ウホッ♂漢だけの勇者一行 マジで帰りてぇ…
さっそく2話目です
結局、俺の専属騎士は近衛ゴリラことシルヴィア・シルヴィア・シルヴィア(通称:ニシローランドシルヴィア)になった。なってしまった。
……………どうしてこうなった。
〜〜〜遡ること2時間前〜〜〜
「え……テュールさんって既婚者なの!?」
俺の驚愕の声にギュミルちゃんが頷いた。一縷の望みを胸にテュールさんを見ると……頬を染め恥ずかしそうにしながら…頷いた。
……あぁもうどうでもいいや。魔王?どうぞご勝手にー。あーもうしらね。あーめんどくさ。
こうして世界は魔王に滅ぼされちゃいましたとさ。チャンチャン。はいおしまい。
「…ディオ?」
フラフラと謁見の間の隅まで行き、体育座りをして落ち込む俺をギュミルちゃんが呼んだ。
顔を向けると心配そうな顔をしたギュミルちゃんと汚物を見るかのような目を向けてくるキュレイ、青い顔をしたテュールが目に入った。いやそれ以外もいたんだけどさ、他のはもうどうでもよかったっていうかね……はぁ。
「ゆ、勇者様、どうなさいましたか? わ、私に何かご不満がありましたでしょうか?」
テュールが青い顔のまま問いかけてきた。……えぇありますとも。ご不満アリアリですよ!
俺以外の男に心奪われたテュールにも!勇者の俺を差し置いてテュールに手を出した男にも!テュールが既婚者だと知ってて俺の騎士に任命したギュミルちゃんにも!
そして何よりキュレイ!明らかに黒幕のお前は絶対に許さない!絶対にだ!!
…いや、冷静に状況を整理するんだ俺。落ち着くんだ俺。冷静になれ俺。そう、びーくーる俺……。
……ふぅ、だいぶ落ち着いた気がする。
まずテュールもその旦那も悪くないな。今日俺に初めて会うまで他の男を好きになるな、俺に惚れろっていうのは無理とは言わないまでも困難だろうな。うん。
旦那の方は……悪くないってのは頭では分かるんだが、気持ちの部分では許せないんだよなぁ…。俺のテュールをぉ!! ……ま、まぁ置いておこう。
そんで次にギュミルちゃんはだけど、さっきの会話を聞いた感じなんも分かってないんだろうな。テュールを俺の騎士としてくれたのも俺を嵌めようとしたとかじゃなくて俺からのお願い(脅迫? ハッ、何の話か知らんな!(ゲス顔))を叶えようとした結果だしな。
…そうだな、そもそも俺がテュールを俺の騎士にしてくれって言ったんだもんな。みんなは悪くない、俺がテュールのことを生娘だと思い込んでたのが悪いんだ。
だがキュレイ、貴様だけは絶対に許(ry
でも、そうか、テュールは既婚者なのか…じゃあ別の人が良いなぁ……。え、お前最低だなって? 聞こえん、聞こえんなぁ!
「テュールさん、別に不満なんてない。…でも旦那さんが居るってことは俺と一緒に行って危険な目に遭う訳にはいかないだろ? だから残念だなぁって思ってさ」
「勇者様…」
「確かにディオのいうとおりですね…しかし未婚者となると……」
俺の(表面上は)気を使った言葉にテュールは感激して瞳を潤ませ、ギュミルちゃんは納得したように頷いたあとキュレイと近衛ゴリラに目を向けた。
…え、なに皆さん伴侶がいらっしゃるの? お盛んですこと…。
この分だとキュレイか近衛ゴリラになるんだろうけど……正直、それならいなくてもいいかなって思うんだよね。むしろ来んな。
代わりに物資とか資金とか貰った方が嬉しいわ。
「ではディオ、あなたの騎士は−−」
「あ、ギュミルちゃん、やっぱり騎士はやめて代わりに物資とか増やしてもらうことってできない?」
「…すみません、先ほどの式で騎士を対価と定めた以上、変更はできません」
「いやー、でもさ、テュールを任命したけど別の騎士に変えようとしてるじゃん?」
「式での契約の際には『近衛騎士の1人を勇者様の騎士に』という風に記録されていますので、誰を連れて行くかは変更が可能なんです」
「うわー……」
ないわー。なにそれ俺に都合悪すぎじゃね? え、なに、勇者嵌めようって考えてたの? さすがの俺も怒っちゃうよ?
「納得してください。で、ディオの騎士なのですが、シルヴィに任せようと思います」
「…シルヴィ?」
「はい。本名はシルヴィア・シルヴィア・シルヴィア。実力はテライア王国1とも言われています。」
「なんで3回も言ったんだ? 重要だからか?」
「いえ、シルヴィア・シルヴィア・シルヴィアがフルネームなんです。」
それなんてニシローランドゴリ……ちょっとまて、これまでの話から考えると俺の騎士になるのはキュレイじゃない未婚の近衛騎士だよな? さっきギュミルちゃんが見てたのは−−
「シルヴィ、貴女も構いませんね?」
「ウホッ」
「ねぇ今ウホッて言ったよな!? 言ったよな!?」
「ではそう言うことでよろしくお願いしますね」
「おい!」
謁見の間の入り口付近で待機していた騎士達に無理矢理引きずられる形で俺は謁見の間を後にし、俺の勇者任命式は終わった。
そんで時は戻って現在、ニシローランドシルヴィアと交流を深めてくれということで王城の一室に一緒に監禁されている。これ、勇者に対する扱いじゃないよな?
これってもう俺に対する挑戦って受け取って構わんのだよな!? 「構わんよ(裏声)」 よろしい、ならば戦争だ。
……はぁ。
「えっと…シルヴィアだっけ? 俺の騎士ってことで確認させてもらいたいんだけど」
「ウホ?」
「……あんた人間か?」
「ウホ!」
頷いてるけどよ…もし人間なら人間語で話そうぜ? ウホウホ言ってる人間なんて見たことねぇよ。
「人間だって主張するなら普通に話してくれないか? ウホウホ言われても俺には分からん」
「…分かりました、勇者様のご指示とあらば」
「そうそう、そうやって……え、えぇぇぇぇ!?」
「…どうかなさいましたか?」
「い、いやなんでも…ない」
ゴリ…シルヴィア、普通にしゃべれたのかよ……。え、なに、てことはウホウホ言ってたのって演技だったの? ギュミルちゃん何させてんだよ…いやギュミルちゃんがやらせてるとは限らないか。キュレイがやらせてた可能性もあるな。いやそうに違いない。
「じゃ、じゃあこれからどうするかだが…俺には良い案が思い浮かばない(というか考える気がない)から意見を聞きたい」
「そうですね…とりあえず協力者を探しましょう。物資の入手経路を幅広く確保することも必要ですし、戦闘面で役立つ者や野営の心得のある者、あとは交渉に長けた者が居るとだいぶ違うと思います」
「なるほどな…他には?」
「"勇者"という称号を使えばそれ以外のことは大抵どうにかなると思いますので、私からのご提案は以上です。強いて言うのであれば…」
「言うのであれば?」
「…できる限り異性の方はお仲間にされない方がよろしいかと思います」
「どうして?」
「規律の厳しい軍隊でもない限り、男女の関係による不和が原因で起こる諍いはつきものですので」
「それは…めんどくさいな」
「はい、ですので出来れば全員男性にしてください」
「わかった」
……シルヴィアって一応メス…じゃなかった、女なんだよな? まぁ手を出すような勇者(俺じゃねぇよ?)はいないだろうけどよ。
それにしても全員男か……つまんねぇ旅になりそうだなぁ。
「あー、俺やる気でねぇ(どんな奴が良いのかわからねぇ)からシルヴィアが適当に見繕ってくれ」
「かしこまりました。勇者様、本音はできるかぎり隠していただけると助かります。仲間の士気にも関わりますので」
「ん? 声に出てたか、すまん」
「本音の方しかおっしゃってませんでしたよ。それに顔にも出てました」
「わかった、以後気をつける」
「ありがとうございます。では、仲間にしても良さそうな者達を探して参りますので、後日面接をお願いします」
「え、シルヴィアに任せるよ(めんどくさいし)」
「相手の方に勇者様がどういった御方なのか仲間になりたいか確認していただく意味もありますので、面接だけはおこなっていただきます」
「……りょーかいでーす」
「では、行って参ります」
シルヴィアが見かけに似合わぬ丁寧なお辞儀をした後、静かに部屋を出て行った。……監禁状態が解かれたのか?
物音を立てぬように忍び足で俺も部屋を出て行こうと戸を開けた瞬間、10数名の笑顔の兵士に出迎えられたので笑顔を返しておく。
「勇者様、ご用件をお伺いします。その後私どもが代わりにやりますので、勇者様は部屋の中にお戻りください」
「あ、いや〜外の空気が吸いたいな〜なんて……ハハハハハ」
あ、俺の監禁状態は変わらないのね…。
〜〜〜次の日〜〜〜
さっそくシルヴィアが選んだ仲間候補がやってきた。なんか背筋に寒気が走ったんだが…気のせいか?
「勇者様、昨日の成果のご報告とこの者との面接をおこないますのでよろしくお願いします」
「はいは〜い」
「…では先に面接の方を済ませましょう。ではあなた、軽い自己紹介を」
「はい! 私の名前はドール・バトールと申します。戦闘は苦手ですが、野営における知識や技術では他の者に劣らないと確信しております。」
「へぇ…じゃあ採用ね」
「……え?」
「おめでとうございます、ドールさん。これからよろしくお願いしますね」
「あのー…もう終わりですか?」
「はい、これで面接は終わりです。お疲れさまでした」
部屋の外から数名の兵士が入ってきて困惑するドールを連行するかのようにして部屋から連れ出して行った。はぁ〜終わった〜。
で、あとは昨日の成果だっけ? まぁ適当に聞き流せばいっか!
「勇者様、一応ドールさんの情報について補足させていただきます」
「あー別にいら−−」
「彼はホモです」
「…………………は?」
「彼はゲイです」
「……」
「彼は同せ−−」
「いや、聞こえなかったわけじゃないからな」
「私は男の方同士の恋愛に関しては大丈夫だと思います。むしろ推奨です」
「…お前もしかして」
「え、もちろんそのとおりですよ? 男性のみの方が良いと提案したのも、私が自ら候補者を探しにいったのもこの為です。あ、男女関係が〜というのも嘘ではないですよ、メインの理由ではないというだけで」
「…やっぱりドールは不採用、仲間の選抜も誰か他の奴に−−」
「勇者様の同行者につきましては私が一任されてますので、それは出来ませんよ。それに残りの同行者の選抜も終わってますし」
「俺が不採用にすれば良いんだよな!?」
「ははは、全員採用していただくに決まってるじゃないですかヤダー」
「ふっざけんなぁぁぁあああああ!!」
……誰かコイツを止めてくれ。俺もうヤダ……お家帰りたい……。
〜〜〜数日後〜〜〜
「よーし、じゃあいくぞー(棒読み)」
「へい、兄貴!」
「頑張りましょうね、勇者の旦那!」
「勇者様、寝床は私に任せていただければ野営でも大丈夫ですよ♪」
必死に抵抗してなんとか3人にまで減らせた。……ここ数日が俺の人生で一番頑張った時間かもしれないな(遠い目)。
大半の奴らがマッチョのナイスゲ…ガイだったのが精神的に辛かったわ…。
こうして俺たち勇者一行は魔王討伐の旅に出発した。シルヴィアのドラミングの音と共に。
昨日の夜、急に書きたくなって書き始めましたが……どうですかね?
まぁあと1、2話で終わっちゃうんですけどね。
(2015/9/25 18:08 追記)
この話のタイトルの"ウホッ"とシルヴィアの"ウホッ"は関係ありません。
というか、さっき「あれ、これってうまい具合に…」って気付きました。
いやー、ビギナーズラックって奴ですかねぇ(違う)。