『ハーブの奇跡と、一番の特等席』
『ハーブの奇跡と、一番の特等席』
### 1. 魔法の朝
翌朝、サチコさんの「あらっ!」という驚き混じりの声で、僕は目を覚ました。
サチコさんがキッチンの窓を開けて、庭を指差している。
「どうしたの、これ……。昨日まで元気がなかったローズマリーが、こんなに青々と……」
僕は庭の隅をチラリと見た。昨夜、ミミズクからもらった松ぼっくりを埋めた場所だ。そこを中心に、庭の草木がまるで深呼吸をしたみたいに、生き生きと葉を広げている。
チビが寝ぼけ眼でやってきて、僕の耳元で囁いた。
「先輩、あれ、本当に魔法だったんだね」
隣の庭では、ルークがシュッとした姿勢で、生垣越しにこちらの植物を観察している。
「植物の成長速度が通常の400%を超えている。……コタロウ、君の家の庭は、今やこの街で一番のパワースポットになったようだね」
### 2. サチコさんの決意
その日、サチコさんは仕事に出かける直前、いつもより長く僕を抱きしめた。
「なんだか、今日はすごく頑張れそうな気がするわ。コタロウ、ありがとうね」
サチコさんの声には、ここ数日の疲れが嘘のように、明るい響きがあった。
彼女が家を出た後、僕たちはいつもの警備体制に入ったけれど、今日は「侵入者」の様子も少し違っていた。
いつもは僕と喧嘩ばかりしている三毛猫のミケが、庭の塀の上で、穏やかな顔をして昼寝をしている。
カラスたちも騒がず、ただ静かに枝に止まって、光り輝く庭を眺めていた。
「おいおい、みんな休業中か?」
僕が呆れていると、ルークがフェンスの隙間から鼻を出し、真剣な顔で言った。
「コタロウ。平和というのは、戦って守るものだけじゃない。『そこにいるだけで皆が穏やかになる』……そういう守り方もあるんだと、今、僕のデータベースが更新されたよ」
### 3. 午後のティータイム
昼下がり、珍しくサチコさんが早く帰ってきた。
「今日は仕事が早く片付いたから、お庭でお茶にしましょうか」
サチコさんは小さなテーブルを庭に出し、僕とチビにも、とっておきのおやつ(ルークの分も!)を用意してくれた。
サチコさんがハーブティーを一口飲み、ふうっと深く息を吐く。
「幸せだなぁ……」
その呟きを聞いた瞬間、僕の胸の中に、温かいお湯が満ちていくような感覚があった。
泥まみれで鍵を探したり、迷子を守ったりするのもいいけれど、こうしてサチコさんが「ただ、そこにいる幸せ」を感じてくれること。それが僕たちにとっての、本当の「任務完了」なんだ。
### 4. 終わらない陽だまり
夕暮れ時、三匹は庭の真ん中で、黄金色の光に包まれていた。
ミミズクがくれた松ぼっくりは、土の中で静かに眠り、この家の根っこを温め続けている。
「先輩、次はどんな楽しいことが起きるかな?」
チビが僕の尻尾にじゃれつきながら聞く。
「さあな。でも、どんなことが起きても、僕たち三匹がいれば大丈夫だ」
ルークが優雅に頷き、僕は大きく一つ、満足のあくびをした。
僕たちの名前は、陽だまりの警備保障。
この小さな庭と、大好きなサチコさんの笑顔を守る、世界で一番幸せな守護者たち。
今日という日が終わり、また明日という新しい「日常」がやってくる。
僕たちはこれからも、鼻を鳴らし、尻尾を振り、この愛おしい世界を愛し続けるんだ。
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