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葵ちゃん欲しい物がある

 怜が前を歩き、3メートル程空いた後ろから葵が付いてきた。

 気まずい雰囲気の中怜は後ろを振り向き、葵に話しかけた。


「なぁ、葵ちゃんは『守護霊』としてなんか力を持ってたりしないのか?」

「フン! そんなの知らないもーん。そんな力があったらまず最初にあなたに攻撃してたもん」

「ほ、ほうぉ。そうか」


 葵はかなりご立腹で、おやつを貰えなかった子供みたいな表情だった。

 その返答に怜は苦笑いしかできなかった。

 その後も会話はなく、重たい空気の中怜の家に着いた。

 鍵を開け、扉をガチャっと開けると葵を招き入れた。


「ここが俺んちだ。今日からよろしくな」


 怜が優しく家に招き入れるが、葵は嫌そうな顔をしつつも、中に入った。

 怜はリビングに行き、4人掛けのテーブルにコンビニで買ってきた、弁当やジュースを出した。


「はぁー、やっとご飯が食べられる。やっぱりコンビニ弁当と言ったら唐揚げだよな〜」


 ワクワクしながら弁当を開ける怜をじぃーっと葵は睨んでいた。

 怜は葵の考えていることを想像し、何をして欲しいのか考えた。

 考えた末、怜は1人だけだべるのは申し訳ないと思い、唐揚げ弁当を葵に差し出した。


「ほら、葵ちゃんも腹減ってるのか?」


 差し出された葵は首を横に振った。

 怜は困った表情をし、レジ袋の中をガサガサと何かを探した。


(クソー、何なんだよあいつ! 俺が考えに考えて、弁当をあげてやろうと思ったのに、無愛想な顔をして断りやがって。一体何なら気がすむんだ。これじゃゆっくり弁当も食えやしない。とりあえず、女の子が喜ぶ物は……あ、まぁこれなら喜んでくれるか? まぁいっか)


 怜は一つお菓子を見つけ、手に持った。

 疲れたのか葵はソファに寝転んでいた。

 そこに怜はペロペロキャンディーを見せると、葵は目を丸くし、太陽に光る向日葵のように輝かせた。ソファから浮き上がり、目を輝かせながら怜のそばにやってきた。


「おい! お前! それは何だ!? 私によこせ」

「なるほど。葵ちゃんはこういうのが好きなんだな」


 怜はキャンディーを上にあげ、わざと葵が届かない高さまで上げた。

 身長180cmある怜は葵にとっては巨人で頑張ってプカプカ浮いても全然手が届かなかった。

 そして怜は悪魔のような顔をして話した。


「葵ちゃん。これは俺のだ。欲しいのであれば、俺たちはもうパートナーだ。だから”お前”じゃなくて”怜”と呼ぶんだ。そしたらこのキャンディーをあげよう」

「このー、貴様卑怯だぞ! 私にだってプライドがあるんだ。そう簡単に乗ってたまるか! 強引にでもとってやる」


 葵は燃え上がり、リビングを浮きながら走り回って、怜に飛び掛かった。

 しかし、不思議なことに葵の足が椅子やテーブル、テレビなどに触れても、倒れることなく、動かなかった。

 その様子を見た、怜はキャンディーを下げた。

 下げた途端、葵は猫のようにキャンディーに掴みかかった。


「あ! 空きあり。今だー」


 しかし、キャンディーは取れず、葵は地面に激突した。そして子供のように”えーんえーん”と泣き始めた。

 可哀想になった怜は考えた。


(なぜ今葵ちゃんは触れることができなかったんだ? まぁ確かに霊体だからさわれないのは当たり前だけど、コンビニの時は手を引っ張ることができたはずのに、トラックにも引かれず、通り抜けた。まさか俺が触っていいと認定すればいいのか?)


 怜は泣いている葵にキャンディーを差し出し、声を掛けた。


「葵ちゃん。これは君のキャンディーだ。食べていいよ」


 葵は泣き止み、キャンディーをじっと見つめ、恐る恐る手を出した。するとキャンディーに触れることができ、子供みたいに喜んで、食べ始めた。

 安心した怜は、弁当を食べ始めながら思った。


(守護霊にも主人の命令は絶対に従わなければいけないみたいなことがあるのかな。うーん。まだまだ守護霊についてはわからないな。明日柚奈ちゃんにでも聞いてみるか)


 葵はソファーに寝転び、優雅にキャンディーをなめた。

 怜が弁当を食べ終わり、片付けていると葵が恥ずかしそうに両手の人差し指をくっつけながら近付いてきた。そして、震えた声で怜に話しかけた。


「怜……あ、ありが、と」


 葵は顔を赤くしてソファーの下に隠れた。

 怜も驚き、少し照れた。まるで思春期の甘酸っぱい恋愛のようだった。怜は葵に近づき、お礼を言った。


「葵ちゃん。怜って呼んでくれてありがとう」

「フンだ! こ、これは特別だから。キャンディーのお返しだから。ベェー!」


 葵は舌を出し、ソファーを通り抜け、天井を通り抜け怜の部屋に行った。

 怜は照れ隠しだと思い、少し笑った。

 その後怜はシャワーを浴びた。もうその頃は午前3時を廻っていた。

 怜はシャワーから出ると、腰にタオルを巻き、髪を乾かし始めた。

 すると天井からぬるっと葵が顔を出した。

 怜は葵と顔を見合わせると、お互い「ぎゃー」っと叫んだ。

 その後着替えを済ませ、地面に落ちた葵に怜が、家のルールを説明した。


「ここは風呂って言って、裸で入るもんなんだ。だから絶対ここには入るな。それとぬるっと天井や壁から出てくるのも禁止だ。普通にびっくりするし、心臓止まりかける」

「はーい、私だってやりたくてやったわけじゃないし、この家の構造だって知らないわ」


 葵は素直じゃないが、一応怜の話は聞き、わかってくれた。

 怜も葵の態度にイライラし、ガミガミと喋った。

 また気まずい雰囲気の中二人は二階の怜の部屋に向かった。


「悪いが親父の部屋は荷物がいっぱいで入れねぇ、だから今日は俺の部屋で寝ろ」

「まぁ仕方がない。本当は嫌だけど、ここで寝るしかないみたいだね」


 怜は心の中で少し盛り上がっていた。いや少しどころじゃない、めちゃくちゃ喜んでいる。男と女、夜に同じ部屋。怜は下心を出さずにはいられなかった。

 仕方ない、怜は今高校生なのだ。思春期の男に性欲は抑えることができないのだ。

 怜は自然な表情を装い、タンスから葵の分の布団を出した。


(やべーよやべーよ。この展開きたー。とうとう俺も卒業か。天国のお母さん、俺頑張るよ。親父、いい報告待ってろよな。まぁ触れるし、幽霊との戯れも一回にカウントされるっしょ。いや〜本当に人生何があるかわからないなー)


 タンスから布団を取り出す怜に葵が話しかけた。


「私寝る時布団いらないよ。だって、柚ちゃんから教えてもらった方法があるからね」


 怜は一人で困惑した。


「え!? どゆこと? 何教わったの」 


 困惑している怜を置いて葵は、浮いたまま、体育座りをした。すると葵の体はどんどん丸くなり、『人魂』になった。

 人魂になった葵から声が聞こえてきた。


「こうやって守護霊は睡眠をとるらしいよ。守護霊によって寝る時間帯は違うらしいけど、私はもう眠いから寝るねー」


 朝4時を廻り、死んだ目をする怜であった。

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