大魔導師様、俺達の冒険はまだこれからですね!
チビッ子の奴隷になって三ヶ月近く。
ガウードちゃん主導の自然との触れ合いに馴れた今、俺は恐らく身体能力が元の数十倍まで強化されている。
今やリンゴを片手で潰せるのは勿論、猪や熊まで片腕で狩れる程の化け物になりつつあるのだが、ガウードちゃんの照れドン一発で生死の境をさ迷うのは変わらない。
この二ヶ月半の間もチビッ子には何度か王国からの使いが来ていた。彼女は計3回家を留守にする機会があったが、俺は3回ともガウードちゃんと留守番を共にし、自然との触れ合いを続けた。
理由は簡単。同じワースレスが虐殺される様など、見ていて面白くもなんともないからだ。チビッ子もそれには賛成していた。
二人とも相変わらず食器の扱いを身につける気は無く、食事のメニューはどうも常温かつ固形の物に限られている。朝の目玉焼きも黄身を固めに焼くようにした。
一度栄養面が心配だからとチビッ子にそれとなく食事の相談をしてみたが、魔法で生野菜を粉砕し、錠剤のように再構築したものを差し出された。
素直に解決策を提示してくる彼女に、俺はありがとうとしか言えなかった。
「……さて。」
とは言え相変わらず食卓には何かしらの食べ物が飛び散っている。
チビッ子は相変わらず人形のようなすまし顔で振る舞っているが、口周りはばっちりミートパスタのソースで化粧済みだ。ちょっと可愛い。
ガウードちゃんは一度注意をしたら手を使わなくなったのでまだマシかと思いきや、床に四つん這いになって犬猫のような食事方法をとるようになった。
パッと見食卓に居ないから最初はビビっし、何より足元にまで被害が及ぶようになったのが辛い。…という訳で。
「この三ヶ月、二人と生活を共にしていてある問題に気づいた。まずはチビッ子、俺の膝に座りなさい。」
「………は?」
何言ってんだお前、とチビッ子の目が訴えかけてくる。…怯むな俺、押しきるんだ。
動こうとしないチビッ子を後ろから軽く持ち上げ、膝の上に座らせつつ自分も座る。
チビッ子は耳まで真っ赤にしながら「…え?え?…な、なに…?」と困惑しているが、ひとまず「今から説明する」とだけ耳打ちし、話を続ける事にした。
「ガウードちゃんは……まあ、とりあえずそのままでいいや。では聞いてください。」
「……?」
「実は二人の食事にはある問題があります。」
「……栄養の偏りなら、解消したよ。」
少し嬉しそうに錠剤型に再構築された生野菜を差し出してくるチビッ子。少し胸が痛むが、残念ながら今はその話はしていない。
「い、いや、すまんがそうじゃなくてな。 …問題は汚れなんだ。」
「……キミが舐めとってくれるからいい。」
「あのな、それだって大変なんだぞ?舌は疲れるし、お前だって女なんだからな。」
「…?」
「いやだから、素肌を見たり舐めたりしてると、たまにドキドキしてくるってこと!」
「え……?」
「…ナァ、ガウードも、チョっとイイカ?」
チビッ子が顔を赤らめて固まると同時に、ガウードちゃんがひょっこり顔を出す。
「お、おう。な…なに?」
「ガウード、思っタ。ココ居てモ、ユウジ、心生きナイ!」
「え?」
「ココ居るト、グリム陰気のまマ。あとグリムの仕事、ユウジによくナイ!」
「で、でも、あの仕事をやめる訳には…。」
「王国かラ逃げテ、世界見て回ル! そうすレバ、そノ内ユウジも、心、生き返ル!」
俺とチビッ子はただ呆気に取らされるばかりだ。
ガウードちゃんは口の回りをミートソースでビッチャビチャにしたまま、あくまで真剣な顔をしている。
その後チビッ子と話し合い、ガウードちゃんの言うことにも一理あるという結論が出た。
かくして俺達は王国から離れ、世界を見て回る旅に出ることになったのだが、それはまた、別のお話し…。
「グリム様!置いていかないでください!」
「はは、大変だなお前も。」
「貴様、これで終わりだと思うなよ!私は貴様を―」
「……デスカール。キミ、誰のおかげでここに居るんだっけ……?」
「くぅぅ…っ!」
「ユウジ、良かっタナ。部下、できたゾ。」
「いやぁどうだか…。 それよりチビッ子、本当によかったのか?」
「………キミを生き返らせる為だから。」
俺達の冒険は、今始まった―――。
ここまで読んで頂けた3人の方、申し訳ありません。
書いていて話の展開と面白さに自信が持てなかったので、これで一旦完結とさせていただきます。
テンポや一話ごとの情報量を見直して再度別作品で連載を始める予定なので、機会があればまたお願いします。
オチが無いまま終わってしまい、本当に申し訳ありません…。
厳しいご指摘、お待ちしております。




