大魔導師様の友達は意外と物知り。
オッス俺月見ユウジ!今は知る人ぞ知る大魔導師様の奴隷をやってます!
でも特に奴隷らしい扱いもされず、のほほんと過ごしてたら、オッパイの大きな獣人ちゃんが同居を始めることになったぜ!
今は三人での生活が始まって、最初の朝食の真っ最中さ!
え?このノリももう飽きてきた?
奇遇だな、俺も飽きてきたとこ!でもやめない!
「はい。」
―コトン。机の上に我が家の定番、目玉焼きとトーストを置く。
相変わらず朝のチビッ子はだらしない。
今日もパジャマ代わりのYシャツがはだけて乳首がちらついている上、ぴょこんと跳ねた寝癖もそのままに、眠そうな顔でぼーっと魔導テレビの映像を眺め続けていた。
ガウードちゃんも朝は苦手なのか、机に突っ伏せたまま沈黙を貫いている。
ふと隣に行って聞き耳を立てると、穏やかな寝息を立てていた。んもう。
「ガウードちゃんガウードちゃん。朝ごはんですよー。」
「ン………。」
肩を揺さぶると、その豊満なバストもたゆんたゆんと揺れる。
小柄な体躯に見合わぬ豊乳が奔放に揺れるその様は、永遠に見ていても飽きることが無さそうだ。
たゆんたゆんたゆんたゆん…!
「はっ!」
ふと何かを感じてチビッ子に目をやると、凄まじく怪訝な顔をした彼女と目が合ってしまった。
寝ぼけて半開きの目で顔をしかめ、ただ黙ってこちらを見続けてくる彼女。…なんだろう、背後に怨念でも見えてきそうな気迫だ…!
「………!」
「………。」
…俺は額に嫌な汗が浮かんでいるのを自覚しながらも、そんな彼女からすっと目をそらした。
「…だ、だってお前揺れねーし…。」
「………。」
チビッ子はおもむろに目玉焼きを手にし、俺の前まで迫ってくる。焼きたてホカホカ、柔らかい半熟の目玉焼きだ。
「……ん?」
―――ぶちゅっ。
顔面に叩きつけられた目玉焼きは、そのやわらかな黄身を惜しみなく周囲に撒き散らした――。※スタッフが今から美味しくいただきます。
「テ、テメェェエエエーーーーーーッッッ!!! 食べ物で遊んでんじゃねえよォォオーーーーーッ!!!」
「………うるさい。…早く支度して。」
「おぉっとその前にィッ!お前の身体にも黄身は飛び散ったようだなァッ!!??」
「………あ。」
――俺はソファの上でチビッ子を押し倒し、一心不乱にその華奢な身体にむしゃぶりついた!
Yシャツのボタンを外し、ひたすらに舐め!必要以上に舐め!時に吸い、そしてしゃぶる!
チビッ子は指を噛んで必死にくすぐったさを堪えようとしているが、すぐに声が漏れた!たやすいッ!
「う、っは…! あふ…!」
「レロレロレロレロレロッ! ぐはははははっ!お前もしかしてわざとやったんじゃないだろうな!?俺にペロペロされたくてよォッ!」
「え…? そ、そんなこと………ない…。」
…え?あ、あれ、なにこのしおらしいリアクション。
そんな風に恥ずかしそうに顔を背けられると、不覚にもドキドキしちゃうんだが…。
「チビッ子、お前……。 …い、いいのか?い、今からもっと必要以上に……舐めちゃうぞ?」
「………。」
な、なんで返事しないのぉ…!?
「…なに、してル?」
「ファッ!?」
「!」
背後から急にガウードちゃんの声がし、俺達は慌てて平静を取り繕う。
ガウードちゃんは寝ぼけつつも、疑うような目つきで俺やチビッ子の事を眺めてきていた。
「あ、えっと、おおおおはようガウードちゃん!」
「……ン。 アレ、これ朝飯カ…?」
「あ、そうそう!目玉焼きとトーストね!あはは!」
「…イタダキまス。」
「ボ、ボクも食べよっと…。」
ガウードちゃんは眠そうに、チビッ子は慌てて、それぞれ目玉焼きを手にする。
いやフォーク使えし―と思った瞬間、二人は同時に目玉焼きを握り潰し、食卓には半熟の黄身が飛び散った――。
「潰すんかいィィィィィイッ!!!!!」
まぁこの後の展開は言わずもがなだろう。
役得とも言えるが、そろそろ食事のマナーくらいは教えておきたいと思う。俺奴隷だけど。
※飛び散った黄身はスタッフが余さず美味しくいただきました。
………
……
…
朝食と朝風呂を終えた後、俺はガウードちゃんと二人で森の中を走り回っていた。
ガウードちゃん曰く“全テの生物、自然ト触れあえバ、ココロ、いきル。”との事で、自然との触れ合いという名の拷問が始まってしまったのだ。
ちなみにチビッ子は今ごろ数日分の食材の買い出しをしに、一人で王都まで行ってくれている。彼女は別に心が生きていなくてもいいらしい。
俺だって別に心が生きていなくてもいいが、奴隷は奴隷だから、御主人様の命令には逆らえないのだ。
「ぜはッ、ぜはッ、ヒュウー…ッ、ヒュウー…ッ…。」
倒れながら地に這いつくばり、全力で肺に酸素を送る。血液中に染み出した酸素が身体中を巡り、ようやく生きた心地が帰ってきた。
「もウ、限界カ?」
疲労困憊の俺をよそに、ガウードちゃんは息一つきらさずに平然としている。
別に俺の体力がゴミクズだという訳ではない。ガウードちゃんのように、魔力を扱える者の体力が異常なのだ。
―突然だが、この世界において、魔力の扱える生物は次の二種類に分けられる。
一つはチビッ子のように、魔力を体外で操り、《魔法》を扱う《魔術士》だ。
魔法っていうのは説明するまでもないアレだな。手から火を出したり、たちまち人の傷を癒したり、快晴の空に雨雲を出したり。
要は自然界の法則に介入し、人為的に超常現象を起こせちゃう技術ってこと。
もう一つがガウードちゃんのように、魔力を体内で操り、《闘法》を扱う《闘術士》だ。
こっちはちょっと説明が面倒で………まぁ、魔力を使って超人になれる、と言えばわかりやすいか。
魔力を消費して自分の傷や疲れを癒したり、魔力を帯びた武器を振って衝撃波を飛ばしたり、魔力を帯びて自分の身体能力を強化したり。
これら全部、一括りにして《闘法》と呼ぶ。
一部の学者は闘術士そのものが“そういう魔法を使う魔術士”だと主張しているそうだが、俺にはそんなことはどうでもいい。
ワースレスの俺には魔法も闘法も使えないから、ガウードちゃんやチビッ子のノリに合わせて生活していると、どうにも身体が追いつけないのだ。
例えばチビッ子は、大魔導師と言うだけあって、闇の魔力を使う魔法はあらかた使える。
先日6日間家に帰れなかった間も、彼女は自分にだけ衛生状態を管理する魔法を使い、一人だけ清潔なままだった。俺は臭かった。
例えばガウードちゃんは、…と言うか今。
今、現に俺は地を這い、ガウードちゃんだけケロッとしている。
こんなのが続くのは辛い。素直にしんどい。
ワースレスが下等だと言われるのも、この二人と一緒に居ればよくわかる。
「…ガウードちゃん。一つ提案が…。」
「ナンだ?」
「二人が魔力使ってるとなんとも言えない気分になるので、ちょっとは遠慮してもらえませんかね…?」
「ン……そ、そレ、難しイ。」
ガウードちゃんは苦い顔でそう答えた。その表情一つで、彼女が本当に困っているのがわかる。
「魔力、酸素と同ジ…。トクに、武術士、気付いタラ使ってル…。……ガオ…。」
うつ向いたガウードちゃんは、耳と尻尾までしょんぼりと下を向いてている。…ちょっと可愛い。
でもまぁ、そうか。そりゃそうだよな。
彼女達魔力を扱える者は、生まれた時点で身体が魔力の扱い方を知っているらしい。
俺達人間が気付いた頃には普通に読み書きができているように、持ってる能力は無意識で使っちゃうもんなんだ。
だからこそ、それができないワースレスは下等だと言われる。
でも、魔力を扱う才能ばかりは、努力や研究でもどうにもならない事だろうに。それを蔑む今のこの世界は、異質な進化を遂げていると言える。ふと、そんな風に思った。
「…昔は、ワースレスなんテ言葉、無カッタらしイ。」
「へ?」
ガウードちゃんはちょこんとしゃがみ、まだ立てない俺の頭を、優しくナデナデし始める。…え、なにこれ?
嬉しいと言うか、恥ずかしいよ?なんでこんな子供みたいなことされてるの…?
「“魔王不死にシテ、勇者不滅”。…コノ世界に伝わル、言い伝エ。」
「あ、それ奴隷商人が暇潰しに聞かせてくれたおとぎ話にも出てきてたな。 “勇者はその役目と魂を時や世界を超えて脈々と受け継いでいき、ついに一人の勇者が全ての魔王を倒し、最後の魔王を封印した。”…だったっけ?」
「そレ、事実ガオ…。」
「そうなん!!??」
「古来、人間、魔族と敵対シてた。 人間、邪魔ナ魔族排除したくテ、沢山、侵略ヤッタ。魔族、生きる為、人間殺す必要あっタ。 魔族の中、七人ノ魔王ガ生まれタ。七人ノ魔王、スグニ世界、支配シた。」
「なるほど。その七人の魔王を、勇者がパパッとやっつけた訳か。」
「チガウ。…勇者、本当ワ魔王ノ一人ト仲間。一緒に六人の魔王倒しテ、世界、平和ニしようとシタ。 デモ人間、六人ノ魔王居なくナッタラ、また魔族、殺戮シタ…。」
ガウードちゃんがなんでそんな話を知っているのかはわからないが、彼女の瞳は本当に寂しそうに見える。
恐らく、この話は嘘でも妄想でもない。きっと、何か根拠がある事実なのだろう。
…少し、人間の業を恨みたくなった。
「最後ノ魔王、怒っテ人間滅ぼすコト、決めタ。勇者、魔王を止めるコト、決めタ。 …ソシテ、勇者、魔王を封印シテしまッタ。魔族ヲ追いヤリ、世界を手に入れタ人間、次はワースレス、虐げるヨウ、変わッタ。 人間、弱い者虐げナイと、生きてけナイ。」
「…厳密には、弱い者から搾取しないと、だけどな。」
脳裏に元の世界での日々が過る。
首輪で繋がれ、殴られ、蹴られ、奉仕を強いられた最悪な日々。一般家庭を装った我が家で行われていた、クソみたいな虐待の事実。
そこには確かにカーストがあり、弱い者はより弱い者を虐げ、虐げる相手の居ない一番の弱者は、自分自身を虐げるしかなかったんだ。
「……どこも変わらないな。」
緑の豊かなこの森も、ふと気を抜けば灰色に見えてくる。
俺の心はやっぱり死んでいて、そんな俺だから、まだこんな世界で生かされている。…皮肉な話だ。
「…でもユウジ、トクベツ。」
「え?」
「グリム、あんなニ人間にココロ許すこト、無イ。だからユウジ、きっとトクベツ。ガオ!」
ガウードちゃんはポンポン俺の頭を叩きながら、急に穏やかな笑みを向けてきた。
今までの堅苦しい振るまいとは一変したその表情に、少しドキっとしてしまう。
「ふん、何が特別だ!我が君は気まぐれでその人間を拾い、暇潰しに面倒を見ているだけに過ぎない!」
「…ん?」
「チッ…、出たカ…。」
急に頭上から高圧的な声が聞こえてきた。
痛む全身でなんとか上を向くと、木の上に黒衣の鎧騎士が立っているのが見える。
「あれは……。」
その鎧騎士は、チビッ子に少しだけ外見が似ていた。
銀髪に赤い瞳。そこが似ている。そこだけが似ている。
だがこちらは耳の上から二本の捻れた大角が生え、顔もチビッ子とは違い、生意気すぎるどや顔だ。性別も男で、身長は恐らく俺より高い。
そんな鎧騎士を見るガウードちゃんの顔は、とても不機嫌そうだった。
「しかし、貴様が人間を連れ歩いているとは珍しいじゃないか、防人の!」
「グリムに頼マれタ。ソレにユウジ、普通トちがウ。 オマエこそ、人前ダゾ。言いツケ、破ってイイのカ?」
「ふん!そいつは人じゃない、ワースレスだ!その気になれば虫けらより簡単に殺せる生物相手に、何を警戒する必要がある!?」
「…人間ノ言葉、上手くナッタ、ナ。」
――チャキリッ。―ガウードちゃんは目を細め、ふと腰の剣に手を伸ばした。
「ふん、お前こそな防人の! …ん?ま、待て、その人間よく見れば…。」
鎧騎士は急に俺の顔を凝視しだし、途端に顔色を曇らせる。
「な、なぜ貴様がここに…!?い、いや、違う!貴様は400年前に確かに死んだ筈だ! き、貴様、一体何者だッ!?」
「え? …えっとガウードちゃん、俺どうすればいいの?」
「グリムの許可、ナイ。勝手に名乗らナイほうが、イイ。」
「そ、そうか。なら…。」
顔を見返すと、鎧騎士は少し怯えるような様子で身構えた。俺寝たきりなのに。
「―――俺はDD(男子奴隷)だッ!」
「DDだとォッ!? 魔族の敵…っ!や、やはり貴様、死んでいなかったのかッ!」
「…なんの話?」
「…わからナイ。多分、気にしなクテイイ。」
「くっ、何故我が君はわざわざ貴様などと同居を始めたのだ…!この私が居ると言うのに……ッ!」
鎧騎士は血が出るほど歯噛みし、わなわなと拳を震わせている。
「…なんで同居のこと知ってるの?」
「アイツ、グリムのストーカー。」
「あぁ……。」
「ええい、仕方あるまい!今日のところは一旦引いてやる! だが覚えていろDDよッ!私は必ず貴様に復讐するッ!400年前のあの雪辱を、必ず晴らしてみせる! ―とぅッ!」
―ぐしゃり。―足を踏み外した鎧騎士―もといストーカーは、木から落ちて顔面で地面に着地する。
けれどすぐに起き上がり、涙目に鼻血まで垂らした情けない顔でキッと俺を睨みつけた後、一目散にその場を走り去っていった。
…なんて慌ただしいストーカーだろう。ストーカーならストーカーなりに、せめてもっとひっそりとやってほしい。
ただ、この森には俺とチビッ子とガウードちゃん以外にも、どや顔が特徴の魔族のストーカーが居る。それは確かにわかった。
それから、この世界の忌むべき歴史についても、ほんの少しだけ。
ガウードちゃん提案の自然との触れ合いで得られたものは、恐らくその辺りの情報くらいか。俺の心は、到底生き返ったりはしなさそうだ。うん。
必殺!四日後に更新すると言いつつ翌日更新するパターン!
こんな感じでわりとサクサク更新する日もあります。いかんせん内容が軽いですからね。サクサクですサクサク。
なのでとりあえずブクマしてみて、他の小説の更新を待つ間の暇潰しにでも役立ててください。
次回の更新は、前回の予定通り日曜日です。もしかしたらまた早くなるかも?
サクサクですサクサク。




