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7話 出発の朝

朝。


鳥の鳴き声で目が覚めた。


「……ん」


ゆっくりと体を起こす。


見慣れない天井。木の匂い。


「……ああ、異世界か」


昨日の出来事が一気に蘇る。


刺されて、女神に会って、村をひっくり返した。


「……濃すぎだろ」


軽く体を伸ばす。


調子は悪くない。むしろいいくらいだ。


「起きてますか?」


扉の向こうから声がした。


「起きてる」


扉が開き、娘が顔を出す。


「朝ごはん、できてます」

「ありがと」


立ち上がって外へ出る。


朝の空気はひんやりしていて気持ちいい。


村の様子は――昨日と少し違っていた。


人が動き、声がある。


「……戻ってるな」


完全じゃないが、確かに動き出している。


「おはようございます!」


村人の一人が頭を下げてくる。


「……おう」


少しだけ戸惑うが、悪くない。


家に戻ると、すでに食事が用意されていた。


パンにスープ、簡単な肉料理。


「……うまそうだな」


「どうぞ……!」


娘が期待するように見てくる。


「いただきます」


一口食べる。


「……うまい」


素直にそう言うと、娘がほっとしたように笑った。


「よかった……!」


父親も、しみじみと呟く。


「久しぶりに、まともに食べられる気がします」


「……まあ、あの様子じゃな」


ダグが肩をすくめる。


少しだけ空気が重くなる。


「……もう大丈夫だ」


ぽつりと言う。


「しばらくは混乱するだろうけど、前よりはマシになる」


「……はい」


父親が深く頷いた。


食事は静かに進む。


でも、嫌な静けさじゃない。


どこか落ち着く時間だった。


食後。


「そろそろ行くぞ」


外からダグの声がする。


「早ぇな」

「商売だからな」


短いやり取り。


「……じゃあ」


立ち上がる。


家族の方を見る。


「世話になった」


「い、いえ……!」

父親が慌てて頭を下げる。

「こちらこそ……本当に……」


母親も続く。


「……あの」


娘が小さく声を出す。


「もう、行っちゃうんですか……?」


少し寂しそうな顔。


「まあな」


少し考えてから続ける。


「でも、また来るかもしれない」


「……はい!」


ぱっと顔が明るくなる。


外に出る。


荷車の前でダグが待っていた。


「準備いいか」

「ああ」


荷台に乗る。


「行くぞ」


荷車がゆっくりと動き出す。


村の出口。


振り返ると、家族と数人の村人が見送っていた。


手を軽く上げる。


向こうも振り返してくる。


「……悪くないな」


ぽつりと呟く。


「何がだ」

「こっちの話だ」


ダグはそれ以上聞かなかった。


道に出る。


視界が一気に開ける。


空が広い。


「で」


ダグが口を開く。


「次は町だ」


「どんなとこだ?」

「人が多い」

「当たり前だろ」

「あと、面倒も多い」


「いいね」


思わず口角が上がる。


「何がだ」

「ネタがありそうだ」


ダグは呆れたように息をついた。


その時――


ふと、視界の端に違和感が走る。




一瞬だけ、何かが流れた気がした。




文字のようなもの。


だが、すぐに消える。


「……気のせいか」


昨日のことを思い出す。


コメント。


あれはスキル中だけのものか。


「……まあいい」


そのうち分かるだろう。


荷車は進む。


村を離れ、道を行き、新しい場所へ。


空を見上げる。


「さて」


小さく呟く。


「次は、どんな“真実”があるかね」


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