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短い話たち

真夏の雪

作者: 山岡希代美

※地震や津波の描写があります。



 私の住んでいる町であるとき事件が起こった。

 17歳の無職少年Aが無実の罪で町民達に訴えられようとしていた。しかし、どういうわけか私は彼が無実であることを知っていた。

 一生懸命彼の無実を訴えるのだが逆に私も共犯扱いされてしまい結局二人とも町を追われるはめになった。

 町を出た後、彼の消息はわからなくなってしまった。

 私はふらふらしているところを「超能力者捜査同盟」という謎の組織に拾われ超能力者を捜す手伝いをさせられた。何のために超能力者を捜しているのかは不明である。

 私の初仕事は一緒に町を追われた少年を捜すことだった。彼は超能力者らしい。

 だいたい居そうな場所を教えてもらい早速捜索に乗り出した。教えてもらった廃ビルに着くと窓に人影が見えた。

 彼だ! と直感し人影に向かって駆け出した。しかし、たどり着くとそこには誰もいなかった。

 私があたりを見回していると突然背中に衝撃を感じ前にばったり倒れてしまった。倒れたまま顔だけで後ろを振り向くとそこには彼が立っていた。

 なんだか悪意のようなものを感じる。

 知り合いだから連れて行くのは簡単だろうと思っていたが、どうやら「超能力者捜査同盟」というのは超能力者には評判が悪いらしい。私がそこの依頼でやってきたことがわかったのだろう。

 それにしても背中が痛い。これって超能力の仕業なのだろうか? 私は殺されるのか?

 目を閉じたら今度は背中が熱くなってきた。

 彼がつぶやいた。

「ごめんね」。




 気がつくと彼が目の前に座っていた。そして彼から「超能力者捜査同盟」についていろいろ聞かされた。

「滅亡の日」が近づいていると言う。

 それに備えて「超能力者捜査同盟」は超能力者を集めてその力を利用しわずかな選ばれた人間たちを救おうとしているらしい。

 私は「滅亡の日」について知らせるために彼と別れて自分のいた町へもどった。友人の家に向かっていると町民に見つかってしまい追いかけられた。とても話を聞いてもらえそうな状況ではないので追われるままに山の中へと逃げ込んだ。

 追っ手を振り切ってこれからどうしようかと考えながらとぼとぼと歩いていると、いきなり足元から突き上げるように地面が揺れた。

 もしかして「滅亡の日」か?

 私は何度も転びそうになりながら海を目指して走り出した。海岸にたどり着くとはるか沖合いに巨大な津波が押し寄せていた。

 どう考えても逃げられそうにはないと思った私は砂浜に座り込んで津波をボーっと眺めていた。

 すると身体が空高く持ち上げられた。そして津波の上を飛び越えどんどん沖に運ばれていった。しばらく海の上を運ばれていくうちに小さな島が見えてきた。どうやらその島に向かっているらしい。

 ふわりと島に降ろされるとそこには彼が待っていた。

 海を振り返ったが津波はもう見えなかった。空も海も灰色であたりは妙に静かだった。地震や津波でみんな滅亡してしまったのだろうか?

 真夏だというのに空気が刺すように冷たかった。




 彼は黙って海を見ていた。

「寒いね」と声をかけてみた。

 彼は何も言わずふと空を見上げた。私は座り込んで自分の足元に視線をもどした。靴の上に白いものが落ちてきて消えた。

 季節はずれの雪は勢いを増し、まわりを真っ白に塗り替え、やがて視界を遮った。




(完)



Copyright (c) 2008 - CurrentYear Kiyomi Yamaoka All rights reserved.


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