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私立叢雲学園怪奇事件簿【第一部 青龍編】  作者: 来栖らいか
【第三章 不協和音】
22/47

〔3〕

 須刈アキラが友人達と連れだって図書館を出たところ、彼等の他にも事情聴取を受けるらしい数人の学生が外で待っていた。

 運動部らしき学生もいたが、そのほとんどは演劇部の生徒だ。

 これでは練習に差し支えるだろうな、と、アキラは藤堂を気の毒に思う。ましてや第一発見者の倉持は、部長といえども女子学生だ。

 文化祭までに、立ち直ることが出来るのだろうか。

「あの……アキラ先輩はもしかして、神崎さんが嫌いなんですか?」

 西棟に繋がる渡り廊下に出たところで、遼がアキラに尋ねた。

「うーん……どちらかと言えば好きなタイプかな。なかなかの美形だし、服のセンスも良かった。強いて言えば、もう少し背筋があった方が刑事らしいスーツの着こなしが出来ると思うけど……」

 心配そうな遼に首を傾げて答えると、隣で優樹が顔をしかめる。

「やめてくれよ、アキラ先輩。あの気色悪い来栖みたいな事言うのは」

「あはは、あいつと一緒にされたらかなわないな。冗談はさておいて、信頼できそうな人だと思ったよ」

 どうやら遼は、神崎に好意を持っているようだ。

 安心した顔になったのを見て微笑んだアキラもまた、その刑事らしからぬ身近な人柄に好感を抱いていた。

「警察の情報が手に入れば、犯人を突き止める手掛かりも増えるんだけど……神崎刑事、協力してくれないかなぁ」

「そりゃ無理だ。たった今牽制されてただろう、おまえ」

 佐野が諦めろと言うように手を振る。

「あ、そうだ佐野! おまえ叔父さんに頼んで、神崎刑事のこと調べてみてくれよ。弱点とか、嗜好とか……」

「まさか刑事を強請って協力させようなんて思ってるんじゃないだろうな? 止めろよ、反対に捕まるのがおちだ」

「……だろうねぇ」

 当然本気の言葉ではなかったが、何かしら手掛かりが欲しかった。どうしたものかと思考を巡らせていると。

「あの、神崎さんに協力を頼むのに役立つかどうか、わからないんですけど……。もしかして神崎さんは、生きていた頃の姉さんを知っているかもしれないんです」

 躊躇いがちに遼が申し出た。

「えっ、それは本当か? 神崎さんが、おまえにそう言ったのか?」

「いえ、違います。でも……」

 石膏像を見つけた日、神崎を取り巻く水と江里香のヴィジョンを見た事を遼が話すと、佐野が戯けた口調で口を挟んだ。

「もしかしたら、二人は恋人同士だったかもしれないぜ? これはなかなかロマンティックな展開だねぇ、恋人の敵を討つ刑事なんてさ」

 アキラは同意の仕草で頷きながらも、よもや学生に弱みを見せるような真似はしないであろう神崎から、事実を確かめる手段があるかと考えた。

 身近で人の良さそうな外見とは裏腹に、刑事としての確固たる信念を強く感じた。仕事に実直で、頭が硬そうだ。

「佐野が言うとおりなら、つけいる隙が見つかるんだけどなぁ。簡単に話してはくれないだろうけどね」

 思案顔のアキラに、遼が決意の顔を向けた。

「僕の、ヴィジョンの話をしてみようかと思うんです」

 えっ、と、アキラは驚いて遼を見る。

「付き合っていたかどうかは解りませんが……神崎さんが姉さんを知っているのは確かです。僕の話を少しでも信じてもらえれば、力を貸してくれるかもしれない」

「信じるわけ、ねぇだろ」

 突然、優樹が低く呟き、遼は意想外の顔を向けた。

「優樹……?」

「とにかく、俺は反対だからな」

 それだけ言うと優樹は踵を返し、一人、足早に場を離れた。

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