エピローグ:家族の食卓
あれから、数年の歳月が流れた。
シルヴァーストーン伯爵邸の、陽光がたっぷりと降り注ぐダイニングルームでは、温かく幸せな光景が広がっていた。
「おかあさま、これ、おいしい!」
小さな手が、ぎこちない手つきで小さなSUSHを口に運び、満面の笑みを浮かべる。リズとカイの間に生まれた、愛らしい二人の子供たちだ。リズは、子供たちが食べやすいようにと、ネタを細かく刻んだり、少しだけ火を通したりした、特製の子供用SUSHを握っていた。
「ふふ、よかったわ。たくさんお食べなさい」
子供たちの頭を優しく撫でるリズの表情は、聖女と呼ばれたミアよりもずっと慈愛に満ち、穏やかだった。
その傍らで、カイが愛情のこもった眼差しで、妻と子供たちを見つめている。彼はリズの隣に座ると、彼女の肩をそっと抱き寄せた。
「本当に、君がこの領地に来てくれてよかった。君がもたらしてくれたものは、ただ美味しいSUSHだけじゃない。この国の食文化、領地の未来、そして…俺たちの家族。その全てだ」
「いいえ、カイ。あなたがあの時、私を信じてくれたからよ。あなたがいたから、私は前を向けたんです」
リズは幸せを噛みしめるように、夫の胸にそっと寄り添う。
かつて絶望の終着点だと思った港町は、最高の宝物で満ち溢れていた。信頼できる仲間、愛する夫、そしてかけがえのない子供たち。復讐の刃ではなく、しゃりと魚を手に取った彼女の選択は、間違いなく正しかったのだ。
リズが始めたSUSHという食文化の波は、今やヴァイスラント王国を越え、潮風に乗って大陸中に広まろうとしていた。彼女たちの幸せな物語は、まだまだ始まったばかりである。




