『琥珀色のパトロールと、秋の「探し物」』
『琥珀色のパトロールと、秋の「探し物」』
### 1. 季節の変わり目の「落とし物」
朝晩の風に、少しだけ「寂しさ」と「お芋」の匂いが混じるようになった。
サチコさんはクローゼットから少し厚手のカーディガンを取り出し、僕の首輪を、秋らしいボルドー色の新しいものに替えてくれた。
「コタロウ、なんだか急に秋めいてきたわね。……あれ、大変。サチコさん、お気に入りのブローチをどこかに落としちゃったみたい」
サチコさんは玄関先で困ったように首を傾げた。それは去年のクリスマスに、あの「料理上手な男性」からもらった、大切なブローチだった。
### 2. 「鼻」と「目」の合同捜査
サチコさんが仕事に出かけた後、僕はすぐに生垣へ向かった。
「緊急事態だ。サチコさんの『心の宝物』が紛失した。ルーク、ソラ、チビ、捜索を開始するぞ!」
「了解。ブローチの材質は真鍮に琥珀だね」
ルークが冷静にターゲットを分析する。
「金属特有の冷たい匂いと、樹脂の甘い匂い……。ソラ、上空から反射光をスキャンしてくれ」
ソラが「ギィーッ!」と一鳴きして高く舞い上がる。
「任せろ。この時期の西日は眩しいが、キラリと光るものは見逃さない」
### 3. チビの「小さな大発見」
僕たちはサチコさんの昨日の歩行ルートをなぞった。
庭の紫陽花の茂み、ポストの裏、そして隣のアーサー先輩の家へ向かう道。
「先輩、ここにはないよ。あるのは枯れ葉と、誰かが隠したカピカピのパンの耳だけだ」
チビがゴミ箱の裏から顔を出す。
その時、上空のソラが急降下してきた。
「見つけたぞ! ターゲットは意外な場所にある。……コタロウ、お前のナワバリの『一番深い場所』だ」
ソラが案内したのは、庭の隅にある、あの「松ぼっくり」を埋めた場所だった。
そこには、僕たちが知らない間に、一匹のリスが冬支度のために穴を掘った形跡があった。ブローチは、そのリスが「綺麗な木の実」と勘違いして、穴の入り口に運び込んでいたのだ。
### 4. 琥珀色の夕暮れ
「よし、あとは僕の出番だ」
僕は慎重に土を掘り起こし、泥にまみれたブローチを優しく咥え上げた。
琥珀の部分が、夕日に照らされて、サチコさんの笑顔のように温かく輝いている。
僕たちはそれを玄関の靴箱の上に、丁寧に置いた。
泥がついたままだとサチコさんが悲しむから、ルークが自分の家のスプリンクラーの残水を使って、僕の口元を綺麗に洗ってくれた(少し鼻に水が入ったけれど、警備のためだ!)。
帰宅したサチコさんは、靴箱の上のブローチを見て、驚きのあまり声を上げた。
「えっ! ……あった! なんでこんなところに? コタロウ、あなたが探してくれたの?」
サチコさんはブローチを胸に当て、僕をぎゅっと抱きしめた。
その時、サチコさんのカーディガンから、お日様と石鹸のいい匂いがした。
### 5. 陽だまりの報告会
夜、庭の松ぼっくりの上には、少しだけ冷たくなった月光が降り注いでいた。
カメくんは、冬眠の準備を意識し始めたのか、少しだけ動きがゆっくりになっている。
「コタロウ、今日の任務も完璧だったね」
ルークが満足げに鼻を鳴らす。
「ああ。でも、リスくんには悪いことをしたな。代わりに、明日あそこにどんぐりを置いておいてやろう」
「賛成、先輩!」
チビが僕の背中で丸くなる。
陽だまりの警備保障。
失くしたものを見つけるのは、新しい幸せを見つけるのと、少し似ている気がする。
秋の夜長。僕たちは、サチコさんの穏やかな寝息を子守唄に、深い眠りへと落ちていった。
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