20話 新しい町
街道を進むこと、半日。
「……見えてきたな」
ダグが前を指さす。
小高い丘の先。
石壁に囲まれた町が見える。
前の町より、やや小さい。
だが――
「人、多いな」
門の前には列ができていた。
「交易がそれなりに盛んなんだろ」
ダグが答える。
「その分、揉め事も多いがな」
「だろうな」
軽く笑う。
荷車が列に並ぶ。
馬が鼻を鳴らす。
ゆっくりと順番が回ってくる。
「止まれ」
兵士の声。
「行商だ」
ダグが商人ギルド証を見せる。
兵士が一瞥して頷く。
「通っていい」
視線がこちらに向く。
「同行者か」
「ああ」
「身分証は?」
懐から取り出す。
冒険者ギルドの証。
兵士が確認し、すぐに返す。
「……冒険者か」
軽く頷く。
「問題ない。通れ」
「どうも」
そのまま町の中へ入る。
石畳。
人の声。
行き交う人々。
前の町よりも雑多で、少し騒がしい。
「……確かに多いな」
「言ったろ」
ダグが荷車を進める。
「で、どうする」
「ギルド行くか?」
「……いや」
少しだけ周囲を見回す。
建物の配置。
人の流れ。
店の位置。
「先に軽く見る」
「何を」
「町の空気」
ダグが小さく笑う。
「仕事する気満々だな」
「違う」
軽く否定する。
「ただのクセだ」
「厄介なクセだな」
「否定はしない」
人の流れに乗る。
自然と足は、人の多い方へ向かう。
市場だ。
「やっぱりそっちか」
「人が集まる場所は情報も集まる」
「商人みたいなこと言うな」
「影響されたな」
軽く笑う。
市場に入る。
声が一気に増える。
呼び込み。
値段交渉。
客のざわめき。
「……悪くねぇな」
「気に入ったか」
「こういうのは嫌いじゃない」
視線を流す。
商品。
人。
やり取り。
一つ一つを、軽く見る。
その時――
「……あ?」
足が止まる。
「どうした」
「いや」
目を細める。
一つの露店。
果物を並べている。
よくある光景。
だが。
「今の……」
客と店主のやり取り。
値段。
渡された量。
ほんのわずかなズレ。
「気のせいか?」
ダグが覗き込む。
「いや」
小さく首を振る。
「違うな」
口元がわずかに歪む。
「何が」
「やり方が上手い」
一歩踏み出す。
店の前へ。
「兄ちゃん、安いよ!」
店主が笑う。
「へぇ」
軽く返す。
値札を見る。
周囲の客を見る。
そして、もう一度店主を見る。
「……なるほどな」
小さく呟く。
「何がだ」
ダグが後ろから聞く。
「“嘘”ってほどじゃねぇ」
一歩近づく。
店主の目を見る。
「ただの――」
わずかに笑う。
「誤魔化し、だ」
空気が、ほんの少しだけ変わった。




