32話 報告
冒険者ギルドの扉を押す。
昼過ぎ。中はそこそこ人がいる。
酒の匂いと、いつものざわめき。
カウンターへ向かう。
「報告だ」
依頼書を出すと、受付は手を止めて目を通した。
「ああ、市場の件か。……もう終わったのか?」
「終わりだ」
ダグが横で軽く笑う。
「まぁ、そうだな」
「内容を聞く」
促されて、トゥルースは簡単に話す。
市場の違和感。
全体の傾向。
上にいる存在。
余計なことは言わない。必要な分だけ。
受付は少し考える。
「……最近、揉め事が減っている」
「そうか」
「報告とも一致する」
一拍置いて、頷く。
「依頼は達成扱いにする」
「だろうな」
ダグが肩をすくめる。
袋が差し出される。
「報酬だ」
受け取り、軽く重さを確かめる。
「評価も更新される」
「そうか」
「こういう案件を処理できる人材は少ない」
ダグがニヤける。
「だってよ」
トゥルースは反応せず、袋をしまう。
「他に依頼は受けるか」
トゥルースは少しだけ考える。
「いや、いい」
ダグが横を見る。
「珍しいな」
「一区切りだ」
受付が頷く。
「なら手続きは以上だ」
ギルドを出る。
昼の光。
人の流れ。
「で?」
ダグが聞く。
「どうする」
「次の街だな」
「今から出れば、日が落ちる前には着く」
少しの間。
「……いや」
「今日はやめる」
ダグが眉を上げる。
「なんでだ?」
「ちょっと試したいことがある」
「今夜な」
ダグが小さく笑う。
「分かった。先に休んでる」
「そうしてくれ」
通りを歩く。
宿へ戻る。
部屋に入ると、静かだった。
ダグの姿はない。
ベッドに腰を下ろす。
しばらく、そのまま。
やがて、日が落ちる。
窓の外。
町の音が少し変わる。
トゥルースは立ち上がる。
机の上に視線を落とす。
「……やるか」
小さく呟く。
一人。
静かな部屋。
外の喧騒は、遠い。
トゥルースは目を閉じる。
意識を、切り替える。
――試す。
それだけだ。




