『聖夜の足音と、三匹のプレゼント交換』
『聖夜の足音と、三匹のプレゼント交換』
### 1. 「サンタ」という不審者の噂
サチコさんがリビングに、キラキラ光る小さな木を飾り始めた。
「もうすぐクリスマスね。サンタさん、来てくれるかしら」
僕は、その言葉を聞き逃さなかった。
すぐさま生垣へ走り、ルークとチビを招集する。
「……聞いたか。どうやら近々、『サンタ』という名の男が、夜中に屋根から侵入するらしい」
「なんだって!?」チビが毛を逆立てる。「それは重大な住居侵入罪だよ、先輩!」
ルークが冷静に、でも少し眉を寄せて付け加えた。
「僕のデータによると、その男は煙突から入り、赤い服を着て、トナカイという大型の偶蹄類を操るらしい。……コタロウ、僕たちの家には煙突がない。これは窓か玄関を狙われるということだ」
「よし、今夜は特別警戒態勢だ」
### 2. 聖夜の張り込み
クリスマスイブの夜。
サチコさんが「メリークリスマス」と言って寝室へ消えた後、僕たちはそれぞれのポジションについた。
* **チビ:** カーテンレールの上から、空からの侵入を監視。
* **ルーク:** 隣の庭から、トナカイの足音(蹄の音)をスキャン。
* **僕:** 玄関のマットの上で、正面突破を阻止。
真夜中。
しんしんと降り積もる雪の音しか聞こえない静寂の中、不意に「カサッ」と庭で音がした。
(来たか……!)
僕は音もなく立ち上がり、庭の窓へ向かった。
そこには影があった。大きな袋を背負い、白い髭を蓄えた……。
「……あ。アーサー先輩?」
### 3. 老騎士のサプライズ
そこにいたのは、サンタの帽子をちょこんと被せられたアーサー先輩だった。
その後ろには、例の「料理上手な男性」が、サチコさんの玄関にそっと何かを置いていた。
「驚かせてすまんな、若き騎士たちよ」
アーサー先輩が、生垣越しに小さく鼻を鳴らした。
「我が主人が、サチコさんとお前たちに贈り物を届けたいと言うのでな。隠密行動を手伝っていたのだ」
男性が置いていったのは、サチコさんへの小さな箱と、僕たちのための**「特製・特大サツマイモクッキー」**の袋だった。
「なんだ……サンタって、アーサー先輩のことだったのか」
チビが安堵して、カーテンの上からふわりと降りてきた。
### 4. 最高のプレゼント
翌朝。
目が覚めたサチコさんは、玄関に置かれた贈り物を見つけて、今日一番の笑顔を見せた。
「あら……! まあ、素敵……」
彼女が箱を開けると、中には綺麗なブローチが入っていた。
サチコさんはそれを胸に当てて、とても嬉しそうに、窓の外の雪景色を眺めている。
僕たちは、アーサー先輩から預かったクッキーの袋をサチコさんの足元へ運んだ。
「あら、コタロウ。あなたたちにもサンタさんが来たのね」
サチコさんはクッキーを三つ(ルークの分も忘れずに!)取り出し、僕たちに分けてくれた。
バターとチーズ、そしてサツマイモの香りが、冬の冷たい空気の中でふわりと広がる。
「先輩……サンタさんって、美味しいね」
チビがサクサクと音を立てて食べる。
ルークもフェンスの向こうで、上品に、でもとても幸せそうにクッキーを味わっていた。
### 5. 陽だまりのクリスマス
僕たちは気づいた。
サンタさんというのは、空から降ってくる魔法使いじゃない。
誰かを想う気持ちが、誰かのために形を変えて届くこと。その「気持ち」そのもののことなんだ。
サチコさんが僕の頭を撫でる。
その手の温もりが、僕にとっての何よりのプレゼントだ。
「メリークリスマス、コタロウ」
「ワン!(メリークリスマス、サチコさん)」
僕は、サチコさんの足元で丸くなり、窓の外に広がる真っ白な世界を眺めた。
庭の土の中では、あの松ぼっくりが、クリスマスキャロルのような静かな鼓動を刻んでいる気がした。
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