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第5話

第0象限世界の中心。


全ての基準となる法則しか存在しないその世界には、一つの核となる世界が惑星の形をしてただ存在している。


その核の名前は“チキュウ“であり、本来であれば第0象限世界を中央に据えた108ある象限世界の層の楔とも呼べる世界である。


そこには重力はあっても魔力はなく、食物連鎖はあっても魔獣モンスターはいない。


人は知恵のみを有し、生物たちも姿形を原点からの進化以外の要因で変化させてはいない。


人の知恵によって生み出されたモノによる変化のみがそこにある。


創造した神々からしても第0象限世界は現象の結果として生じた台風の目のような存在であり、管理者たちにとってもブラックボックスである。


かつて一度だけ“管理者“の手を離れ暴走した制御装置の一つが幾多の世界線を巻き込んだ騒動へと発展したのだが……


長くなるのでここではよそう。




「カリヤカリヤ!」


象限世界の裏側、と言っていいのか。


言い表すならば表裏一体の鏡の世界。


同軸上に存在する世界の中心で、幼い少女の声が響いた。


と言ってもその世界にあるものといえば無造作に突き立てられた大剣と、その傍に立つ青年、そして宙に浮き漂う幾千幾億もの鏡のみ。


まるで世界は鏡によって埋め尽くされてしまったのかと錯覚しそうな光景である。


そして中心部の大剣。


世界の管理者の補助端末、神器。


美しくも冷たく鋭利な輝きを宿す大剣がその姿を溶けるようにして変えた。


剣があった場所に立つのは瞳に強い意志を宿した少女であり、所有者によって付けられた名は、


「デュラン」


将来性を感じさせる造形に未発育の四肢。


活発そうな雰囲気の中にどこかバカっぽさを滲ませる少女デュラン。


口元からのぞく八重歯が小悪魔のような印象を与えている。


しかし内包された力はただの補助端末的存在に収まるものではなく、ただの管理者や位の低い神々など一振りで消し去るだけのものがある。


そしてそれほどバカでもない。


「すぐ側で騒ぐな」


目の前の鏡に向き合っていた、青年の姿をした存在は冷たく言い放つ。


ソレの名はカリヤ。


管理者としては最高位に位置し、原初の神器に魂が宿った存在である。


カリヤの気配は冷たく無機質で、人の姿に僅かな人間味が覗くのみ。


しかしデュランはそれを気にした様子もない。


そのやり取りがこれまでに数え切れないほど行われてきたことが窺えた。


「なんか第0の管理者から苦情がきてんだけど!」


「いつものことだ」


「まぁいつものことだな!」


「…………。」


「けどなんかあいつらが関係してるみたいだし、繋げてみていいか?」


「……ああ」


“あいつら“。


そう来て彼らにとって共通するものは4人しかいない。


『おお、カリヤ様…』


「なんだ」


『お忙しいところ申し訳御座いません』


無数に浮かぶ鏡の中からデュランの近くに浮いていた一つがカリヤの目の前まで移動してくると、そこには中間管理職を思わせる幸の薄そうな男が映っていた。


男は鏡越しに頭を下げると用件を切り出しだ。


要約すると、


『チキュウがヤバい』


4人の男たちの存在が規格外に膨れ上がっており、そのせいで因果律や世界線などに歪みが生じつつある。


彼らは本来の寿命すらねじ伏せ、あらゆる必然すらも捻じ曲げている。


あの手この手で寿命を終えさせようとしてるが、4人とも規格外に生き延びてしまいさらに強力になってしまってもはや手の施しようがない。


このままだとありのままの存在を保つべき第0象限世界が変質してしまう可能性がある。


なので助けてカリヤ様!


『……と、いうことでして』


「………わかった」


『おお!ありがとうございます!』


中間管理職男はホッと息を吐き出し、頭を下げ、そのまま接続が切れた。


彼もまた管理者の一人、それも第0象限世界という最重要世界の管理者だけあってその格は神話に語られる神と同列、というか何処ぞやの名のある神だったとカリヤは記憶していた。


それほどの存在が複数で掛り切りになる世界が第0象限世界“チキュウ“。


かつて自身が行なった行為が現在の彼らの苦労に繋がっているのならば、その責任は取らなければならない。


カリヤは鏡の一つに手を当てた。


「……数珠丸」


『はっ!こちらに』


「阿部佑樹、杉山裕司、宮崎常春、ジョージ=ミート=謙一。この4名を…」





「殺してこの場に運べ」

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