第二十八話 『スクランブル・スクランブル』 OP
昼休みの教室に光輔らの顔があった。
輪となってわいわいきゃっきゃと大騒ぎし、楽しそうに笑う。
「んじゃ、来週の金曜な」
羽柴祐作の念押しにみなが頷いた。
「楽しみだよな」一際輝く笑顔で、光輔が仲間達の顔をせわしなく見まわした。「去年は雅と花火大会だけしか行かなかったからさ」
「どうしてそんなにお祭り好きなの」
「だってさ、屋台とかお神輿とか、すげえ楽しいじゃん」
不思議そうに見つめるみずきに笑い返し、当然と言わんばかりに光輔が受け答える。
「そうなんだ……」
「そうっしょ」
「ま、なんとかとヤンキーはお祭りが好きって言うからな」
「そりゃ高いとこだ。……ヤンキー?」
腕組みをしながらもっともらしく口にした茂樹に、祐作からのツッコミが入った。
一同苦笑いの中、何気なくみずきが振り返る。
窓際の席で一人外の景色を眺める夕季の姿が目に入った。
「ねえ、ゆうちゃんも誘ってみようか」
それに人一倍強く反応したのは、やはり茂樹だった。
「ぜひ、ぜひ誘おうよ」
仲間達からの反響はおおむね上々だった。
光輔を除いて。
「いいけど。たぶん来ないと思うよ」
「どうして」
光輔とみずきが向き合う。
その横で目をつり上げた茂樹が二人に注目していた。
申し訳なさそうに半笑いになり、光輔が夕季の方へ視線をやった。
「あいつ、そういうとこ苦手みたいだから……」
外の景色を見つめる夕季が、つまらなさそうにため息をついた。
*
『何か見えたか』
司令室からの桔平の呼びかけに、礼也が応答する。
「いや、何も見えねえ。一メートル先もわかんねえって」グランド・タイプに集束した状態で、砂嵐のような視界にちっと舌打ちした。「こんだけのイナゴ、本場アフリカでも見たことねえぞ」
「アフリカに行ったことないんだけどね」
「バカ野郎、俺もだって、光輔」
「ふざけてないで集中して」
夕季の叱責に二人が気を引き締め直す。
プログラム・アバドンとの決戦は間近に迫りつつあった。




