ツンデレに対しての憧れ
本日、俺は自分の部屋でのほほんと本を読んでいた。よくアニメ化されている、王道中の王道、そんな設定を盛り込まれたベタなライトノベル。しかし、例えベタであっても面白いものは面白い。
そう床に体育座りして頁を捲っていると、不意にドアの開く音が聞こえた。その犯人が誰だか分かっているが故に、俺は見向きもせずに会話する。
「いらっしゃい」
「ごめん。邪魔した?」
「ううん、丁度暇してた。こっちにおいで」
此処に来て漸く顔を上げる。走ってきたのか所々着崩れた制服に、耳元で纏められた長髪。学校では決して見せないような無表情が張り付いていた。
彼女、つまり覚は言われるがままに俺の側に擦り寄り、ぐっと体制を傾けた。どうやら読んでいるものが気になったらしい。
「気になるの?」
そう言って、本を閉じて表紙を見せると、納得したように頷いた。その表情が何処か辛そうだ。
「あぁ、これ。ツンデレキャラ居るよね」
「嫌い?」
そう問いかけると、覚は少し悩ましげに眉を顰め、体育座りをした。目線が忙しなく交錯し、一点に定まらない。困っているときの癖だ。
俺は急かす事なく覚から目を外し、ライトノベルに目を戻す。言葉が纏まったら口を開くだろう。そう思って丸々一頁を読み終えた時、声が聞こえてきた。
「嫌いじゃ…………無いと……思う。ただ…………その……」
「うん?」
「羨ましいとは……思う」
“羨ましい”……ねぇ。また独特な考えをお持ちのようだ。捻れた考え方をするところがこの子らしいところ。
覚は床に手を着くと、だらんと両脚を伸ばし始めた。そうしている間にも、目一つ合わせない。
「無愛想に振る舞っても好かれている所とか……。ちょっと……羨ましい…………」
その答えを聞いた時、俺は無意識に覚に抱き付いていた。女の、細く華奢な体をすっぽりと包み込む。それは彼女自身の性格を表しているようにも思えてしまう。
覚自身、本来の性格は御世辞にも明るいとは言えない。どちらかと言えば無愛想で、物凄く口下手。それでも必死に明るく振る舞うのは、人から悪く言われない為の防御。人間関係を円滑にする為、人からの愛を得る為、必死になって振る舞っている。そしてその演技は、上級の女優さえも凌ぐ程に上手い。
だから……嫉妬しているのだと思う。奔放に振る舞って、理不尽な事をしても許される子に。ああ成りたいと心から願っているのだと思う。
「宵光、駄目だよ。抱き付く相手を間違えちゃ」
その声は酷く優しく、其れでいて悲痛だった。
─終─
ツンデレとの戦い(?)は忍耐力です!!
私はしょっぱやで心が粉砕されます……(・_・、)
もっと強くなりたい……。