームが終わるとみんな選んだ教科の教室に移動し始めた。

 怜は2年G組に移動した。旬も同じ教室だったので、一緒に行くことにした。

 そして朝の話の続きをし始めた。


「なぁなぁそういやー、昨日は何やってたんだよー。そんな目の下暗くして」

「あぁうるさいなぁ、眠くて機嫌が悪いんだ。今日は勘弁してくれ、また話すから」

「そっかー、でも今から受ける授業は国語だぜ? 眠くなると有名なおじいちゃんの小林先生だ。まぁ気持ちよく寝とけよ」


 怜はあくびをしながらGクラスに入り、指定された席に座り教科書を準備した。

 葵は慣れてきたのか、教室にある掃除用具入れの上で座って上から眺めていた。

 葵を見た怜は猿山の親分だなとつい笑ってしまうのを口で抑えた。

 そしてガラガラとドアを開け、国語のおじいちゃんの小林先生が入ってきた。

 ゆったりとして、何を話しているかわからないガラガラ声で話し始めた。


「そ、それでは〜国語担当の小林です。1年間よろしくお願いしますぅ。では授業を始めます。教科書の5ページを開いてください」


 怜は催眠術にかかったような表情をして、小林先生が喋った瞬間、机に頭を伏せ寝てしまった。

 葵のその声を聞いて掃除用具の上で、丸まって寝てしまった。

 旬は怜を見てこいつ1時間寝るつもりだなーっと思い、教科書を開いた。

 鐘がなり、あっという間に授業が終わった。

 怜は鐘が目覚ましの代わりのように扱い、腕を伸ばし、起きた。視線を感じ横を見ると旬がにやけていた。少しイラついた怜は教科書をしまい、リュックを背負って次の教室に移動した。

 次は地理の授業で、1年G組だった。一年生と同じ階なので怜は柚奈に会えると期待をしていた。目をよく凝らし、柚奈を探した。しかし、期待を裏切り柚奈は見つからなかった。

 ふと後ろを振り向くと、壁越しに柚奈が隠れていた。柚奈を見つけた怜は、自然な振る舞いで近づいていった。


「おぉ柚奈ちゃんじゃないかー、次は何の授業なんだい?」

「先輩、私を必死に探していたのは知ってます。気持ち悪すぎて吐き気がしました。なので学校を早退しようか迷いましたが、今すぐ先輩がこの場から消えてくださるなら頑張れます。なので失礼します」


 柚奈はそのまま走り去っていった。

 怜はあまりのショックに固まっていたが、ため息をついた。

 また視線を感じ上を見ると葵が両手で腹を抑え、大爆笑していた。

 怜は苛立ちながらも次の教室に入った。席につき、今回は旬とは違う教室だったので、ゆったり受けた。

 しかし、初めてチョークを見た葵は興奮し、チョークを触ろうと必死に頑張っていた。

 その様子を見た怜は絶対触らせまいと許可を出さずにずっと触れるのを拒否していた。集中できなかったが何とか授業が終わった。

 席を立つと、黒板の下で葵がお菓子を買ってもらえなかった子供のように体育座りをして拗ねていた。

 怜はため息をつき、ポケットから飴玉を開け、そっと葵にあげた。


「ほれ。これでも食ってろ。チョークのお詫びだよ」

「あ、ありがと」


 葵は目をビー玉のようにキラキラさせ、飴を口の中に入れ、舐め始めた。

 それからご機嫌な葵は大人しくいていたので、お昼休みまで何事もなく終わった。

 お昼になると怜は学校の別棟にある学生食堂に向かった。

 旬もちゃっかりついてきた。

 食堂に着くと怜は財布を取り出し、券売機でいつもの海苔弁を買った。

 旬はラーメンを買った。

 葵は立ち止まり食堂をマジマジと見た。学生がたくさんいたり、おばちゃん達が一生懸命ご飯を作る様子を見て、初めて見る葵は感動していた。

 券を買った怜はいつも通りおばちゃんに渡し、進んでいった。

 海苔弁を渡されると怜は席を探し、座った。

 旬もラーメンをこぼさずに前に座った。感のいい旬は怜に質問した。


「なんか今日怜さ〜寒くない? なんていうか気温じゃなくて、怜の近くにいると寒気がするんだよなぁ」


 怜は少し動揺し海苔を詰まらせた。水を飲み干し、話題を変えた。

 目線を横にずらすと旬の横には葵がピースをしていた。

「こいつは何をしているんだ」と思い動揺を隠すため海苔ご飯をかきこんだ。

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