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俺の守護霊出てこい

(まずい!? 見られた!)


 柚奈は怜に気づき、固まって目を逸らせなかった。空気は気まずく、どちらが話し出すか、わからなかった。

 柚奈は気まずい空気から逃げ出すように、怜に背を向け、帰ろうとした。

 何が起こったかさっぱりわからない怜は、タイミングを逃さまいと話しかけた。


「なぁ! そこの女の子! 助けてくれてありがとうな。俺死ぬかと思ったよ。色々聞きたいことがあるんだ。止まってくれ!」


 怜の言葉に柚奈は立ち止まり、怜に向かって歩き出した。その姿が月に照らされると、灰色の髪は鮮やかな銀色に光り出した。着用していた制服とベストマッチである。


「あなた、幽霊が見えるんですか?」


 その声は高く透き通り、しかめっ面な顔に反した、優しく可愛い声だった。


(よし、話を聞いてくれるようだ。ここで俺はさっきの『幽霊』のことを聞き、それを倒した方法などを聞いて、俺も倒せるようになりたい。絶対に可愛いからといって、ナンパはダメだ。とりあえず時間がないようだから、詳細にわかりやすく質問をしよう)


「俺さ……、今日集会で君を見てからどうしても頭の中で残ってしまったんだ。会ってすぐに言うようなことじゃないと思うけど、まとめると俺は! 君がタイプだ! 超可愛いと思っている! 俺と友達になってください!」

「へ?」


 柚奈は怜に背を向け、照れた。何せ柚奈は恋愛経験ゼロの普通の女の子である。そんな初々しい柚奈に対していきなり、告白とはレベルが高すぎたようだ。動揺を隠せない柚奈は赤くなった顔を隠すように両手で頬を押さえた。


「わ、私……。熱があるようです。申し訳ないですが、これで失礼します」


 柚奈は頬を両手で押さえたまま、動物のチーターと同じくらいの速さでその場を去って行った。

 それを見た怜は、あまりの速さに呆然としていた。自分の言ったことに気付くと両手で頭を押さえ、天に向かって叫んだ。


「うわー、やっちまった! 自分の正直な気持ちを先走って話してしまったー! しかも、逃げてったし、最悪だ。でも……、可愛かったな〜」


 後悔をしながらも、ポジティブに捉えていく怜はもはや、ただの変態に見えてきた。しかし、それは変態ではない。思春期真っ只中の怜にとってはこれは普通のことである。

 怜は少し後悔しながらも、近所のコンビニに向かった。

 怜がコンビニに到着すると、目線の先にまた人っぽい影が見えた。

 コンビニの光で丁度誰か見えなかった。よく見るとそいつは赤い舌を出していた。

 怜はまた幽霊だと思った瞬間。車がコンビニに入り、車のライトでそれは照らされた。よく見ると女の子っぽい雰囲気がした。

 怜は恐る恐る近づいた。その時の気持ちは恐怖半分と下心半分だった。


「うわ! 変態です。おまわりさん呼びますよ」


 影の正体はアイスを食べていた柚奈だった。柚奈は威嚇する犬のように怜を睨みつけた。

 正体が柚奈だと気付くと怜は一安心した。

 しかし、次の瞬間。柚奈に誰かが話しかけた。


「まぁまぁ、柚ちゃん。私には悪い少年には見えないな〜。面白そうだから友達になってあげれば?」

「いやいや、豊ちゃん! 私は友達は少ないけど、こんな変態さんと友達になるくらいなら、私はいらないです」


 怜の目には、柚奈の横にチョコレートのような茶髪でイカリングヘアの二十代くらいの女性が見えた。

 その美しさに怜はまたナンパをしてしまった。


「やっぱり隣の女性も素敵ですね。お姉さんですか?」

「「え?」」


 二人とも怜が質問した途端、猫の目のように丸い目をして驚いた。


「あなた! 私の『守護霊』が見えるの?」

「え!?」


 あまりの驚きに今まで敬語だった柚奈がタメ口を使った。もしこれが敬語に厳しい先輩に言ってしまった場合、ただでは済まないだろう。

 怜はよく見るとその女性は下半身が透明だった。怜は驚き後退りしたが、勇気を振り絞ってさっき聞き逃したことを聞いた。


「あと、さっき聞きたかったことがあるんだけど。俺に襲ってきたやつは何なんだ!? なぜ君みたいな女の子が退治できるんだ!? 隣にいる下半身透明な人は誰なんだ!?」


 怜はマシンガンのように聞きたいことを柚奈に問いかけた。

 柚奈は溜息をつき、立ち上がるとアイスの棒をコンビニのゴミ箱に投げ入れた。


「場所を移しましょう」


 怜と柚奈はコンビにの横にある公園に移動し、ベンチに腰掛けた。公園を囲うように木が生い茂っていた。

 そして柚奈が話を切り出した。


「まずは自己紹介からですね。私の名前は神野柚奈(かみのゆずな)です。そして私の守護霊が豊玉姫命(とよたまひめのみこと)の豊ちゃんです」

「俺は冬風怜。多分君と一緒の高校に通っている二年だ。よろしく。でも何でいきなり自己紹介なんだ?」

「先輩が私の守護霊を見えてしまったからですよ。わかりやすく話すと先輩には『守護霊使い』としてのセンスがあるわけです。現在日本では悪霊がうじゃうじゃいます。今の守護霊使いでは人手が足りません。なので先輩にも手伝ってもらおうと思ったので、自己紹介をしました」


 怜はようやくこういう展開が来たとワクワク一人で盛り上がっていた。

 柚奈は木の棒を拾い、地面に絵を描いて淡々と説明を始めた。


「守護霊使いとは、自分の中にある守護霊の能力を使って戦います。守護霊によって能力は1霊ずつ違います。種類は5種類あります。

 1つ目は人型です。人型は自分に憑依させたり、武器に変えて戦います。2つ目は動物型です。動物はその種類が一緒であれば、現実の動物を操れたり、自分でその動物の能力を使えます。3つ目は天使です。天使は自分が天使になることができます。いまいちピンとこないと思いますが、人型と違って憑依ではないので、時間に限りがあります。限度を超えてくると命に関わることがあるそうです。4つ目は自然です。自然は主に木や岩、海などを表します。能力は自分をそのものにしたり、エネルギーにしたり、種類によっては武器を生成できます。最後に私と同じ神型(でんせつがた)です。または守護神と言います。守護神は12霊しか存在しない、貴重なものです。能力としてはさっき話したもの全てが使えます。しかし、その強さ故に1日に1回しか使えません。やろうとすれば2回以降も使えると思いますが、天使同様命に関わってきます。以上守護霊の種類です」

「あらあら。柚ちゃん、あなたにしてはよく説明できましたね」


 豊姫は笑顔で子犬を撫でるように柚奈を撫でた。

 命の危機を知った怜は気持ちが変わった。


「話はわかったが、でも俺なんかにできるのか? 命とか関わってくるとか、俺死ぬの嫌だし、なんかすまないけど俺コンビニ寄って帰るわ」

「あの! 待ってください」


 帰ろうとした怜に柚奈が怜の右手を掴み、引き止めた。


「あなた、私が人目につかない場所にまで移動して話したことに、はいそうですかでも、やっぱり帰りますで、済むと思うんですか! この話を聞いた以上。こちらも守護霊使いとしてあなたの口を封じる必要がありますが、どうしますか?」

「口を封じる?」

「はい、見ず知らずの人に危害を加えるのは最小限にしたいので、記憶をいじります。痛く無いので安心してください」


 柚奈は男気のない期待外れの怜に対し、話した。

 怜は自分の命を危険に晒すのは嫌だが、柚奈との運命的な出会いをなくしてしまう方が嫌だと思い、決心を固めた。


「わかった。俺も男だ! どこかで助けを求めている人を救いたいし、何より柚奈ちゃんとの思い出を消したくない。だから俺は守護霊使いになるよ」

「ありがとうございます。では早速ですが、先輩の守護霊を出していきましょう」


 柚奈はバックを開き、何かを探し始めた。そして木箱を取り出し、怜に近づき説明した。


「この中に『命のお香』が入っています。先輩が守護霊として相応しいか、このお香が判断してくれます。相応しかった場合、先輩の守護霊が出てきます。しかし、そうで無かった場合は……、爆発します」

「え!? 失敗したら俺死ぬの?」

「いえ、冗談です。死にはしませんが、煙が先輩の周りを囲むので、数分間咳は止まらなくなります。ですが、気をつけてください。守護霊によっては、いきなり暴れ出したり、パニックを引き起こす可能性があります」

「お、おう。とりあえず、やってみるか」


 驚かされた怜は少しビビりながらも、柚奈からお香を受け取った。

 恐る恐る木箱を開けると紫色のお香が出てきた。それを自分の前に置くと勝手に火がつき、煙が出始めた。まるで魔法のようで、ランプから魔人が出てきそうな感じだった。煙はもくもくと上がり、怜の身を包むように空に消えていった。

 怜はふと前を見るとそこには人影が見えた。

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