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葵ちゃん学校へ行く

 午前7時にジリジリと怜のスマホが大きな音量でなり始めた。タイマーをかけた覚えのない怜は、頭を掻きながら目覚めた。目の下のくまは濃く、今日の学校は休もうと思っていた。

 そこに葵が登場し、ベットに寝ている怜の上にたった。霊体の為、重さはなく怜はスピースピーと2度寝を始めた。そんな表情を見た葵がイライラし、大声で起こした。


「おーい!! 怜!! 時間だよ。学校とやらに遅れるよ。早く起きなさーい」

「いや……今日は休むよ。寝かせてくれ」


 葵はまるで子供を起こすお母さんのようだった。ちなみに目覚ましを設定したのは葵だった。怜のスマホに興味をもち、目覚ましの設定をいじったのだ。怜の許可なしで、物をだんだん触れるようになってきた葵だった しかし、怜は目覚めるどころか2度寝をし始めたので、全く起きる気が無かった。仕方ない、なぜなら怜は昨日2時間しか寝てないからである。

 そんな睡眠不足の怜を葵は心配1%、悪意99%で起こそうとした。諦めの悪い葵の目覚ましコールで、渋々怜はのっそり起き、歯磨きを始めた。


(ったく葵ちゃんのやつ寝不足の俺を起こしやがって、いつ俺のタイマーをいじりやがった。まぁいいか。柚奈ちゃんにも会えるし、面倒臭い学校にでも行くか)


 怜は目を擦りながら歯磨きを渋々始めた。歯磨きをしながら怜は考え事をした。


(そういや、葵ちゃんは学校についてくるのか? イヤイヤ待てよ、あいつが付いてきたらなんか厄介ごとに巻き込まれかねないからな。霊が出ないとはいえ、俺みたいに霊感が強いやつもいそうだし、学校にも『守護霊使い』とかいそうだな。どうすっかなぁ、留守番してろって言ったらそれはそれでなんか面倒くさそうだな〜)


 歯磨きを終え、怜は最悪の2択を考えながら、制服に着替えた。

 その頃葵は屋根の上で、小鳥を眺めて、チュンチュン鳴く小鳥と一緒に遊んでいた。

 着替えが終わり、怜はリュックを背負い、玄関を出た。怜は寝不足のせいと昨日の夕飯が遅かったため、朝ごはんは抜くことにした。屋根にいる葵に大声で話しかけた。


「おーい! 葵ちゃん。学校ついてきてみるか?」

「え? 学校?」


 葵は嬉しそうな顔で降りてきた。

 怜の中では学校には柚奈がいるから安全という結果に達し、連れて行くことにした。

 しかし、学校に対しての喜び方が不思議に思い、怜は質問した。


「葵ちゃんは学校が好きなの? まさか学校にいた時の記憶はあるとか」

「いーやー、覚えてないけど、『学校』って聞くとなんか心がワクワクするし、元々学校っていう単語は知ってたけど、記憶はありませーん」」

「あー、そうなんだ」


 葵ちゃんにはまだ謎が多いが、『学校』に対しての感情を知ることができ、良かったが、怜にとって学校は早く卒業したいと思っている為その気持ちは全然分からなかった。

 春の暖かい風がゆったり吹く中、登校した。

 学校が見えてくると、他の生徒も登校してきた。その様子を見た葵は、女子生徒に近づき、制服をジロジロ見始めた。

 その様子を見て、怜は焦りながらも声を出すことができなかった。なぜなら見えない葵に話しかけることは、他人から見ると、怜だけが喋っている風に見られるからである。

 見られていることに気が付かない女子生徒達は、「春なのになんか肌寒いわね」と会話をしていた。それもそのはず、近くに幽霊がいるので、肌寒くなることは当たり前である。

 気が済むと葵は怜の元に戻り、前で立ち止まった。

 怜はどうせロクでも無いことをし始めそうだなと思い、一応話しかけた。


「あのー、葵ちゃん。一体何をするかな?」


葵は腰に両手をあて、偉そうに怜の前で話し始めた。


「見て驚け! 私は女子として大切なことを忘れていた。それがファッションだ。出掛ける時にはおしゃれをして、はたまた寝るときには可愛いパジャマを着たりと、女子には大切なことだ。そして私は幽霊になってしまったが、着替えは大事だと思う。さぁ見るがいい」


 葵は空高く飛び、バク転をした。着地するときにはなんと葵の服は、怜と同じ学校の女子生徒の制服になっていた。

 怜はつまらなさそうな顔をしながら、拍手をした。

 そして葵が自慢げな顔をして話し始めた。


「どうだー! これが私の覚えた技。『パクリ早着替え』だ。これでいつでも見た服に着替えることができるのだ」

「へぇー。でも実戦では絶対使わなさそうだな」

「ちっちっち。おしゃれは女子の最大の武器だよ」

「やかましいわ」


 怜はそんな技より実戦で使える技を覚えて欲しいと思ったのだった。

 葵はワクワクしながら学校に向かった。

 学校に着き、怜は上履きを履くときに、葵ちゃんに小さな声で話しかけた。


「葵ちゃん。何か嫌な雰囲気とかは無いか? まぁ柚奈がいるからまだ安心だと思うけど」

「はぁー!! ここが学校かー、何か感動。ここで住んでもいいくらいワクワクしてるー」


 全然怜の話を聞いてない葵だったが、怜もこんだけはしゃいでいるなら、問題ないと思った。

 クラスに入ると、何人かの生徒がいた。勉強をしていたり、友達と話しやゲームをする人達。

 怜は窓側の後ろの席に座った。怜は周りから「友達が少ないんだろうな」と思われる目で見られたような気がしたが、構わずスマホを取り出し、ゲームを始めた。

 そんな葵はクラスに入るなり、あたりを見回し、子供のように駆け回った。気が済むと怜の横の開いている窓に腰掛けた。

 そして怜の姿を見るなり、捨てられた犬を見るかのような目で葵は話した。


「怜、もしかして……ぼっちなの」

「うるせぇーな。俺の勝手だろ!」


 葵に言われたことに素直に反応してしまった怜は、クラスにいる人たちから「え!?」っと引き気味に驚かれた。

 女子たちはコソコソ話し始め、男子は黙ってゲームを続けた。

 耐えきれない怜は葵を引っ張り飛び出し、トイレに入った。


(クソ! 何なんだよ。調子狂うな。やっぱ連れてきたのは失敗か。でも、俺が気にしすぎなのかもしれない。注意しとくか)


 怜はトイレに駆け込むと、ふわふわっと葵も浮きながらトイレのドアをすり抜け、入ってきた。

 入ってきた葵に壁ドンし、怜は鬼の形相で話し始めた。

 葵は何のことか分からず、そわそわしていた。


「なぁー葵ちゃん。学校ではできるだけ黙っとけ。いいな! 絶対だぞ! これ以上俺に恥をかかすな」

「えー、なんでー。別に悪いことじゃないじゃん」

「お前は幽霊だからみんなには見えないけど、俺は見えるし恥かしい、気に触るから喋るな! じゃないとキャンディーはおわずけだぞ」

「あー、卑怯な!? 分かったよ。葵、大人しくしてる」


 葵は渋々了承し、大人しくしていることを怜に約束した。

 怜は一安心した。

 葵はあたりを見回し、怜に質問した。


「なんかここにいるの罪悪感があるんだけど、ここどこ?」

「トイレだ! アホ!」

「だが怜の家のより広いなぁー」

「早く戻るぞ」


 怜は後悔しながらも、なんとか葵を落ち着かせ、教室に戻った。

 教室にいる生徒は増えてきて、朝練が終わった旬が怜の元に来た。

 さぁこれから葵ちゃん初めての学校。何があるのか思いやられる怜であった。

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