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え、勇者になれ? めんどくせぇ…

いや〜、他の作品の続きも書かなきゃいけないとは思いつつも書きたくなっちゃったんですよねぇ…テヘ(殴


俺はディオ・マークス、大変不本意ながら"勇者"である。

ここテライア王国の国王ギュミルから任命された。

正確には2週間前にギュミルが俺を勇者に選んで、1週間前に俺の居るウォル村にその知らせが届いて、そしてつい昨日俺に伝えられた。

1週間前に届いたはずなのになぜ昨日まで知らされなかったのかといえば、俺が任命されたことを祝う準備のために時間が必要だったかららしい。


準備期間が1週間というわりには随分と盛大な祝宴が開かれた。

チビ共は「勇者のおにいちゃん、あくしゅしてー!」とか言いながら囲ってくるし、(たぶん)初対面の男共からは「まさかディオが勇者になるとはな…。まぁ昔から何か他の奴とは違ってたし、デカイことやってくれるとは思ってたけどな!」とか言って馴れ馴れしく肩組んで来たり、それまで顔をあわすたびに「おい穀潰し、いつになったらこの村出てくんだ?」とか台所にたまに出てくる害虫を見るかのような目で俺を見ながら言ってきやがった隣の家の奴を含めた女共は「応援してます、勇者様!…これ受け取ってください」とか言って自称手作りのアクセサリーを渡して来たり、大人連中は「あんたならいつかこうなるんじゃないかって思ってたよ!」とかなんとか言ってきやがった。


チビ共はまぁ許してやろう。ときどき余計なことをして俺の貴重な休憩時間を奪ってく奴も居るが、あいつらは基本的に無害だからな。

……だが他の奴らは許さん。

まず男共、お前らが昔「ディオに触るとディオ菌が移るぞ!そいつゼッコーな!」とか言って俺のことハブってやがったよな? お前らの顔なんざ覚えとらんが、少なくとも馴れ馴れしく肩を組まれるような間柄のやつはいねぇはずだ!

次に女共、お前らは普段の自分の行動を少しは振り返れよ…。特に隣の家の……名前なんだったっけか? まぁいいや、お前は今更何をしようが手遅れだ。あ、お前らから貰った自称手作りアクセサリーだけどな、何人か被ってたし値札外し忘れてるのもあって嘘だってのバレバレだったからな? もちろん1つ残らず売り払ってやったよ。

そんで大人連中、お前らが俺の親に「あんたも大変だねぇ。ディオだっけ? あんな碌でもないのがあんたらの子供とは思えないよ」とか言ってたの知ってんだからな? そのせいで「こんなことまで言われてねぇ…。ディオ、そろそろ真面目に頑張ってみないかい?」とか泣きそうな顔で言われた俺の気持ちになってみろってんだ!

最後にお前ら全員、俺の時間と体力をくだらねぇことに使わせやがって……。なんでわざわざ1人1人相手せにゃならんのだ!用意された飯にはなかなかありつけんし、「ハハハ、ソウデスネー。ガンバリマスデスー(棒読み)」って感じに流しながら(……疲れた…もう、帰りてぇ)とか考えて途中で適当なところで家に帰ろうとしたらさりげなく俺を囲んできやがるし(以下略)。


それにしてもギュミルめ…まったくもって迷惑な奴だ。あいつが俺を勇者なんかに任命しなければ俺がこんな目に遭う必要はなかったんだ。

直接会ったことはないがきっと太ってて厭らしい顔してて「デュフフ」とか言ってるような奴に違いない。

え、不敬だろって? いやいやいや、会ったことも話したことも…さらに言えば見たことすらない相手を敬えって方が難しいだろ。

特に何か成し遂げた偉大な王様だとかでもあるまいし…。まぁ俺が知らないだけって可能性もあるだろうし、なんかすごいことやってたとしても今回の件で敬う気は無くなってるけどな(笑)。

そういえば来週には王都に行って会うんだっけか? いやーどんな面してんのか楽しみですわー。



 〜〜〜一週間後〜〜〜


「ディオ・マークス。テライア王国27代目国王ギュミル・フリュー・テライアの名において、あなたを勇者に任命します。我がテライア王国のため、そして我々人類のために魔王を倒してください。お願いできますね?」

「え、嫌です」

「…………は?」

「いや、だから嫌です。魔王討伐とかめんどくさいじゃないですかーやだー」

「え、ちょ…」

「俺ちゃんとお断りしましたからね? じゃ、帰りますんで」


結果から言ってギュミル…様?というかギュミルちゃんは10歳前後の美少女だった。

いやー……いいね、美少女国王様!とくに可愛いって部分が!

…おい今俺のことロリコンとか言った奴出てこい、喧嘩なら買ってやる。

てかロリコンっていうなら俺じゃなくて大臣どもの方だろ。なんかもうすげぇ危ない顔してんぞ。国王様に向ける顔じゃねぇな。

近衛騎士が全員女なのはこのせいか。……一部女なのか、いや人間かすら怪しいゴリラみたいのも居るな。うわこっち見んじゃねぇ!?


「でぃ、ディオ…ほんとにダメか?」

「言ったでしょう? めんどくさいのは嫌なんです」


こっち見ながらドラミングしてる近衛ゴリラに警戒しつつ答える。鎧を着てるせいでガシャンガシャンすげぇうるさいんだけど何で誰も注意しねぇんだ? ギュミルちゃんも耳おさえてるじゃねえか。

ギュミルちゃんが話すときだけドラミングすんのやめる知性はあるみたいだし、ただのゴリラ…違うな、ただの近衛ゴリラじゃねぇんだろう? ちゃんと調教しとけ!


「……さっきからディオが熱い視線を向けてるゴリ…騎士をディオの騎士にしても良い。母様にそっくりということで父様のお気に入りの騎士だが私が説得してみせる。それでもダメですか?」

「はっはっは、そんなことしやがったら謀反を起こしますよ? てか今ゴリラって言いかけましたよね?」

「い、言ってないもん!」

「いやいや、俺ちゃんと聞きましたよ?」

「言ってないっていってるの!」

「えー嘘はダメでしょー」

「嘘じゃないもん!言って…ない…もん…」

「あ、ごめんごめん泣かないで!俺が悪かった!ギュミルちゃんはちゃんと騎士って言ったよね」

「……うん」


ふう、危ない危ない。あと少しで幼気な少女泣かせてしまうところだった。俺にそんな趣味はない、断じて。

……………あー、聞いてないフリっていうか気付かないフリしてたけど…ギュミルちゃん言ったよな?

あの近衛ゴリラがギュミルちゃんの母親そっくりだって!? いやいやいやいやそんなはず無いだろ!見たことないけど!

仮に本当だとすると先代国王は趣味わりーな…。


う〜ん…近衛騎士をつけてもいいから魔王討伐に協力してくれ、か。

ゴリラは勘弁だけどそれ以外、特にゴリラの2つ隣の綺麗な騎士さんをつけてくれるなら……まぁ考えなくもないかな!

ももも、もちろん騎士として頑張ってもらうだけしゅよ? 手を出そうだなんてこれっぽちもない…とは言わないけどな。いやむしろ手を出さない自信がこれっぽっちもないな!

ま、まぁ先代国王を説得してみせるというくらいなんだから、あの騎士さんをつけてくれるよう頼めばたぶん断られないだろうな。

……父さん、母さん、俺大人になります!!


「ギュミルちゃん、そのゴリ…騎士の2つ隣の騎士をつけてくれるなら−−」

「ダメ」

「…え?」

「ダメ」

「いや、俺に魔王を倒して欲しいんだよね?」

「うん」

「必要ならギュミルちゃんのお母様そっくりの近衛騎士を、先王を説得してまでつけてくれるんだよね?」

「うん」

「じゃあその2つとなりの騎士さんをつけてくれるくらい、いいでしょ?」

「……むう」

「いいの? 俺、魔王倒しに行くのやめちゃうよ?」

「どうしても?」

「どうしても」

「……わかった」


よっしゃぁぁぁあああああ!!!!

さっそく今晩にでもいただくとしましょうかね…おっとギュミルちゃん、そんな怖い顔で俺のことを睨まないでおくれ。俺はただ正当な報酬を要求しただけなんだからさ!

ほら良く言うだろ? 英雄は色を好むってさ。それに勇者は姫様とか魔王の娘とかパーティの女の子と結婚したりするのもよくある話じゃないか。

それに則るならギュミルちゃんをってことになるけど…あと数年は待たないといけなくなりそうだしな。べ、べつに先王とか大臣達が怖くてギュミルちゃんを選べなかった訳じゃないんだからね!


「…キュレイ、今このときをもって私の護衛の任を解き勇者ディオに騎士として仕えることを命じる」

「……」

「キュレイ」

「…はい、ギュミル陛下」


返事をして一歩前に出たのは俺の指定した騎士…ではなく、ゴリラを挟んで反対側の騎士だった。

う〜ん、そっちの子も悪くないんだけど…違うんだよね。こうなんていうかさ、足りないんだよね、主に胸囲が。


「ギュミルちゃん、その子…キュレイさんも良いんだけど、俺が欲しいのは反対側の騎士さんなんだよね」

「反対側…テュールですか?」

「うん、たぶんそう」

「! そ、そうですか、ではキュレイは引き続き私の護衛、テュールを勇者ディオの騎士とする。頼みましたよ、テュール」

「はい、ギュミル陛下。必ずや勇者様と共に魔王を打ち取ってみせます!」

「よろしくね、テュールさん」

「はい、勇者様!」


キュレイが下がるのと同時にテュールが前に出た。その一歩前にでるという動作すら見惚れるほど美しい!

そして俺がよろしくと言ったあとに見せた笑顔!もう今すぐお持ち帰りしてしまいたい!

ほ、ほんとに良いんだよね? もう返して上げないよ? 嘘だって言ってももう遅いよ!?


「ではディオ、魔王討伐に行ってくれますね?」

「もちろん!…もしOKなら、キュレイさんも俺の——」

「すみません、これ以上近衛騎士を減らすわけにはいかないんです」

「そっか、まぁそれならしょうがないね。わかった」

「ありがとうございます。では、これをもちまして勇者ディオの任命式を終わります」


そういうわけで俺は魔王を倒すことになった。


…ギュミルちゃん、テュールさんをありg…ん?


キュレイがこっちを横目で見ながらギュミルちゃんに何か言っている。ギュミルちゃんが小さな手で俺に待っているようにとの指示を出している…んだよな、あれ? 歳の離れた従兄弟に会ったあとの別れ際にやるような「ディオおにいたん、バイバイ」的な感じの意味で手をにぎにぎしてるわけじゃないんだよな? もしそういう意味なら俺ここに残るよ!魔王討伐とかめんどくさいしな!俺と別れなくてギュミルちゃんはハッピー、俺はめんどくさいことをしなくて済んでハッピー、さらに言えば魔王も倒されなくて済んでハッピー。みんな幸せ、最高じゃないか!

…おっと話が終わったみたいだ。


「あぁディオ、言い忘れていましたがテュールは既婚者ですので、本人と夫の両人に合意を得てくださいね。…キュレイ、これでいいんですよね? どういう意味か分かりませんが…」

「はいギュミル陛下、どういう意味だったのかは陛下がもう少し大きくなられてからお話しします」


なん……だと…。テュールさんが既婚者!? しかも旦那さんにも許可をとれ!? それどんな罰ゲームだよ……。

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