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8話 町と金と身分

道は、やがて開けた。


遠くに見える――石造りの外壁。


「……あれが町か」

「ああ」


ダグが短く答える。


門の前には人の列ができていた。


「思ったよりデカいな」

「この辺じゃ一番だ」


荷車は列の後ろに並び、ゆっくりと進んでいく。


「なあ」

ダグがちらっとこっちを見る。

「金は持ってるのか」


「金?」

「町に入るのに税がいる」


「……マジか」


完全に盲点だった。


「銅貨三枚だ」

「安いな」

「俺はいらねぇけどな」


ダグは肩をすくめる。


「行商人はギルド証がある。それ見せりゃ通れる」

「なるほど。……俺の分だけか」

「そういうことだ」


「商人ギルドか冒険者ギルドに入れば免除だ」

「へぇ……」


ギルドか。便利そうだな。


「入るのもアリだな」


そう呟くと、ダグの視線が俺の服に向いた。


「その格好、目立つぞ」

「……やっぱりか」


明らかに浮いている。


「上等すぎる。盗まれるか絡まれるかだな」

「どっちも嫌だな」

「買い替えとけ」

「だな」


その時、何気なくポケットに手を入れた。


――違和感。


「……ん?」


取り出したのは、小さな巾着だった。


見覚えはない。


だが、そこには――




デフォルメされた女神の刺繍。




「……あいつか」


嫌でも思い出す。


巾着を開ける。


中には――




「……おい」


ダグが覗き込む。


「……それ、本物か?」




金貨が五枚、入っていた。




「どこの御曹司だ、お前」

「違う」


即答する。


「てか、これどれくらいの価値だ?」


ダグがゆっくりとこちらを見る。


「……は?」

「知らねぇんだよ」

「……お前、本当に何者だ」


呆れながらも、指を折って説明する。


「銅貨一枚で肉串一本」

「銅貨百枚で銀貨一枚」

「銀貨百枚で金貨一枚だ」


頭の中で計算する。


銅貨一枚=百円くらいか?


じゃあ――




金貨一枚で、一千万……!?




「……は?」


思わず声が漏れる。


「どうした」

「いや……やばいだろ」


「……五枚あるんだが」

「だから御曹司かって言ってんだ」


「女神……雑すぎるだろ」


ありがたいけど、バランスを考えろ。


「両替するぞ」

「そのままじゃ払えねぇ」

「頼む」


やがて順番が回ってくる。


「次」


門番の声。


ダグがカードを見せる。


「商人ギルドだ」

「……確認した。通れ」


あっさり通過。


次は俺。


「三枚だ」


銅貨を渡す。


「……確認。通っていい」


門をくぐる。


「……おお」


思わず声が漏れる。


人のざわめき。並ぶ店。飛び交う声。


一気に、世界が広がる。


「ついて来い」

「服屋、紹介してやる」


連れて行かれたのは、小さめの店だった。


派手さはないが、質は良さそうだ。


「ここなら目立たねぇ」

「助かる」


中に入る。


「いらっしゃい」


店主が顔を上げる。


ダグが簡単に説明する。


「動きやすくて質がいいやつを」

「なるほどね」


店主が俺を見る。


「……確かに、その服は浮いてる」


何着か選ばれる。


落ち着いた色合いで、シンプルな作り。


「これでいい」


代金を払う。


「奥で着替えな」


言われるまま奥へ向かう。


服を脱いだ時、ふと鏡に目が止まった。




「……ん?」




映っているのは、自分。


だが――


「……誰だよ」


明らかに若い。


二十代前半。


腹も出ていない。


顔つきも引き締まっている。


「……マジか」


頬に触れる。


感触は確かに自分だ。


「やるじゃねぇか」


天井を見上げる。


「女神」




「ナイスだ」




新しい服に着替える。


鏡の中の自分は――


完全に、この世界の人間だった。


「……悪くない」


そう呟いて、外に出た。


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