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エンカウント率0%の世界で、モンスターを寄せ付ける俺1人だけが強くなる  作者: 如何屋サイと
第1章

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3/10

髑髏のロザリオ

二十五年前(主人公幼少期)の登場人物

アド(6)アキレス家の子息。この頃は繊細そうな子どもだった。

ルキ(4~5)アドが孤児院で引き取った子ども。現在教育中。

乳母(20代前半)世話役兼教育係。乳を与えたりはしていない。

 アドルファス・アキレスが名を名乗った時から二十五年前。

 地方貴族の館で二人の幼児に、乳母の女が寝る前の読み聞かせをしていた。


「むかしむかし、人々は魔法を使って暮らしていました。

 魔法で洗濯し、魔法で料理し、魔法は人々を幸せにするために必要でした」


 大きな本の左側のページには、7つの輝く石が描かれている。

 乳母の細い指が次のページをめくった。


「ある時、人々から魔法を奪おうとする魔王が生まれます。

 魔王は魔法の源・魔力を吸い取るモンスターを造り、人々を襲わせました。

 人とモンスターの戦争は100年続き、人々は疲れ切ってしまい、もう誰も魔法を使えなくなっていました」


 空に尾を引く巨大な岩石に、(にら)むような目が一つ付いている。おそらくこれが魔王なのだろう。そして、その尾から降りてくるのがモンスターたちだ。

 ページがめくられる。


「そんな人々の前に現れた男は、奪われた魔法を取り返してくると約束しました。

 そして本当に彼はモンスターを倒し、少しずつ魔法を取り返します。

 最後に彼はすべての元凶である魔王を滅ぼしに旅立ちました」


 モンスターの亡骸が山のように積まれ、その上に男が立つ。

 男の防具は胸当てとガントレット程度の軽装だ。

 二人の幼児のうち、一人が笑みをこぼして次を急かした。


「それ以来、モンスターが出ることはなくなりました。

 しかし、彼は戻ってくることはありませんでした。

 やがて人々は彼を讃え、勇者と呼ぶようになりました」


 乳母が本を閉じると、美しい装丁を施された表紙が見える。

 次を急かした方の幼児が身を乗り出した。首に提げたロザリオがろうそくの明かりにきらめいた。ロザリオは十字架が髑髏(どくろ)をつらぬくように象られ、髑髏の片目にはめ込まれた黒い石に炎が映り込んでいる。


「私、将来は勇者になりますっ! だってこの首飾りの石はモンスターを倒した証なんです! そうおじさまが言ってました!」


 乳母にロザリオを見せつけながら、勢いよく宣言する。


「はいはい。それじゃあ正しい言葉遣いを覚えましょうね、ルキ。まず、アド様のお父上は、『おじさま』ではなく、『だんなさま』と呼びなさい。はい」


 そう促され、ルキは棒読みで復唱する。


「そうだんなさまが言ってました」


「はい、よくできました」


 乳母がルキの黒い髪をなでる。

 ルキは無邪気な笑みを浮かべた。

 それを傍らで見ていたもう片方の幼児が茶々を入れる。


「本当は『言ってました』じゃなくて『仰ってました』が正しいんだよ」


 膝を立ててベッドボードに寄りかかっている幼児は頭に包帯を巻いている。

 乳母は彼の気持ちを察し、傍らに座って抱き寄せた。


「アド様さすがです」


 そう言ってアドの髪をよしよしと撫でつける。

 アドはまんざらでもない様子で、頬がゆるんでいた。

 その間にルキが割り込もうとしてくる。


「なんだよルキ。さっき褒めてもらっただろ!」


 アドがルキを足で押しやろうとしたが、乳母が足を掴んで阻止した。


「いけません、人を足で押すのは。それにルキはアド様が孤児院から引き取った子でしょう? 彼女を大切に扱えないようでは、立派な大人になれませんよ」


 アドは乳母の話をよく聞いて、きょとんとした顔のルキを見る。


「たしかにそうだったな。父様との約束だ。ルキを大切にすると誓った」


 ルキはアドと比べて2歳ほど幼く、まだ言葉の意味が分かっていないのか、二人をぼんやりと眺めるだけだ。


「だからルキ、お前は勇者なんかにならなくていいからな」


 ルキは「なんで!」と怒鳴った。

 続けてまくしたてるようにアドへ迫る。


「アドは大人になったら何になるんですか!」


「俺は大人になったら……」

第1章はじまりです。

全部で10話くらいになります。


評価・感想・レビューなどいただけるとうれしいです。


2019/06/07~2019/06/13にかけて、ヒロイン「ルキ」のキャラクターデザインを決めるアンケートを実施します。

Twitterの投票を利用する予定です。

もしよければご協力ください。

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