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陽だまりのコタロウ  作者: 匿名希望


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『出張・警備保障:高級マンションの影を追え』

『出張・警備保障:高級マンションの影を追え』


### 1. 遠征:サチコさんのデートに同行


今日は、サチコさんが例の「男性」のお家へ遊びに行く日だ。

「コタロウ、チビ。今日はアーサーさんのお家にお邪魔するのよ。お行儀よくしてね」


コタロウは首輪を整え、チビはサチコさんのバッグの中に忍び込む(サチコさんは気づいているけれど、黙認してくれている)。

隣のルークは、フェンス越しに「健闘を祈る」と敬礼を送ってくれた。彼は今日、飼い主とドッグランへ行く予定だが、心はこちらの任務にあるようだ。


車に揺られること三十分。到着したのは、僕たちの家よりもずっと背が高い、ガラス張りの建物だった。


### 2. 迎撃:郵便受けの「手強い住人」


マンションの入り口で、アーサー先輩が静かに待っていた。

「よく来たな。……早速だが、コタロウ。例の案件だ」


先輩が目配せしたのは、エントランスにある真鍮製の郵便受け。

そこにはアーサー先輩が言っていた通り、一匹の「カマキリ」が、鎌を振り上げて仁王立ちしていた。


「あいつ、あんなに細いのに、僕より偉そうだよ!」

チビがバッグから顔を出して威嚇する。


僕は一歩前へ出た。

(ここで吠えては、サチコさんの顔に泥を塗ることになる。警備員は、静かに問題を解決するものだ)

僕はカマキリの正面に座り、じっと目を見つめた。そして、鼻先をほんの少しだけ近づけ、柴犬特有の「重低音の鼻息」を放った。


「……フンッ!」


カマキリは一瞬たじろぎ、僕の眼力に圧倒されたのか、スルスルと植え込みの方へ退却していった。

「見事だ。……無駄な争いを避ける。これぞベテランの技だな」

アーサー先輩の称賛に、僕は少しだけ尻尾を高く振った。


### 3. マンション内部の「不可解な音」


家の中に入ると、サチコさんと男性はキッチンで料理を始めた。

いい匂いが漂い、僕たちがリラックスしかけたその時。


「……トントン……トントン……」


天井のどこかから、奇妙な音が響いてきた。

アーサー先輩が耳をそばだてる。

「実は、ここ数日この音が続いているのだ。私は足腰が重くなってな、高所の確認ができんのだよ」


「僕の出番だね!」

チビが弾丸のように飛び出した。

カーテンを駆け登り、棚を伝い、高い天井に近い換気口の隙間までたどり着く。


「先輩! 大変! 犯人は『風』だよ!」


隙間に、一枚の古い写真が挟まっていた。それが風に煽られて、壁を叩いていたのだ。

チビがそれを器用に咥えて降りてきた。それは、若い頃の男性と、まだ子犬だった頃のアーサー先輩が写った、色褪せた写真だった。


### 4. 琥珀色の晩餐会


男性がその写真を見て、驚きと懐かしさに目を細めた。

「あぁ、これ……アーサーが若かった時の。ずっと探していたんだ。ありがとう、チビちゃん」


サチコさんは誇らしげに僕たちのことを見ていた。

その夜、アーサー先輩が言っていた「特製チーズクッキー」が振る舞われた。


サクサクとした食感、濃厚なチーズの香りが口いっぱいに広がる。

僕とチビ、そしてアーサー先輩。三匹は並んでクッキーを齧りながら、窓の外に広がる都会の夜景を眺めた。


「コタロウ。場所が変わっても、守るべきものは変わらんな」

アーサー先輩の言葉に、僕は深く頷いた。


### 5. 帰り道の余韻


帰り道、車の中で僕とチビはぐっすりと眠った。

サチコさんは運転席で、楽しそうに今日あったことを思い出している。


僕たちのナワバリには、あの松ぼっくりが埋まっていて。

隣には頼もしいルークがいて。

少し離れた場所には、知恵者のアーサー先輩がいる。


「陽だまりの警備保障」の支部ができたような、そんな気分だ。

明日もまた、平和で退屈で、そして時々ちょっとだけドラマチックな、最高の日常が僕たちを待っている。


「ワフッ……(おやすみ、みんな)」


僕は夢の中で、サツマイモ色に輝く月を見上げていた。


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