#15 拠点
さて、恋のキューピットをやりつつ奪った品を載せたモレストロ号は、やっと中性子星域に達する。ここでいつものように、連盟軍の臨検を受ける。
「積荷は以上か。にしても、随分と遠くまで行ったんだな。」
「そりゃそうさ。近場はそろそろ危ない。いくら海賊だからって、危ない場所にこだわる馬鹿じゃやっていけねえ。少しでも頭使って、良好な漁場を求めるのは当然だろう。」
それを聞いたこの士官は、俺のこの言葉に特に応えることなく、タブレット端末の書類に目を通している。そして俺にこう言った。
「司令部からの通達が来ている。このモレストロ号にヴァレンナ要塞の入港許可が出ているそうだ。このまま、そこに向かえという指示が出ている。」
「はぁ?要塞?そんなもの、どこにあるんだ。」
「この中性子星域の外縁部に、直径70キロの球状の人工天体がある。そこがヴァレンナ要塞だ。」
そう言うとこの士官は、その要塞の写真と座標を俺に見せる。
そこに映っていたのは、小惑星をいくつかくっつけて、そこにたくさんのドックや砲塔を取り付けた、まさに軍事要塞。そんなものの存在を、俺達は当然、知らされてはいない。軍人どもめ、人の税金使って、こんなでかいものをこんな辺境に築いてやがったのか。
「しかしなんだ、この馬鹿でかい要塞は。こんなところに造ったって、敵の艦隊がわざわざそこを攻めてくれるわけじゃないだろう。」
「防衛拠点として築いたわけじゃない。あれはどちらかと言えば、補給用の拠点だ。」
「補給?」
「そうだ。ここから連合側支配圏に深く侵入し、偵察や戦闘を行うためには、できるだけ前線近くに補給できる場所があったほうがいい。通常なら大型の小惑星か、惑星、衛星に拠点を作るんだが、ここは惑星が存在しない星域だからな、だから、人工天体を築いた。」
そういえばそうだな。言われてみりゃあ、ここの軍船はしょっちゅうあちら側に入り込んで偵察していると聞く。そのための補給地点がないと、燃料切れになるのは海賊船と同じだ。
しかし、そんな拠点に海賊船を呼び出すとはどういうことだ?なにか、嫌な予感がするな。まあいい、そこで補給をしてくれるというし、中には街も作られていると聞く。わざわざ特別な場所に招待されたんだ、ありがたく出向くとしよう。
ということで、俺達はそのヴァレンナ要塞へと向かう。指定された座標に向かって航行すると、そこには軍船が多数、行き来しているのが分かる。
ステルス塗装だから、軍船そのものの船影はこの船のレーダーにはほとんど映らねえ。だがそんな船でも100、200隻単位で航行してりゃあ、ぼんやりと雲のように現れる。
にしても、そんな雲の塊が一体、いくつあるんだ?まさかこいつら、またこの先の宙域でドンぱちやらかすつもりじゃねえだろうな?つい先日、撃ち合ったばかりだろうが。おかげでこっちは、危うく死ぬかもしれなかったんだぞ。まったく、何考えてやがる。
そんな海賊船の心の叫びなど、この圧倒的な軍事力の前では、まるで大きな湖にたらした一滴のインクのようなものだ。足掻くだけ無駄。俺はそう思い直して、指定された座標へと船を進める。
で、目の前に、巨大な天体が現れる。
でかい、ほんとにでかい。球形の大きな赤褐色の天体が、目の前にある。周囲と表面には、軍船だらけ。チラホラと大型の砲門が見える。
聞けばここは、収容艦艇7500隻、口径10メートルの大口径砲が250門、直径が200メートルもある移動式の超大型砲が2門を備えているという。まさに要塞と呼ぶにふさわしい拠点だ。
これほど大きいのに、レーダーには中型の交易船ほどしか映らねえ。そりゃあいままで気づかないわけだ。
「こちらモレストロ号。入港許可を乞う。」
『ヴァレンナ要塞、第7管制塔よりモレストロ号へ。入港許可、了承。第4211番ドックへ入港されたし。』
……なんだ、その4211番ドックてのは。4211番って、どのあたりなんだ?何を目指して進めば、そこに辿り着けるというんだ?皆目、見当がつかねえ。
このドックだらけの天体の、どこに何番のドックがあるなどとは知る由もない。ビーコンは出しているんだろうけど、近くに行かなきゃそのビーコンすら拾えない。とりあえず受信できるビーコンをキャッチしてみるが、どいつもこいつも4211番じゃねえ。
「おいおい、どこに降りろっていうんだ?これじゃさっぱり分かんねえぞ……」
俺がボヤいていると、その声を察したのか、突然この船の真ん前に軍船が現れた。
『駆逐艦2677号艦よりモレストロ号、貴船を4211番ドックへ案内する。当艦の後ろに続け。』
なんとまあ、全長300メートルの道案内がやってきた。その場で反転し進み始めたその軍船の後ろを、モレストロ号はついていく。その間に俺はこの要塞表面を見回すが、圧倒的な数の軍船が取り付いてるのが見える。本当にここは、軍港だな。
しばらくぐるりとその人工天体の表面を進むが、裏側の赤道付近に達したところで再び、軍船から通信が入る。
『駆逐艦2677号艦よりモレストロ号、赤道上にある正面付近の、白い塔の脇にあるのが4211番ドックだ。直ちに入港されたし、以上。』
「こちらモレストロ号、了解、案内に感謝する。」
俺がそう応えると、その軍船は回頭し、離れていく。俺達は指示された通り、正面に見える白い塔を目指して進む。
その塔に接近すると、やっと4211番ドックのビーコンが拾えた。そのビーコンを頼りに、船体の向きを補正する。
「ビーコン、キャッチ!進路修正、右0.1!」
「面舵0.1!両舷減速!」
「4211番ドックまで、あと900!」
船橋内が慌ただしくなってきた。こんな場所への入港自体が初めてだ。地上にある宇宙港でも、ドックの数はせいぜい300。それを遥かに上回る数のドックがずらりと並んでいる。
赤褐色の軍船に紛れて、やや白っぽいこの民間船がここに入港するのは、場違いも甚だしい。しかし軍は、どういうわけでこんなところに俺達を呼び寄せやがったのか?
「距離、100!」
ところでこの4211番ドックというところは、まるで洞穴のようなところだ。他のドックが表面に立てられたタワーに過ぎないのに対し、こちらは船体がすっぽり入る大きさの密閉型ドック。多分ここは、軍船の修理用ドックだと思われる。
海賊船とは言え、見た目はただの民間船。故障もしていない船をわざわざこんなところに入れるなんて、軍の連中の考えることはますます分からねえ。
で、手前の繋留ロックとの接合を果たし、機関を停止するモレストロ号。到着と同時に、船橋の窓の外に船外服を着た連中が現れ、モレストロ号に飛び移ってくる。
なんだ、まさか、海賊船を乗っ取ろうっていうんじゃねえだろうな?いつもと逆の展開で、妙な気分だな。
『ヴァレンナ要塞、第7管制塔よりモレストロ号へ。現在、機密ドックにエア注入中。しばし待機せよ。』
管制からは、まだ出るなと言われる。が、その間にもこの船の表面に、何人もの作業員が飛び移っている。太いパイプを接合しようとしているのは、補給のためだとわかる。だが、側面に巨大なアームを突き立てて何かをしようとしているが、あれはなんだ?不可解な作業が、この船の周辺で始まっている。
で、それから30分ほどして、ようやく下船許可が降りる。俺達は船底部にあるハッチから外に出る。そこは無重力状態ながら、空気で満たされている。
「待っていたぞ、マカリオ船長。」
と、そこで俺は近づいてきたある軍人に呼ばれる。よくみればそいつは、あの情報参謀のモンタネール大尉だ。なんだ、こいつが俺をここに呼び出したのか。
「なんだ、お前か。なんだって俺達を、ここに呼び出した。」
「ああ、以前、貴殿に話しただろう。頼みたいことがあると。」
「……てことは、これからそれをしろと?」
「そうだ。」
「いや、俺達はこれから積荷を運んで、売り捌かなきゃならねんだが。」
「そんなものは、我々の任務の後でも間に合うだろう。ここに荷物を預けていけばいい。」
軍人というやつは、人の都合を考えちゃいねえ。俺達の税金で食ってるくせに、俺達よりも自分の都合を優先かよ。
「……で、何をすりゃあいいんだ?」
「なに、簡単な仕事だ。この先の連合側支配宙域に行って、帰ってくるだけでいい。」
「その程度のことならついさっき、やってきたばかりだが。」
「ただ行って帰るだけじゃない。その準備を今、しているところだ。」
ふと見上げると、燃料の補給に、荷室内への食料の運び込みと合わせて、船橋のてっぺんに何か大きなアンテナをつけてやがる。なんだ、あれは?
にしてもこいつら、勝手に俺達の船にあんなものを取り付けやがって……いや、考えてみりゃあこの船は、いつも軍の連中が補給や修理、整備までやってくれている。文句は言えねえ。
だが、先日奪ってきた積荷を、勝手に降ろし始めやがった。まったく、こいつら本当に俺達の都合は考えねえんだな。何考えてやがる。
「出発は明後日の、艦隊標準時1700だ。それまでは、この要塞内にある街で過ごしてくれ。ああそうそう、これは小遣いだ。皆に渡しておこう。」
まるで子供にプレゼントでも渡すように、この士官は封筒に入った電子マネーを15人の乗員それぞれに渡す。俺はそれを受け取ると、奥にある出入り口に向かってジャンプする。
何かあるとは思ったが、やはり想像通りだ。おそらくは厄介なことを、この海賊船に押し付けるつもりだろう。だが、すでに前金をもらっている。おまけに、ここでしばらく過ごせるだけのお金までもらった。その電子マネーを調べてみると、各々に1万ユニバーサルドルづつだ。小遣いにしちゃあ、ちょっと多いな。それはこの先の頼み事の危険さを予感させる。
だが、待てよ。いくら街があるとは言っても、ここは軍事拠点だ。そんなご立派な店なんてあるわけない。そんなところで1万ユニバも渡されても、使うところがあるのか?
などと考えながらも出入り口を出て奥へ向かう。そこには、中心部にあるという街につながる鉄道の駅がある。
鉄道なんてものを、俺は久しく乗ったことがねえ。地上にはすでにそんなものはほとんどなく、古い大都市に地下鉄が僅かに走っている程度だ。都市間の移動は、線路など使わない中型の船舶での移動が主流だ。
ただし、全長が3000メートルを超える大型船や連盟軍の戦艦などは、その船内に街や居住区があり、それを結ぶためによく鉄道は使われている。俺も鉄道に乗るのは、海賊になる前の堅気の仕事で、大型船へ出かけた時以来だ。
しばらく待つと、銀色の車両が滑り込んでくる。線路の上を音を立てて走るこの乗り物に、俺とグレース、そしてドロテオ以外の12人は驚いた様子で見ている。なんだこいつら、もしかして鉄道は初めてか。まあ、普通は鉄道なんて、乗る機会がねえからな。
で、少し閑散とした車両の中で、目的の駅に到着するのを待つ。いくつか駅を通り越して、ようやくアナウンスが街の駅に到着することを告げる。
『ご乗車ありがとうございます。次は、セントロ・ヴァレンナ。終点です。お降りの際は、手荷物などのお忘れ物なきよう、お願いいたします……』
ヴァレンナ要塞の中心部にある街だから、セントロ・ヴァレンナか。身も蓋もない名前だな。もっとマシな名前はつけられなかったのか?などと脳内で文句を言いながら、俺は窓の外を見る。
なんだ、ここは……
とてつもなくでかい街が、窓の外に現れる。立ち並ぶ高層ビルに、たくさんの車。そして、大勢の人々。
上を見上げるが、雲で霞んでやがる。おかげでここが地上ではなく、宇宙だということすら忘れさせる。なんてところだ。たかが軍事要塞のために、こんな大きな街を宇宙空間の只中に築いちまったのか?
電車を降りて、駅を出る。そこはエステポルナすら上回る街ではないかと錯覚するほどの賑わいぶりだ。いや、エステポルナは人口300万人の都市。いくらなんでも、この要塞にそれほどの人がいるとは思えないが、街を見ればその賑わいぶりは、大型の交易船の街以上だ。
てことは、それだけたくさんの民間人も関わっているってことになる。どうしてこれほど大掛かりな施設が秘密裏に作れるんだ?俺達のような海賊の住む世界だってかなり裏の世界だが、その裏事情に明るいはずの俺達ですら知らない世界が、ここにある。
で、モンタネール大尉が渡してくれたメモによれば、この街にある第2ヴァレンナホテルというところに、俺達がこの2日を過ごすための部屋が用意されているという。俺達15人はまず、そこに向かうこととなった。
4台のタクシーに分乗し、到着した先は高層ビルの前。これが第2ヴァレンナホテルか。名前が場末のビジネスホテルのような名前のくせしやがって、想像以上に立派なところだ。
それを見て俺は、腹が立ってきた。こいつら、俺達の税金を使って、なんてもの作ってやがる。
ホテルに入り、カウンターで手続きをする。あらかじめ軍の予約が入っているため、すんなりと手続きは終了する。
「てことで、明後日の……俺達の時計で朝10時になったら、あの駅の前に集合だ。いいな?」
「おう分かった、それじゃあ明後日に!」
俺がそう奴らに告げると、海賊一行はそれぞれの部屋に向かう。俺は当然、グレースを伴って部屋に向かう。
しかし……俺は部屋を見て、ますます腹が立ってきた。どうなってやがる、ここは。なんて豪華な部屋だ。軍人が知らないところで金を使いまくってやがる実態を、身を持って知らされる。
「くそっ!俺の税金を、こんなところに使いやがって!」
「しょうがないでしょう。彼らは明日の命も分からない、危険な職業なんだから。」
「いや、それを言っちゃあ海賊だってそうだが、これほど優遇された覚えはねえぞ。」
「それは、海賊だからねぇ……」
同じ命をかける職業でも、海賊と軍属ではこうも違うのか。もっとも、市民感情的には海賊よりも、軍人の方を優遇したくはなるだろうな。だが俺はやはり、釈然としない。
というわけで、今まで取られた税金の元を返すべく、街に繰り出す。こうなったらこの1万ユニバ、全て使い切ってやろうじゃねえか。俺は意気揚々とホテルを出る。
が、街を歩いていて俺は、ふと考える。みればここは、エステポルナ並みかそれ以上の街だ。ということはだ、もしかすると……
この街の情報は、街に設置された端末からしか得られない。俺の持っているスマートフォンには、街の情報は入らないようになっている。軍事機密都市だからな、ここは。
だが調べてみると、俺の思った通りの場所があった。俺はグレースに話しかける。
「おい、行くぞ。」
「行くって、どこに行くのよ。」
「決まっている、ここだ。」
「ここって……えっ!?この街にもこんなところ、あるの!?」
グレースが驚くのも無理はねえ。軍事都市なんぞに普通、あるとは思わねえ場所だ。俺も、まさか本当にあるとは思っていなかった。そこで俺はタクシーを飛ばして、その目的の場所へと行く。
降りると、大きなビルが立ちはだかる。その面の看板には、こう書かれている。
「交易センター」と。
いやあ、エステポルナに戻らなくても、ここで積荷を捌けるならその方がいい。そう思った俺は、そのビルに入る。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
「俺はモレストロ号の船長、マカリオだ。ここで積荷を売り捌きたい。どこにいけばいいか?」
「本センターでは、登録された業者以外の方の取引はできませんが、登録証をお持ちではありませんか?」
「いや、俺は軍の特務でここにいる。当然、登録されているはずだ。すぐに調べてくれ。」
「ええーっ!?あ、はい、しばらくお待ちください……」
半ばごり押しで俺は、その受付嬢に俺の船の登録状況を調べさせる。識別ナンバーを打ち込むと、あっさりと登録情報が得られた。
やはりな、思った通りだ。ここに入港できるってことは、当然、こういうところに登録しているだろうと思った。海賊船という名目では、これほどの軍事拠点に入れるわけがねえ。表向きは交易船ってことにしてるはずだと踏んだ俺の勘は当たった。
てことで、俺はその場で登録証を発行してもらう。そしてこのビルの中の該当する問屋に出向き、そこで積荷を売り捌く。
今回の積荷は、どちらかといえば日用品だ。高級品ではあるのだが、正直、エステポルナではあまりいい金にはならないと思われるものだ。
ところが、ここでは逆にいい値段で引き取られることになった。ここは宇宙の辺境だ。こんなところに、70万人以上が暮らしているという。日用品といえども、連盟の星から全てここまで運び込まなきゃならない。だから買い値が地上よりも高いのは、当然の理だ。
思わぬ価格で積荷の処分ができて、俺は上機嫌だ。その足でグレースと共に、街の高級料理店へと出向く。
「ねえ、いつまでこの稼業をやるの?」
突然、グレースが俺に尋ねる。
「そうだなぁ……このところ、稼ぎがいいからな、あと少しで、目標金額になるんだ。」
「そう。なら、早めに私達も足を洗わない?」
何を言い出すのやら、こいつ、今さら海賊であることに不安を覚え始めたのか?
「そうしたいが、手下のこともある。早々簡単には辞められねえ。」
「ドロテオさんか、あるいはクレメンテさんに船長をお願いすればいいじゃない。そうすれば、なんの憂いもなく船を降りられるじゃないの。」
いつになく強く、主張するな、こいつ。どうしたんだ?俺は逆に尋ねる。
「なんだ、今さら怖くなったのか?」
「ち、違うわよ!そういうのじゃなくて!」
「じゃあなんだ。俺に今の稼業を辞めてもらいたくて、しょうがねえみたいじゃねえか。」
ここは例によって公共の場だ。「海賊」という言葉は、ご法度だ。
「そりゃあそうよ。元々私はこの稼業を恨んでたくらいなのよ。それに……」
「それに、なんだ?」
「あの船に乗ってばかりで、マカリオと私、一緒に過ごす時間が全然ないじゃない。」
なんだこいつ、俺と2人きりの時間が作れねえって、それで悩んでたのか?まあ、確かにあの狭いモレストロ号での生活ばかりで、あまり地上で過ごす時間も取れねえ。
「分かったよ。考えとく。」
「ほんと!?」
「そろそろ、船を降りることも考えなきゃいけねえと思ってたところだ。すぐってわけにはいかねえが、近いうちに考えとくぜ。」
この場はこう言うしかねえ。俺は適当に応えて切り抜けたが、これを聞いたグレースは、上機嫌で目の前のフルコース料理を頬張る。思えば俺もこのところ、グレースのことをほったらかしで、狩場のことばかり考えていた。それがこいつに不満を溜めていたということか。
ならばこの2日間を、こいつのために過ごそうか。俺はそう考える。だが俺はこの時、2つの違和感を感じる。
一つ目は、単純な話だ。こいつ確か、俺を殺したがってたよな。それがいつのまにか、一緒に暮らしている。思えばどうして、こうなった?
もう一つだが、こっちはなんていうか、俺の直感的な話だ。俺自身、海賊船を降りる自分の姿が、どうしても想像できねえ。本当に俺に、そんな日は訪れるのか?
この2つの違和感と、明後日から行われる軍の頼み事ってやつへの不安感とを抱えて、俺は食事を続けていた。




