最終話 野蛮な部族襲来! 気高き戦士の誕生を見逃すな!!!
遂に感動のフィナーレ!
「ふぅ~、何とか危険生物達からも逃げ切り、だいぶ奥地までやってきましたねぇ隊長!」
「あぁ、そうだな」
ザウェストとじれじれ太郎はなろうアマゾンをどんどん突き進んでいた。と、その時!
ピロリロリン♪
じれじれ太郎のスマホが鳴った。
「っといけねぇ、同好の志とのズーム会議の時間っス! ちょっと出てもいいっスか?」
「はぁ? 何だよそれ」
「俗に言う創作クラスタっス。共に高みを目指す書き手達が集まって日々、切磋琢磨している集いっスね」
「ほぅ……で、具体的にはどんな事してるんだ?」
「仲間内で読み合いとかしてるっス。で、おかしな箇所を指摘したり、作品をより良くする為にみんなで話し合ったり。今日はメンバーの一人、ケツダイナマイト小次郎さんの新作連載小説をみんなで読み合うことになってるっス」
「酷ぇペンネームだな……」
ザウェストがスマホを覗き込むと、会議のホストと思しき人物がメンバーに向かってテキストで指示を出していた。
“まずメンバーの皆さん、ケツダイナマイト小次郎さんの作品に満点評価をつけてあげましょう”
“それから感想欄へ、良かった点と気になった点を各自、書き込むようにお願いします”
「いやいや、お前……これ完全にアウトな奴じゃねぇか! 創作クラスタじゃなくて相互評価クラスタだろ!」
「えっ!? 何スかそれ?」
「特定の作品への評価誘導は立派な規約違反だぞ? 通報されたら一発アウトだ!」
「え、そうなんスか!?」
“じれじれ猫さん、評価マダー”
“はやく評価してください”
そうこうしているうちに次々とテキストが流れてゆく。何という事であろうか、ザウェストの見ている目の前で公然と、不正なポイント操作が行われようとしているのだ!
「健全な創作環境を汚す悪党どもめ! 俺は許さんぞ! 早速通報だ!」
ドゴォン!
ザウェストは怒りの拳をじれじれ太郎のスマホに叩きつけた。そしてすぐさまなろう運営に通報、参加メンバー全員の詳細についても当然報告! 見事に悪党どもを一網打尽にすることが出来たのであった!
「ぶらばっ! 酷いじゃないっスか隊長~! 僕のアカウントまで消滅しちゃいましたけどぉぉ!!!」
「なろうは不正に厳しい。それにもし万が一、運営側の手違いでアカウントを消されてしまったとしても、アカウントの復活はほぼ無い。俺の知る限り、運営の手違いによるアカウント削除から復帰できた例は一件のみだ。だから絶対に不正はするな。そして万が一のアクシデントに備えて、小説のバックアップは必ずどこか別の場所に取っておけ」
「うう……バックアップなんかありませんよぉ……しくしく」
「相互評価クラスタは邪悪な集団だ。お前はなろう登録時に利用規約を隅々まで読まなかったから知らなかったんだろうが、連中のやっていることは許されざる行為なんだ。今回の一件で身に染みて分かっただろう?」
「ぐすん……なろうで小説を連載出来なかったら僕、これからどうやって生きて行ったらいいんスかぁ!?」
「案ずるな! ウェブ小説を投稿できるサイトは他にもたくさんある。カクヨム、アルファポリス、エブリスタ、ノベルアッププラス、ノベリズム、ステキブンゲイ、note、pixiv……」
「そ、そんなにたくさん!? でもどこが一番いいんスか!?」
「なろう以外の小説投稿サイトを利用したくなったら、まずは各サイトの特色をリサーチだ。インセンティブ目当てか、レーベルの好みか、UI周りの使いやすさか、イラストはどの程度活用するのか、エッセイ書きたいのか、うどんが好きか……考えるべき要素はいくつもある」
「あの、隊長、うどんって?」
「ツイッターで調べてみろ!」
「ヒエッ! 申し訳ありません!」
「とにかく、現状なろうの一強状態が続いているがこの勢力図もいつ塗り替わるかわからない。他のサイトにも手を出しておくのは方法としてアリだ」
そう、なろうで全然読まれないからと言って悲嘆にくれることはない。そんな時は外の世界へ目を向けてみよう。きっと、あなたの創作にマッチする投稿サイトを見つけることが出来るはずだ。
ただし、不正行為はしないように。
「ん、何か聞こえてこないか?」
「え?」
「これは……なろうアマゾンで一番出会いたくない生き物の登場か?」
「な、何なんスか!?」
「なろうアマゾンには危険生物がたくさん生息しているが中でも特に危険なのは……」
全裸に腰布だけを纏ったいかにも未開の地の住人と思しき者達が、松明片手に走ってくる!
「なろうアマゾンの原住民、毒者だっ!」
「うおー! 恋愛が主軸じゃない作品を異世界恋愛ジャンルに投稿するな! ハイファン行け!」
「うおー! こんな作品SFじゃねぇ! ファンタジー行け!」
「うおー! こんな作品ただのコメディーだろ! ハイファンから出ていけー!」
先頭を走るのは過激な部族、ジャンル警察である!
「うおー! 感想欄閉じるなー!」
「うおー! 嫌な意見でも作者は受け入れろー!」
「うおー! レビューで暴言吐くぞー!」
次に迫り来るのは罵詈雑言使い達である!
「うおー! 作者殺す!」
「うおー! こんなゴミクズ作品書く作者は知的障害者ー!」
「うおー! 学校に爆弾を仕掛けたぞー!」
そしてやってきたのはただの犯罪者達である!
最近ではこの手の発言は普通に名誉棄損とか犯罪予告で通報されて逮捕されるケースもある!
「うおー! 最近のなろう作者の質の低下ー!」
「うおー! 悪貨が良貨を駆逐するぞー!」
「うおー! 読者に配慮したプロレベルの重厚で完成度が高くてオリジナリティに溢れ感動できる短文タイトルの俺好みの作品をタダで読ませろクソ作者ー! ただしブクマも評価もしてやらねぇー!」
そしてラストはおなじみ、なろう批判エッセイの感想欄に出没するお気持ち表明組だー!!!
「クッ、数が多いな! じれちゃん、走れるか?」
「はぁ……はぁ……さっき川で血が流れ過ぎてキツイっス!」
「バーロー! 泣き言言ってる場合か! アイツらに噛まれたらナローヘイト・ウィルスに感染するぞ!」
「はぁ……はあ……僕を置いて、隊長だけでも逃げてください……はぁ……はぁ」
「バカ言え! 検索キーワードに“ハッピーエンド”って記載しちゃってるんだ! ここでお前がやられたら、この作品を読んでる読者がアンハッピーな気持ちになるじゃねぇか!!! しっかりしろ!!!!」
ガブッ!
しかしもう遅い! じれじれ太郎の肩にお気持ち表明ゾンビが噛み付いた!
「ぐわぁー! テンプレ使ってるやつはみんなクソだ……長文タイトルもクソ……ハーレムも……ざまぁ……追放も……ねじれた承認欲求……幼稚な文章……」
「クソッタレ! なろう批判エッセイめぇ!!!」
ドゴォン!
ドゴォン!
ドゴォン!
怒りに任せゾンビ共を蹴散らすザウェスト。しかし、じれじれ太郎はもう……。
「ウググッ……おしゃれなタイトル……重厚なストーリー……そうだ、タイトルを『automatic love』に変更……」
「英文タイトルだとっ!? 最悪だ……よりによって一番読まれないやつを! しかも地味に“オートマチック”と“嘔吐”をかけてやがる! 読者が誰も気づかない仕込みだ! クッ……ウェブ小説で伏線を張る時はあからさまで露骨なくらいわかりやすくしないとダメだと言うのに!」
「ウググッ……こんなに凄い小説を書いているのに読まれないのは読者がみんなバカだから……作者と読者の知能の差が大きすぎるから……天才過ぎるが故の不幸……」
「オイ、それ以上意識高い発言をするな! 内圧に耐えきれずに肉体が爆発するぞ!? じれちゃーーーん!!!」
「僕は……本当は……誰よりも才能に溢れた作者……ブラバァーーーー!!!!」
ドガァーーーーーン!!!!
「じれじれ太郎ぉぉぉぉぉ!!!!!!」
遂に、じれじれ太郎の肉体は高すぎる意識を受け止めることが出来ず自爆してしまった!
「クソッ、何でこうなるんだよ!? 俺は……俺は何て無力なんだ……」
燃え盛る炎。身を焦がされてなお、踊り狂う毒者。
ザウェストは無力感に打ちひしがれる!
「分かったよ、じれちゃん。俺はお前の犠牲を決して無駄にはしない。戦う。戦い抜く。お前をこんなにしたエッセイジャンルを俺は、決して許さない!」
強い怒りが全身を駆け巡る。
そしてザウェストは立ち上がった。
燃え盛る炎を背に、男は亡き友へ誓う。
このなろう界隈に蠢く悪を、残らず駆逐してやると。
ここに冒険者ザウェストの物語は幕を下ろし、新たなストーリーが始まる。
そう。
彼こそは戦うエッセイスト。
Kei.ThaWestである!!!
ドン!
完ッッッ!!!!!
最後までお読みくださり誠にありがとうございます。
作者のKei.ThaWestでございます。
戦うエッセイストがいかにして誕生したのか、その秘話を遂にお披露目することが出来ました。
ザウェストのエピソード0って感じですね。
感動のあまり画面が滲んでしまっている方も多々いらっしゃるかと思いますがここで最後のクレクレをさせてください。
本作を読んで面白いな、為になったな、笑えたな、なんかムカつくな、うどん喰いてぇ、などと思っていただけましたら是非ともブクマや評価をお願い申し上げます。
なんでこんな作品書いちゃったのか自分でもよくわかりませんが、あれよあれよと言う間に一日で2万字も書き切っちゃいました。驚き!
てな感じで今後とも戦うエッセイストをよろしくお願いします!
次はシャーテロでお会いしましょう~! ばいにゃら~!!!
っと最後に!
今回のエッセイを彩った美麗なイラストを提供してくださった(ザウェストが勝手に使った)神絵師様を紹介させて頂きます。
ザマスさんこと粗探文乃のイラストは津南 優希 様から以前に頂いていたものを。
蛇や蜘蛛、そしてはぁはぁ言ってるじれちゃんのイラストは、伊賀海栗 様に無理言って書いてもらいました。
あとイケメン過ぎて驚くザウェストのイラストは過去に僕の封印作品へ頂いたファンアートを転用しております。
やはり絵があると楽しさアップしますね!
素敵なイラストを描かれる神絵師様に拍手!
そして感謝!!!