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13話 消える荷の謎(前編)

町の外れ。


石畳が土の道に変わるあたりで、指定の場所はあった。


小さな倉庫と、止められた荷車。


「ここか」

「らしいな」


ダグが周囲を見回す。


人の気配は少ない。


その代わり――


「……警戒はしてるな」


倉庫の前に立つ男が一人。


腕を組み、こちらを睨んでいる。


「依頼人か」


近づく。


「ギルドから来た」


「……ああ」


低い声で返ってくる。


「話は聞いてる」


男は商人らしいが、かなり神経質そうだ。


「で、何が消えた?」


「荷だ」


「それは知ってる」


少し苛立った声で返す。


「どう消えたか、だ」


男は一瞬言葉に詰まる。


「……わからん」


「は?」


「気づいたら、消えてた」


「それを聞いてる」


ダグが横で小さく笑う。


「だから困ってんだろ」


「……いつだ」

「三日前」


「場所はここか」

「そうだ」


「目撃者は?」

「俺だけだ」


「他には?」

「いない」


「……一人で運んでたのか?」


「いや、本来は二人だ」


「本来は?」


男の顔が歪む。


「もう一人は……逃げた」


「逃げた?」


「翌朝にはいなかった」


「荷が消えた後か」

「……ああ」


「名前は?」

「リックだ」


「どこ行ったかは?」

「知らん」


「……都合いいな」


ぽつりと呟く。


男が睨んでくる。


「疑ってるのか」

「仕事だからな」


軽く流す。


倉庫を見る。


鍵はかかっている。


「中、見せろ」

「……ああ」


扉が開く。


中は――空。


「元々は何が入ってた?」

「布と香辛料だ」


「高いな」

「だから困ってる」


床を見る。


足跡は……多い。


だが、新しいものばかりじゃない。


「……ここじゃないな」


「何?」

「消えた場所」


男が眉をひそめる。


「ここだと言っている」

「違う……と思う」


少しだけ言葉を濁す。


「ここは“置いた場所”だ」


「……何が言いたい」


外に出る。


荷車を見る。


車輪。


地面。


「……おかしいな」


しゃがみ込む。


土の状態を確認する。


「ダグ」


「なんだ」

「この道、最近雨降ったか?」


「いや、降ってねぇな」


「だよな」


立ち上がる。


「普通さ」


地面を指さす。


「ここまで跡があって――」


少し先を指す。


「なんで、急になくなる?」


ダグが目を細める。


「……確かに」


男も近づく。


「そんなはずは――」


「いや、ある」


視線を落としたまま言う。


「実際、こうなってる」


「……っ」


男が言葉を失う。


「壊れた感じじゃない」


「無理やり止めた感じでもない」


周囲を見る。


草。林。道。


「持ち上げた……?」


「いや」


自分で言って、首を振る。


「それも変だな」


「何がだ」


ダグが聞く。


「痕跡がなさすぎる」


ぽつりと呟く。


「普通、何か残るだろ」


引きずった跡とか、足跡とか。


でも――


「何もない」


静かに言う。


「……じゃあどうやって消えたんだ」


「それがわからん」


正直に答える。


少し考える。


「……消えた、みたいだな」


口に出してから、違和感を覚える。


「そんなこと、あるのか?」


この世界なら、ありえるのか?


「……この世界、どこまでできるんだ」


小さく呟く。


ダグがちらっとこちらを見る。


「どういう意味だ」

「いや、なんでもない」


視線を戻す。


地面。


消えた地点。


「……ここだな」


ぽつりと呟く。


その瞬間――




風が、止んだ気がした。




「……?」


顔を上げる。


ほんの一瞬。


何かが“ずれた”気がした。


「今の……」


周囲を見る。


変わった様子はない。


だが――


「……気のせいか?」


少しだけ引っかかる。


「何かあったのか?」

ダグが聞く。


「いや……」


言いかけて、やめる。


「まだわからん」


正直に言う。


「でも」


ゆっくりと視線を上げる。


「何かあるのは確かだ」


空気が少し張り詰める。


「……今日はここまでだな」


「は?」


男が不満そうな顔をする。


「続きは明日だ」


「ふざけるな!早く――」


「焦るな」


遮る。


「適当にやると見逃す」


「……っ」


「ちゃんと見る」


静かに言う。


「その方が確実だ」


男は黙る。


納得はしていないが、反論もできない。


「……わかった」


渋々頷く。


「頼むぞ」


「ああ」


軽く手を上げる。


その場を離れる。


少し歩いたところで、ダグが口を開く。


「何か気づいたな」

「違和感だけだ」


「それで動くのか」

「それでやってきた」


短く答える。


「……そうかよ」


ダグはそれ以上聞かなかった。


空を見上げる。


「……明日だな」


ぽつりと呟く。


今はまだ、わからない。


でも――


「次は、見える」


そんな気がした。


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