脆さ
白い壁、存在するのは勉強机とシングルベッド、それから本棚。そんな物の少ない部屋。でも白や淡いピンクを基調としている所から、少女の部屋である事は明らかだ。
俺はその部屋の中心で、正座していた。膝に上半身を丸々覆い被せて来るのは幼なじみの女の子。
普段は気丈に振る舞ってはいるが、存外脆い。今もかなり弱った状態だ。そしてそんな彼女を労うように、そっと髪を撫でる
「覚……」
名前を呼ぶと、ぴくっと僅かに反応を示した。でもそれだけで、後は何もしない。顔を上げる事も、胴に抱き付く事も。
でもか細い声でこう返して来た。
「私が欲しいのは干渉じゃない。ただ放って置いて欲しかった」
膝に温い、湿り気のあるものが広がってゆく。覚の涙だろう。
俺は片手で放り出された冷たい指先を包むと、片方で頭を撫でた。
「宵光は……やっぱりいいね……。家の親はこうやってくれない。放って置いてくれない。心配してくれるのは有り難い。けど私は励ましより、こうやって黙ってくれる方がいい」
「有り難う」
傷付いている人を癒すのは、人によって大きく異なる。
励まされるのが良いと言う人もいるし、慰められるのが良いと言う人もいる。はたまた覚のように放って置いて欲しいと願う人もいる。
前にぼやいていた事を思い出す。
──あんまり親の前でうじうじしてるとさぁ、怒られるの。『何時まで泣いてんだ』って。『私が何時泣こうが、アンタ達には関係無いでしょ?』って思うんだけどね
──心配なんだよ
──分かってる。だから我慢してる。我慢しているから、宵光を頼ってる。辛くなったら言ってよね?
覚にとっては、傷口に塩を練り込まれるようなものなんだろうなぁ。親にとっては励ましているつもりなんだろうけど。
基本的に仲の良い親子だけど、感情まで必ずリンクしている訳じゃない。というか、思春期の子供の心情を完全に理解出来ている親は、殆どいないだろう。
だからこうして色々な逃げ道を作る。自分に合った助けを求める。俺はその中の一部だ。
不意に膝の上の重みが消える。ボロボロの表情をした覚が俺を見つめていた。それを労るように笑うと、頬を撫でた。
「回復した?」
「うん」
─終─
そういや宵光って、初期と比べて性格大きく変わったなぁ……。
と言うのが最近の感想です(・_・、)
覚は安定のメンヘラで、ヤンデレ。
でも其れを押さえ込んでいる一面のあるような子です…………(;´Д`)