〜黒龍城ダンジョン〜
ヘレナモルフォがドロシー宅に慣れてきて2週間が経った、そんなある日の眩しい朝日がカーテンの切れ目から入り込んで蝶は目が覚める。よく話している怜という男の子が布団にいない事に気づきふらふら部屋の扉を開ける。今日は風が強めでボサボサ乱れた髪の毛を更に乱す。遅れて目がとても冴えている緑埜 こあがヘレナの横へ。
「どうしたんでしょう怜くん、こっそり薄目でドロシーさんの杖持って出ていくのは見たのですが」
「え? もしかしたら、あれかな」
「あれとは?」
「ううんなんでもない、心当たりあるから探してくるよ」
「はーい、ねむ」
やっぱり眠いこあは家に戻り私は断崖が聳える海辺へ向かう。この前の色んな事をやってしまった森を抜けると一気に視界が開け煌めく水平線が広がる。魔法を出したいのか杖を振り回す怜の姿があった。それを見かねてヘレナは声をかける。
「どうしたの、刀みたいに杖振り回して」
「修行」
「うん、見てるね」
気のせいにも思える杖の振りに切れ味が宿っている、ちょっぴりずつ風の威力が上がっているのだ。境遇が似ているとやる事も似てくるのだろうかと微笑ましくモルフォの羽も光らす。羽の上部にまとっているイナズマ型の天使の羽はフルアクセル・リング社の者の証で各々誇りとして身につけている。怜にとっても魔女という誇りと考えた。
「折角だし修行終わったらダンジョンでも行く? レベル上げだね」
「いってみる!」
「うんうん! あと怜くんは剣士向きだね。後で初心者用の剣買ってあげるよ! 珍妙なヘレナにお任せ!」
「……自分で選ぶ」
その返答に笑顔になって吹き出す、生真面目な怜らしいとくすくすしばらく微笑んだ。
———
——
—
一方その頃、ある城下町で謎のお札がイタズラで貼られまくるボヤ騒ぎがあった。
「おうおうツクモ!! 貼りまくれい!」
「イタズラ楽しい! ノリ案外いいんですね蓮さん!! 姉貴!」
「うるせ!」
次々と龍の朱印が押されているお札を建物やら柱やらあちこちへ貼る。住民が剥がしたり連やツクモを追い回したりで数日間これだ、ちょうどその騒ぎの中ドロシーとこあちゃんがやってきた。
「なんですか?? 龍のお札だらけです」
「あー……察し、ちょっと待ってねこあちゃん」
ドロシーが先端絵の具まみれの大きな筆を出すと円を描いて赤い丸に具現化させる、それが炎の輪となり特に札の多い場所へ火の粉を飛ばした。結果大爆発。
「みぎゃああああああああ!!!」
「にゃあああああああ!!! ですわー!」
「何やってんのよあんたら、ったく」
呆れたドロシーはこあちゃんの頭を撫でながら深くため息をつく。跡形もない城下町をただ眺めるしかない。そこにぷりぷり怒りながら黒焦げの蓮がやってきて詰め寄る。
「何してるんじゃそこの禍々しい魔女!!」
「こちらこそよ、何爆破の札貼ってんの!!! こあちゃんやっておしまい!」
「なんで!?」
急な無茶振りにドロシーの手首を咄嗟に掴んでしまう、かわいい。でもなんでそんな事を、と尋ねた所ツクモが魔王城ダンジョンが地下にあると誇り1つ無く言う、誇り全く無かった。しかしツクモが後ろ方向に指を差して大穴があると気づく。
「これ、これがあるとお狐様が言った!! 言ったもーん!」
「分かったよごめんね、って魔王ダンジョン?」
大きな筆ではなく箒にに跨って前触れ無く魔王ダンジョンへ飛び込んでしまう、慌ててこあちゃんも飛び込んでしまった。
「分からん。ま、わしらも行こうぞ」
「わたくしも?」
「うむ! 突撃ぃー」
「えええええええ!? 無し、ぶっぶー。っていってービンタするなー! 置いてかれた。ましたわー!」
遅れてヘレナと怜も来た頃にはツクモも大穴へ入っていた。




