第4話 突然のメッセージ失礼致します。電子書籍出版をされてみませんか?*出版登録料のみ別途費用が発生いたします。
「初日に大量更新する真の意味、それは……自分の作品がどの時間に最も読まれるのかを推定する為に他ならない!」
「な、何だってーーーー!!!」
「たとえば、初日に10回更新すると仮定しよう。俺が現実恋愛で若い男性読者をターゲットにするつもりなら、投稿する時間は、7時、8時、9時、10時、11時、12時、13時、14時、15時、16時、にするだろう。更に詳しく言うなら、00分は当然避けて、時間を少しズラして手動投稿だ。そしてこの中で一時間あたりのPVが高かった時間帯をいくつか選び、翌日にはそこで作品を投稿、更にその中からPVが良かった時間帯を選んで翌日にそこへ投稿、という手順を繰り返すだろう。こうして自作が最も読まれるであろう時間帯をまずは特定しておくんだ」
「へぇ……それはさすがのエロ大明神である僕も知らなかったっスね」
「激戦区のジャンルで戦うなら、連載スタートから一週間以内が勝負だ。最初に伸ばせなかったら以降、二度とその作品はランキング戦に浮上はしないと考えた方がいい。更に言えば、激戦区で1位を目指す場合、最初の三日間でランキング20位以内に食い込めなかったら、その作品にはそれ以上の伸び代は無い」
「たったの、三日っスか!?」
「あぁ、厳しいがこれが今のなろうの現実だ」
「で、でも中には何十万字も書いてからスコップされて書籍化決めるような作品もあるじゃないスか?」
「それは例外的なケースだ。流行に左右されない、しっかりとした筆力、重厚な世界観、活き活きしたキャラクター、歴戦の読み手達の読書に耐え得る内容、スコッパーの興味を惹く新奇性……様々な要素がハイレベルで組み合わされた作品のみが為し得る、なろうの奇跡だ。こういう作品はとにかく目立つ。だからワナビ達にとってはさも、すがるべき目標のように見えてしまうんだ。でも実際はこんなもの、確率論的には0%と言っても差し支えないだろう。お前のような新参者が、文法もロクに知らないうちから狙えるハードルではない」
「ぐぬぬ……」
「だからこそ、ランキング戦では戦略がモノを言うんだ。幸いなことになろうのランキングは先駆者たちによってかなり研究され尽くしている。そのロジックに忠実に従うだけで、誰でもある程度までは伸ばしてゆける」
「そんなやり方に個性は……オリジナリティはどこにあるんスか!?」
「オリジナリティとは何だ?」
「……え?」
「お前の作品に、他にはない圧倒的に光る個性なんかあるのか!?」
「……あるっスよ!」
「言ってみろ」
「ウチの主人公は感情が高ぶると嘔吐するっス!」
「……」
「だいたい二話に一回くらいは嘔吐してるっスよ! エモーショナルならぬ、ゲローショナル!!!」
ドゴォン!
「ゲボーッ!!!」
吐瀉物を撒き散らしながらじれじれ太郎は吹っ飛んで行った。
「という訳でなろう作者はいつも真剣に創作に取り組んでいるということがご理解頂けましたね?」
ザウェストは文乃に語りかけた。
「ええ……ワタクシが悪かったザマス。でも一つ気になる事が」
「何でしょう」
「先ほどの投稿時間のお話ザマス。どうしてあなたは夜に更新しないザマスか? 夜なら仕事も学校も終わってみんなが暇にしているはずザマしょう?」
「あぁ、いいところに気が付きましたね。そこの説明をしておきましょうか。一昔前までは、仰る通り、夜の更新は有効でした。しかし今では作者の数も増え、毎日あまりにも膨大な数の作品が投稿されています。多くの読者が暇にしている時間というのはつまり多くの作者にとっても時間を作りやすい=執筆したり投稿したりしやすい時間ということ。ならば夜の時間帯、具体的には17時から24時までは競合相手が多すぎるんですね。しかも夜の時間帯に堂々と更新して大量のPVや得点を稼げる作者など、ワナビでは太刀打ちできません。だから充分に強くなるまでは、穴場を狙って投稿する方が賢いというわけです」
「……確かに、そうザマスね」
「個人的な感触から言えば……今、そこまで人気のない=逆お気に入りユーザーが500人以下の作者が狙うべき時間帯は7時、12時、15時、16時だと考えています。この時間帯はカジュアル読みする読者が主流。サクッと読んでサクッと評価まで入れてもらいやすい。逆にどっしりとした作風で勝負がしたいならランキング戦は早々に諦め、なろう廃人の多い深夜帯のみに照準するのもアリでしょう。スコッパーも年齢層は高めなので、徹底的にニッチな方向に舵を切りやすい。一般ウケはせずとも一部の読者に強烈に刺さる作品、これもウェブならではの戦略です」
「そこまで、なろう作家は考えているザマスか。マーケッターですわね」
「それだけシビアな戦いだという事です。読者の作品を見極める目は厳しいですが、逆に言えばちゃんとした面白味を提示出来さえすれば案外しっかりと認めてくれるものです。我々なろう作家はこの“見せ方”という部分に最大限注意を払っているんですね」
そう、セルフプロデュース力。これがウェブで戦う上では最も重要なのである。物書きとしての地力が高くなくても、売り込み方を学べば、そして読者の望む“旨味”をしっかりと示すことが出来れば一気に大量得点も可能なのだ。長文タイトルも、簡素な文章も、テンプレ展開も、この“旨味”を早い段階で確実に読者に届ける為の手段の一つなのだ。だからガワだけ見ればテンプレで溢れ返っているように見えても、その中身は意外なほどに千差万別である。
「とはいえ、さながら受験勉強のような画一的な戦い方をみんながしているわけで、表面上は全部同じような作品に見えても仕方がないですね。やはり読者の皆さんにも積極的に個性の際立つ作品をスコップ、宣伝するように動いて欲しいところです」
先ほど文乃は「読者なくして作者なし!」と言ったがまさにその通りなのだ。読者が評価するからこそ今のランキングがある。ということは今のランキングが歪なのは作者のせいではなく読者がそういう風にしているのだ。自ら、歪なランキングを作り上げているのである。
というより、大多数の読者は今のランキングに特段、不満を持っていないのであろう。とかくクレーマーは声が大きく目立つものだ。定期的にエッセイジャンルでもなろう批判エッセイが人気になるが、あれも所詮はごく一部、とても少数の読者が群れているに過ぎない。
作者たるもの、一部の批判的な意見に耳を傾け過ぎず、もっと大局的見地に立って創作に取り組むのがいいだろう。
「ぐへ……ぐへへ……」
何やら気持ち悪い笑みで、じれじれ太郎が這いずってきた。スマホを握り締めて恍惚の表情を浮かべている。
「どうした? レビューでももらったのか?」
「ぐひょひょ……驚かないでくださいよ隊長」
「何が?」
「遂にこの僕にも書籍化の打診が来ました!」
「……は? お前の作品、今何点だっけ?」
「290点くらいっス」
「そんな低ポイントで書籍化なんかあるわけないだろう」
「きっと有能な編集者の目に留まったんだと思いますよ。やはり僕は天才でしたね、うひょひょひょ」
「はぁ……(クソデカ溜息)。なろう運営からのメッセージだったか、それ」
「いや、出版社の人からの直メです」
「なら詐欺だろ。どうせ自費出版とかだろ?」
「電子書籍で、自費出版の手伝いをしてくれるらしいッすよ。ええっと確か……
“じれじれ猫 様
突然のメッセージ失礼致します。
書籍出版活動をしている、HENTAI出版の槍魔栗助平、と申します。
「小説家になろう」内の投稿を拝見させていただきました。
私は今までに小説の世界に興味や関心は無かったのですが、じれじれ猫様のブログを拝見させていただき、個性あふれる世界観と想像を超える展開と面白さに非常に興味を持つことができました。
非常におもしろかったです。
そこでよろしかったら、このサイト内容を基にした電子書籍出版をされてみませんか?
「月5万以上印税で稼いでいる方」
「電子書籍で集客をして売り上げが500万UPした方」
「Anazonkinkydle総合1位をとってブランド力をつけた方」
といった多くの実績を残しており、いずれかの様な実績が残せれるかと思います。
出版にかかる下記の費用は弊社が負担いたします
出版にかかる主な費用
・広告費
・表紙のデザインと制作の費用
・原稿の編集、加工、校正、写真など素材を入れ込む費用
・出版申請
・出版するためのアカウント作成
*出版登録料のみ別途費用が発生いたします
ですので、著者の方が負担するものは原稿などの素材を用意していただけましたら、こちらで著者様のアカウントへ出版させていただきます。
素材をお持ちでなければ、こちらでも手配させていただきサポートさせていただきます。
【書籍の売り上げについて】
電子書籍の売り上げはAnazonから振り込まれた金額を著者様と分けていく形となります。
こちらは相談しながら決めていきますのでご興味をお持ちでしたら一度出版について詳しくお話ししたいと思いますので下記のメールアドレスまでご連絡ください。
jyukujyo-daisuki45451919@XXX.XXX...” みたいな感じっスね!」
「ほぼ全文覚えてるじゃねぇか。一体何回読み返したんだよそのメール……」
「ぐふふ、まさかこんなに早くこの天才が世間に発見されてしまうとは……」
「どう考えても詐欺だろ。ブログ拝見したとか書かれてるじゃん。詐欺メール送るにしても中身がお粗末過ぎるだろ」
「そこはほら、単なる言い間違いでしょ?」
「お前、出版登録料とやらをだまし取られてお終いのパターンだぞ、これ。なろうでは運営を通さない出版の打診は全て眉唾ものだ。もし判断に迷った時はとりあえず運営宛てにメッセージを送って確認してもらえ」
「えー、んなこと言って、本当は僕の才能に嫉妬しているんでしょ? 隊長♪」
「……」
「勝手にせぇ」
そして後日、じれじれ太郎は見事に出版登録料200万円を悪徳業者に騙し取られてしまうことになるのである!
これを読んでいる皆さんも、運営を通さない出版の打診には絶対に応じてはいけない!
なお、この詐欺メールの内容はマジで過去に僕宛てに送られてきた“本物”を一部改変して載せております(笑)




