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大魔導師様は秘密が多い。

オッス!俺月見ユウジ!17歳!現在異世界で現役DDやってます!

今はガウードちゃんに処方してもらった薬草で自然との触れ合いのダメージが回復したんで、家に戻って晩御飯の支度を進めてるとこです!



「ふんふふんふーん♪ふんどしふんふんふふんふーん♪」



チビッ子はとにかく色んな食材を買ってきてくれたようなので、今晩はなんとなくシチュー的なものを作るのに挑戦している。

食材を煮込み終え、マーガリンやら白ワインやらコンソメみたいな粉末やらを適当にぶちこみ、適当にそれっぽい見た目と味を調整していると、急にリビングに居るチビッ子が声を荒げだした。



「…デスカールが!? そ、それで、彼になんて…!?」

「400年前ガ、ナンとかッテ。」

「……あのバカ……! …ごめんガウード、少し家を空ける…!」

「わかっタ。」



神妙な面持ちのチビッ子は陰気なローブを羽織り、早足で玄関へと向かう。



「ちょ、ちょっと待てよ!」



俺は慌ててそんな彼女を追い、その華奢な肩を掴まえた。すぐに怪訝な顔で振り向かれる。



「……なに?」

「こんな時間にどこ行くつもりだ?晩御飯だってもうすぐできるってのに…。」

「……キミには関係ない。」

「あるだろ。お前は俺のご主人様だぞ? 一緒に暮らす相手に隠し事ばっかりされて、どうやって疑心暗鬼になるなって言うんだ。お前、俺の根暗をどうしたいんだっけ?」

「……素直な同居人なら、ガウードがいるよ…。」

「それはそれで結構。だが俺は、お前のことを知りたいんだよ。」

「…。」



チビッ子はチラリと俺の顔を見てくるが、目が合うなりすぐにそっぽを向いてしまった。僅かに赤らんだ耳に愛嬌が垣間見える。



「…400年前、チビじゃなかっただろうお前と俺に似た誰かの間に、一体何があったんだ? そもそもお前は、俺を誰と重ねて見てる…?」

「!」



―チビッ子の表情は、途端に怒りに満ちた険しいものに変わってしまった。

見開いた目がどこでそれを聞いてきたのかと尋問してくる。俺は眉をひそめてその目を見つめ返し、恐れも、答えもしない。



「デスカール、もう許さない…ッ!」

「だから待てって。」

「!」



話を切り上げようと再び歩き出したチビッ子。その小さな身体を、後ろからぎゅっと抱きしめて捕まえる。



「あっ…。……は、離してよ…!」

「離さん。お前が話さん限りな。…なんちて。」

「…君も虚構世界に送ってあげようか…?」

「行くなら一緒にだ。俺をその手で殺したいんだろ、ご主人様。」

「………。」



目を伏せるチビッ子の表情からは、言葉にできない複雑な感情が伝わってきた。

寂しさ、苦しさ、人には言えない漠然とした悩み。そういう色々なものが混ざりあって、今の彼女に重くのしかかっているのだろう。



…俺が知る彼女についての情報はわずかだ。


王国の機密任務を負う大魔導師であるということ。

たまに聞く400年という時間。魔族の男が我が君と呼んでいる事実。

写真に写っていたチビじゃないチビッ子。写真に写るよく見えなかった大勢の仲間に、彼女の隣に立っていた誰か。

そして魔族の男もチビッ子自身も、何故か俺の顔に敵意を抱いている。

…なのに知人のガウードちゃん曰く、チビッ子はそんな殺したい筈の俺を、特別に扱ってもいるという。



「……お前のこと、よくわからねーよ…。」



チビッ子を抱き締める力がふと強くなる。この小さな身体のあたたかさくらいは、しっかりとわかっていたくて。



「…ボクは……。……っ。」



彼女はおもむろに俺の腕に触れようとして、すぐにやめていた。

代わりに拳を作り、肩をわなわなと震わせている。…抱き締めているから、それがよくわかるんだ。



…小さな小さな大魔導師。王国から秘密裏にワースレスの虐殺を任されている。

…小さな小さなご主人様。俺を殺したい筈なのに、同時に誰よりも大事に俺を扱う。


彼女はこの小さな胸の内に、一体何を秘めているのだろう。

考えれば考えるほど、それを知りたくなる自分がいる。彼女は弱々しくて、ガラス細工の人形のように、脆く見えてしまうから。

同じ弱者の筈なのに、圧倒的に立場の違う彼女に、俺は―――。



「…しちゅー、焦げてル。」



ガウードちゃんが廊下にひょっこり顔を出し、困ったような顔で見てくる。



「うおぅッ!?そ、そうか!悪いけど今手が離せないから、火、消しておいてくれる!?」

「ガ、ガウード、火、キライ……!」



な、涙目だと…!?



「……ボク、もう行かないから。……これ、離してもいいよ。」

「お、おう。でもあんまり信じられないから、このまま台所まで行こう。イッチニ、イッチニ、な。」

「……。」



チビッ子は嫌そうな顔をしつつも、きゅっと俺の腕を握ってくる。俺も少しだけ、チビッ子の身体を抱き締める力を強くした。



………

……



――その後、シチューの並んだ食卓。



「…ぅあつっ!」

「スプーン使えし!バカか!」

「ガ、ガウード、あつイのキライ! しヌゥー……!」

「ガウードさん!?なんか幼児退行してませんッ!? って食器落ち―、―あづァァアアアアアアアアアアア!!!???」



…もう二度とシチューは作らない。そう決心した夜だった。



いつもより短くなってしまいました。


次回の更新は木曜日になります。もしかしたらまた早くなるかもしれません。


次回もよろしくお願いします!

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