『大掃除の乱と、黄金色の初日の出』
『大掃除の乱と、黄金色の初日の出』
### 1. 宿敵「大掃除」の来襲
「さて、今日はやるわよ!」
サチコさんの宣言とともに、僕の平和な日常に最大の危機が訪れた。
人間たちが「オオソウジ」と呼ぶその儀式は、僕たちにとっての天敵——**「爆音を鳴らす吸い込み怪獣(掃除機)」**が家中を暴れ回る恐怖の時間だ。
「先輩! 怪獣が来たよ! 僕の尻尾が吸い込まれるー!」
チビがキャットタワーの最上階へ避難する。
僕は警備局長として、掃除機の前に立ちはだかり「ワン!」と一喝するが、やつは無情な音を立てて僕の足元の毛を吸おうとする。
(……くっ、多勢に無勢だ。ここは一時撤退!)
### 2. 縁側の作戦会議
僕たちは庭へ避難した。そこには、同じく家を追い出された(掃除機をかけられていた)ルークが、少しバツが悪そうに座っていた。
「コタロウ、君の家もか。……あの機械のデシベル(音量)は、僕の繊細な聴覚には少し刺激が強すぎるよ」
「まったくだ。でも、サチコさんは楽しそうに窓を拭いている。あれも一種の『清めの儀式』なんだろうな」
ふと見ると、サチコさんが庭の隅、あの「松ぼっくり」を埋めた場所の近くにあるハーブを丁寧に整えていた。
冬の寒さの中でも、そこだけは不思議と柔らかな緑を保っている。
「……あ」
サチコさんが何かを見つけた。
土の中からひょっこり顔を出していたのは、夏に僕が失くしたと思っていた、古いテニスボールだった。
「コタロウ、これ! 懐かしいわね、探してたのよ」
サチコさんが汚れを拭いて投げてくれる。
僕はそれを空中でキャッチした。古いけれど、サチコさんの匂いが染み付いた宝物。大掃除も、たまにはいいことをしてくれる。
### 3. 大晦日の静寂
夜、家の中は見違えるほどピカピカになり、お出汁のいい匂いが漂い始めた。
サチコさんは、僕とチビに「年越しのご馳走」として、特別に茹でたササミをトッピングしたごはんを出してくれた。
「今年も一年、ありがとうね」
サチコさんはテレビを見ながら、僕の背中をゆっくりと撫でる。
外では遠くで除夜の鐘が「ゴーン……」と響いている。
その音は、ミミズクの声よりも深く、重く、僕たちの心に「一年間お疲れ様」と語りかけているようだった。
### 4. 黄金色の約束
そして、元旦の朝。
サチコさんに起こされた僕たちは、眠い目を擦りながら庭へ出た。
隣の庭には、正装(新しい赤い首輪)をしたルークと、あの日出会ったアーサー先輩も主人の車で駆けつけていた。
「さあ、来るわよ……!」
東の空が、ゆっくりと、でも力強く燃えるようなオレンジ色に染まっていく。
やがて、眩しいくらいの光が僕たちの鼻先を照らした。
初日の出だ。
「ワフッ!」
僕は思わず、新しい太陽に向かって一回だけ吠えた。
それは「今年もこの家を守るぞ」という、僕なりの宣誓だった。
「先輩、太陽がサツマイモの色だね!」
チビがキラキラした目で叫ぶ。
「いや、あれはサチコさんの笑顔の色だよ」
僕は少し格好をつけて答えてみた。
### 5. 陽だまりの警備保障、二期目開始
サチコさんは新しいカレンダーを壁にかけ、僕たちに新しいおもちゃをくれた。
隣のルークは、主人の横でビシッと「初おすわり」を決め、アーサー先輩は静かに目を閉じて、新しい年の風の匂いを楽しんでいる。
守るべきものは変わらない。
でも、守る仲間は少しずつ増え、僕たちの絆はさらに深まっていく。
「陽だまりの警備保障」の新年御用始め。
今日もしっかりとお留守番をして、サチコさんが「ただいま」と笑って帰ってくる場所を守り抜こう。
さあ、コタロウ。
新しい一年のパトロールに、出発だ!
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