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元暴露系配信王、気づけば異世界で一国の王へと成り上がる  作者: アスハネ
◆第1章「配信王、異世界に落ちる」
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1話 トゥルース最期の配信

夜。



モニターの光だけが、部屋を照らしていた。



「――どうも、トゥルースです」



いつも通りの声。


いつも通りの挨拶。



それだけで、画面の向こうは一気に熱を帯びる。



『きたああああ』

『トゥルたん待ってた!』

『今日は誰だ?』

『また暴露か?』



コメントが滝のように流れていく。



画面の端に表示された数字。


同時接続、十数万。


登録者数、250万。



それが今の“俺”の価値だった。



「今日はな――ちょっとデカいのいくぞ」



わざと間を作る。



その一瞬で、コメント欄がさらに加速する。



『まじか』

『来たこれ』

『神回確定』

『誰だよw』



「今回の相手は――登録者100万人超えのインフルエンサーだ」



空気が変わる。



『え?』

『ガチでやばいぞそれ』

『名前言えw』

『震えてきた』



「まあ、名前は後で出す」



軽く息を吐く。



「表じゃ“理想のカップル”で売ってるやつだな」



コメント欄がざわつく。



『あー…』

『察した』

『あいつか?』

『いやまさか』



「でも裏じゃ――」



一拍置く。



「普通に浮気してる」




『は???』

『うわああああ』

『終わったwww』

『炎上確定』



画面を切り替える。



ホテルの出入り写真。



別の相手とのやり取り。



日時、位置情報付き。



「証拠はこれな」



淡々と並べる。



「言い逃れは無理だ」



『エグすぎ』

『これはアウト』

『ファンかわいそう』

『トゥルたん容赦ねぇ』



「しかもな」



さらに一枚、画像を出す。



「相手、複数いる」




コメント欄が爆発する。



『クズすぎる』

『これは終わり』

『人間不信になるわ』

『トゥルたん神』



「――以上、今日の“真実”でした」



配信を締める。



いつも通り。



誰かの“裏側”を暴き、


誰かの人生を壊す。



それが、トゥルース。



それが、“俺の仕事”だった。




……終わったのは、配信じゃない。



その日の“夜”だった。




「はー……疲れた」


配信を切り、椅子にもたれかかる。


静まり返った部屋。


さっきまでの熱が嘘みたいに、何もない。


スマホが震える。


通知の嵐。


称賛、興奮、罵倒、脅し。


全部、見慣れたものだった。



「……いつものこと、か」



画面を閉じる。


その時だった。



――ピンポーン。



インターホンが鳴る。


こんな時間に?


モニターを見る。



フードを深く被った女。



顔は見えない。


「……誰だ?」



返事はない。



もう一度、チャイム。



――ピンポーン。



嫌な予感。



でも、足は止まらなかった。


ドアに手をかける。


鍵を外す。



開ける。




「――あんたが、トゥルース?」


女の声。


次の瞬間。


腹に、衝撃。



「……は?」



遅れて、理解する。



ナイフ。



深く、刺さっている。


「なんで……」


女は震えていた。


「全部、壊れたんだよ……!」


涙声。


「信じてたのに……!」




ああ、と。


妙に納得した。



「……そっか」



裏切られた側か。



それとも、ファンか。



どっちでもいい。



壊したのは、俺だ。



「……これ、因果応報ってやつか」



力が抜ける。



膝が崩れる。



視界が揺れる。




女は、逃げた。



足音だけが遠ざかっていく。



止める力も、ない。




床に倒れる。



冷たい。



血の匂い。



意識が、遠のく。




――ふと。



一人の名前が浮かぶ。



『トゥルたん、今日もありがとう』



ミオ。



「……あーあ」



もっと、違うやり方もあったかもな。




その時。



――声がした。




「やっと見つけた」


女の声。


でも、さっきの女じゃない。


もっと、軽くて。


どこか、楽しそうで。



「ほんと、やっとだよトゥルたん」



……は?


「ずっと見てたよ。全部」


意識が、引き上げられる。


暗闇の中で、光が差す。



「暴露も、コメント拾いも、あの間も」


「最高だった」



誰だよ。



「でもさ」


声が、少しだけ柔らかくなる。


「ちょっとやりすぎだったよね」



否定は、できない。



「だからさ――もう一回」



光が、強くなる。


体が、引っ張られる。



「今度は、“救う側”でやってみなよ」



「トゥルたん」



意識が、弾けた。



そして――


すべてが、光に包まれた。


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