16話 貴族の屋敷へ
町の中心から、さらに奥へ。
石畳はより整い、建物も明らかに質が変わる。
「……わかりやすいな」
「金持ちの区域だからな」
ダグが肩をすくめる。
「貴族様の縄張りだ」
「住みやすそうだな」
「表面だけな」
短く返す。
「裏はどこも同じだ」
「だろうな」
軽く笑う。
依頼書を確認する。
“内部不正の疑い”
場所は、この先の屋敷。
門が見えてきた。
大きな鉄門。
警備の兵士が二人。
「止まれ」
当然の反応。
「何用だ」
「ギルドからだ」
依頼書と紹介状を見せる。
兵士の視線が一瞬変わる。
「……確認する」
一人が中へ入っていく。
もう一人がこちらを観察している。
「……面倒だな」
「相手が相手だからな」
少しして、門が開く。
「通れ」
中に入る。
広い庭。
整えられた芝。
無駄に豪華だ。
「……金かかってんな」
「だから貴族なんだよ」
建物の前に、男が立っていた。
年は四十前後。
整った服。
だが、どこか神経質そうな目。
「……君が、ギルドの者か」
「まあな」
軽く返す。
「話は聞いている」
男は一歩近づく。
「今回の件、外に漏らすつもりはない」
「そりゃ助かる」
「だが」
目が細くなる。
「事実は、知りたい」
「依頼だからな」
肩をすくめる。
「そのために来た」
しばらく見つめ合う。
やがて、男は小さく頷いた。
「中へ」
案内される。
屋敷の中は、さらに豪華だった。
無駄に広い廊下。
装飾。
金の匂いがする。
「……で」
歩きながら聞く。
「何があった」
男は少し間を置いてから答える。
「金だ」
「シンプルだな」
「帳簿が合わない」
「どれくらい」
「かなりだ」
「誰が触れる?」
「限られている」
「つまり?」
「内通者がいる」
「……なるほど」
わかりやすい。
「で、証拠は?」
「ない」
「だろうな」
軽く笑う。
「だから呼んだ」
男がこちらを見る。
「君は、“そういうの”が得意らしい」
「まあな」
否定はしない。
「条件は?」
「事実だけでいい」
「誰であろうと?」
「……ああ」
一瞬だけ、迷いが見えた。
「例外はない」
「いいね」
口元が歪む。
「そういうのは好きだ」
廊下の奥。
一つの部屋の前で止まる。
「ここだ」
扉が開く。
中には――数人。
使用人。
管理役らしき男。
そして。
「……なるほど」
一目でわかる。
全員、何か隠している顔だ。
「全員、関係者だ」
依頼人が言う。
「ここから先は任せる」
「了解」
一歩前に出る。
静かな空間。
視線が集まる。
「……さて」
小さく呟く。
「誰が嘘ついてる?」
誰も答えない。
当たり前だ。
でも――
「すぐ終わる」
軽く言う。
その言葉に、空気がわずかに揺れた。




