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 最初は膝の高さ程度だった炎の壁が、一瞬で青い山々さえも見えなくなってしまう。


「ユウガ! 剣技に磨きがかかってるわね!」


 リリアは叫んだ。数秒でも意識が自分に向けば、少しでもケイが長生きできるかもしれない。

 でも、それだけじゃなかった。王族として、姉として、責任を取るべきだと思ったのだ。


「あなたは自慢の弟だと思ってる!」


 ユウガは怒りに飲まれていた。だが、それでもリリアの声を聞き逃すことなんてあり得ない。一歩、また一歩と少しずつ近づいていく。


「ユウガさん!」


 ケイはユウガに抱き着いた。彼の体は常人の数倍の熱量だった。自身の肉が焼ける痛みを耐え、踏ん張りを利かせたがそれでもユウガは止まらない。止まるはずもない。

 剣を軽く振るうと刀身が燃え盛る。


「ケイ、そしてユウガ。あなたたちを愛しています」


 終ぞ聞けなかった言葉だった。いつか聞きたいと願っていた言葉だった。

 ユウガの動きが止まった。

 殺すなんて気持ちは失せてしまった。愛を返してくれるのなら。返してくれたのなら、怒りよりも後悔が押し寄せてきた。諦めよりも積極さがあればリリア様の隣は俺だったかもしれない。それでもケイだったかもしれない。

 立つ気持ちすら、消え失せてしまった……。




 曙が薄っすら見えてきた朝方。霧も少し出ている。

 ケイは畑作業をしていた。元々ここで管理していた分の畑と、リリアと結婚してから新たに作った畑がある。朝からかなり重労働だが、リリアのためを思えば辛くもなんともなかった。

 朝日が山肌から差し込み始めた頃、彼は畑のそばに置かれている手紙に気づいた。

 それはユウガからの手紙だった。慌ててリリアを起こしに行った。


『リリア様、ケイさん。ユウガです。俺は自分自身に呪いをかけました。リリア様がかけられていた呪術です。またいつか、二人に襲い掛かるかもしれない。だから俺は安全策として、この地図を残します。いつかまた、面と向かって話せるようになったら連絡します』


 同封されていた地図には、国境を越え旅を続けているユウガが見えた。




「兄さん、本当に良かったの?」


「ん?」


「本当に、あのまま帰ってよかったの?」


「あのまま居たら、俺はずっと嫉妬し続けるかもしれない。だから、一旦距離を取る。許すとか許さないとかじゃなく、俺が受け入れられるまで何もしない」


「……そっか。ところで兄さん。これって連絡も無しに国外逃亡ってことにならない?」


「あっ……。次の町で手紙出そっか……」

一応ここで完結と言う予定ですが、これからの話も考えてはいるので忘れたころに投稿してるかもしれません

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