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元暴露系配信王、気づけば異世界で一国の王へと成り上がる  作者: アスハネ
◆第1章「配信王、異世界に落ちる」
4/25

3話 信用ゼロ

――地面。



「っ……いってぇ……」



背中に走る衝撃で、思わず声が漏れる。



土の感触。



湿った匂い。



さっきまでいた白い空間とは、まるで別物だ。



「……マジで来たのか」



ゆっくりと体を起こす。



見渡す。



木々。



草原。



遠くに見える、石造りの道。



完全に――異世界だ。



「はぁ……」



頭をかく。



状況整理。



刺された。



女神に助けられた。



で、ここにいる。



「……雑すぎるだろ」




腹に手を当てる。



傷はない。



でも、感覚だけは残っている。



妙にリアルだ。




「とりあえず……人か」



道の方を見る。



あそこに行けば、誰かいるはずだ。




立ち上がる。



歩き出す。




――数分後。



「……いた」



遠くから、荷車を引く男が見えた。



中年くらいか。



商人っぽい格好。




「おーい!」



手を振る。



声をかける。




男が、こちらを見る。




一瞬、目が合う。




……が。




スッと視線を逸らされた。




「……あれ?」




そのまま、何事もなかったかのように通り過ぎようとする。




「ちょ、待ってくれ!」



慌てて駆け寄る。




「道に迷っててさ、ここどこか教えて――」




「……」




男は、無言だった。



いや。



違う。




“聞いていない”。




視線が、合わない。



反応が、ない。




まるで――




「……俺、見えてるよな?」




小さく呟く。




男は、ようやく口を開いた。




「……なんだ、あんた」




その声は、明らかに警戒していた。




「いや、だから――」



言葉を続ける。




「ここどこか――」




「知らん」




即答。



しかも冷たい。




「は?」




「関わるな」




それだけ言って、男は歩き出す。




「いやいやいや!」




思わず引き止める。




「ちょっと待てって!」




男が、露骨に顔をしかめた。




「……なんだよ」




完全に、不審者を見る目だった。




その瞬間。




頭の中に、女神の言葉がよぎる。




――名声値0



――誰にも信じてもらえない




「……あー……」




なるほどな。




「これ、そういうことか」




信用が、ない。




初対面とかそういうレベルじゃない。




“話を聞く価値すらない存在”




それが今の俺。




「……詰んでないか?」






腹が鳴った。




「……最悪だな」




金もない。



知識もない。



信用もない。




あるのは――




「スキルだけ、か」




視界の端。




――スキル:配信者




意識を向ける。




使うか?




5分。



一日一回。




ここで使うのは、もったいない気もする。




でも――




「……背に腹は代えられない、か」




そう思った、その時。




「おい」




声がした。




さっきの男が、立ち止まっていた。




「……その格好」




じっとこちらを見る。




「旅人か?」




さっきより、ほんの少しだけ警戒が薄れている。




「……まあ、そんな感じだ」




適当に答える。




男は顎に手を当てる。




「道で倒れてたのか?」




「まあ、そんなとこ」




嘘じゃない。




しばらくの沈黙。




やがて、男はため息をついた。




「……仕方ねぇな」




「は?」




「このまま放っとくと、野垂れ死にしそうだ」




荷車を軽く叩く。




「乗れ」




「近くの村までなら連れてってやる」




……意外だった。




完全に突き放されるかと思ってた。




「いいのか?」




「ああ」




ぶっきらぼうに言う。




「ただし」




鋭い目。




「変なことしたら叩き落とす」




「しねぇよ」




苦笑する。




「助かる」




荷車に乗る。




ギシ、と音が鳴る。




ゆっくりと、動き出す。




「……名前は?」




前を向いたまま、男が聞く。




少しだけ考える。




本名か。



それとも――




「……トゥルースだ」




そう名乗った。




男は、少しだけ眉をひそめた。




「変な名前だな」




「よく言われる」





荷車は進む。




知らない世界。



知らない道。




でも――




「……悪くない」




ぽつりと呟く。




今度は。




少しだけ、やり方を変えてみるか。




そんなことを思いながら。




俺は、異世界での最初の一歩を踏み出した。


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