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古事記 〜神々の物語〜  作者: 野月 静
3/15

イザナギとイザナミ

少し、R15です。

 イザナギとイザナミはミナカヌシによる、とても大雑把な説明を受けて、すぐに葦原の中つ国に(くだ)った。別天つ神に呼び出された時は、一体自分達はどんな失態を犯したのかと思い、恐々としていたが、良くも悪くも予想は覆された。


「この矛、(あま)沼矛(ぬぼこ)というのですが、これを使って葦原の中つ国に島を作ってください。こう、コオロコオロとすれば、島は簡単にできますから。その後は、神々を沢山生み出して、国造りに励んでくださいね」


 そう言うニコニコ笑顔のミナカヌシが記憶に新しい。

 不安しかないが、イザナギ達にに拒否権など無いのだ。「仰せのままに」と言うしかない。



 さて、そういう経緯で葦原の中つ国に降ってきたイザナギ達はまず、ミナカヌシに言われた様に天の沼矛で島を作ることを試みた。

 海面に矛を刺し、コオロコオロと回す。刺すと言ってもさすがに海底には届かないので、上の方をバシャバシャとしているに過ぎない。本当にこれで島ができるのか不安になる。別天つ神の、しかも最高神の矛を疑うわけではないが、どうしてもこれで島ができるところは想像できない。


「どのくらい回せば良いのでしょう?」

「さて……。言われてみれば、そこら辺の指示は無かったな。感覚か?」


 取り敢えず、彼らは矛を回し続けた。しかし、腕に限界がくる。もう無理、というところで一旦矛を引き上げてみると、


「まあ!」


 海面から抜いた矛先から潮が垂れ、それが積もって島ができたではないか。イザナギとイザナミは歓喜の声を上げる。


「凄い、凄いわ! さすがミナカヌシ様の矛ね。本当に島ができたわ!」

「ああ。正直できるとは思っていなかったよ……」


 彼らはこの島を、「潮が自ずから凝り固まってできた島」という意味で淤能碁呂島(おのごろじま)と名付けた。そして、高天原の象徴である御柱(みはしら)を立てて、その柱を中心に八尋殿(やひろどの)という立派な宮殿を建てた。


 初めての葦原の中つ国の島でしばらくゆったりと過ごしていたイザナギとイザナミだが、ある時ミナカヌシの命令はこれだけではないことを思い出した。国造りも命令の一つ、いや、むしろそれが主な命令ではないか。


 しかし、この島は小さすぎて神々を大量に生むには土地が足りない。まだまだ島が必要だ。しかし、天の沼矛は一度しか働かないのか、その後は初めの様に海面に刺して回しても、無意味に海水をかき混ぜることしかできない。

 国造りは一旦中止された。


 

 そんな平和なある日のイザナギとイザナミの会話が以下の通りである。


 イザナギはイザナミに問うた。


「君の体はどのようにできているのだ?」


 イザナミは答える。


「わたくしの体はこれで良いと思うほど、十分にできております。しかし、一か所だけ足りないところがございます」


 それに対してイザナギは言う。


「私の体もこれで良いと思うほどにできている。しかし、私の体は逆に一か所だけ余分と思われるところがある。そこで、私の余分なところで君の欠けているところを補って国を生もうと思うのだが、どうだ?」


 イザナミは「それは良い考えですね」と返した。

 イザナミの了承が得られたイザナギは、さらに提案する。


「では、この天の御柱を私と神でぐるりとまわり、出会ったところで交わりをするか」

「かしこまりました」


 そうして二人は柱の側で背中合わせに立ち、同時にそれぞれの前方へ、柱に沿うように進む。初めに立っていた所のほぼ真反対で二人は出会い、まずイザナミが「ああ、愛しい若者よ」と言った。そして、それに返すように、イザナギが「ああ、愛すべき乙女よ」と言う。全てを終えたところでふとイザナギは思った。


「こういうのは、男からいうものであろう。女から言うのはよろしくない」

「そのような事、関係ありませんわ」


 そうして二人は聖なる神殿で交わりをかわした。


 これで国造りが進められる。

 そう思ったが、イザナミから生まれた子供は骨がなく(ひる)の様な醜い水蛭子(ひるこ)であった。我が子であることに変わりはないが、この様な島は求めていない。そこで二人は葦の葉で船を編み、海へ流した。しかし、次に生まれた淡島もあわあわとしていて実に頼りない。そのためこちらも同様に海に流し、子としては数えなかった。


 普通ではない子供しか生み出せなかったイザナミは、遂に元気をなくしてしまった。

 愛すべき乙女を心配したイザナギは別天つ神に不完全な子しか生まれない理由を聞きに、高天原に一度戻ろうとイザナミに提案した。イザナミは小さく頷き、イザナギと共に高天原へ向かった。


     *


「おやまあ。久しぶりですね。息災な様でなによりです」


 出迎えてくれたのはミナカヌシとタカミムスビ、カムムスビだ。


「久方ぶりにお目にかかります。確かに私は何事も無く元気なのですが……」


 イザナギに釣られる様に皆が少し下を向いているイザナミを見る。カムムスビが「イザナミ、どうしたのですか」と問うも、返答がない。仕方なく、イザナギが代わりに答えた。


「実は、私達が生む子は皆完全ではないのです。そのため、イザナミは元気を無くしてしまいました。何故、私達は完全な子を生めないのでしょうか」

「少し待っていてください」


 そう言うと、タカミムスビはどこかへ向かっていった。そして、ミナカヌシに宮殿内に招かれる。ミナカヌシの宮殿は最高神のものに相応しく、イザナギ達の宮殿とは比べ物にならないほど大きいものだった。天井も凄く高い。

 しばらくすると、タカミムスビが手に何かを持って帰ってきた。


「これは鹿の骨です。これを焼いて占ってみましょう」


 タカミムスビは骨に火を付け、じっとそれを見つめている。イザナギとイザナミには、それを見て何がわかるのか、わからない。

 少し経つとタカミムスビは骨から目を離さないままで口を開いた。


「あなた達。もしかして、婚姻の際にイザナミから声を掛けましたか」

「はい」


 二人しか知らないであろうことを言い当てられたことに驚きつつ、イザナギはタカミムスビの言葉を肯定する。


 タカミムスビは、首を緩く左右に振りながら続ける。


「女から(いざな)いの言葉を掛けるのはよろしくありません。もう一度、今度はイザナギから声を掛けて、やり直せば良いでしょう」


 イザナミは驚きに軽く目を開いた。イザナギのあの言葉は本当だったのか、と。


 そして二人は別天つ神にお礼を言い、淤能碁呂島(おのごろじま)に降り戻った。


     *


 高天ヶ原でタカミムスビに言われた通り、今度はイザナギから「ああ、愛すべき乙女よ」と言い、続いてイザナミが「ああ、愛しい若者よ」と言った。


 すると、今度はしっかりとした子供が生まれてくるではないか。イザナギとイザナミはそれから八つの島を生んだ。佐渡嶋(さどのしま)隠岐之三子嶋(おきのみつごのしま)伊岐嶋(いきのしま)津嶋(つしま)筑紫嶋(つくしのしま)伊予之二名嶋(いよのふたなのしま)淡路之穂之狭別(あわじのほのさわけの)(しま)大倭豊秋津(おおやまととよあきづ)(しま)である。大倭豊秋津嶋は特に大きな島で、葦原の中つ国は一気に大地が増えた。


 島を十分に生んだ二人は、次は神々を生み始める。ミナカヌシが望んだ、神が溢れるほどいる世を造るために。

色々ありましたが、無事に葦原の中つ国に島を作り出すことができました。

これからイザナギとイザナミは次々と神々を生み出します。

次は有名なお話。「黄泉の国」です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今後の更新について、活動報告に書いています。

そちらもご覧いただけると有り難いです。

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