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王城

 勇者32番ユウガ・シャルモンは魔王討伐を果たしました。魔王討伐の報酬として婚約者である第5王女リリアとの結婚が大々的に認められ、内心跳ね上がっていたのもつかの間。国王からリリアが恋愛結婚を強行したとの報告を受け、ユウガは絶望の底へ沈み始めたのです。



「へ、陛下? 陛下と雖も冗談は程々にしてください、本当に怒りますよ!」


「冗談でこんなことは言わん!」


 酒場のテーブルが軋む。


「今は一旦慰安旅行という体で辺境に送っている。謝罪の意としては足りないかもしれぬが、簡単な呪いを……ユウシャ?」


 片手剣だけ持ち、ユウガは酒場を出た。魔王討伐の証拠として、リュックサックの中には魔王の死体が入っていた。だから、わざわざ持ち歩こうとはしなかった。もう意味などないのだから。



 意気消沈のまま王都を歩いたユウガは、生まれ育った孤児院にたどり着いた。


 夜が明けた。何があったが覚えていないが、いつの間にか孤児院の一室に居た。部屋の隅で膝を抱えて寝たらしい。疲れたはずなのに、何も感じない。

 部屋を出ると、子供たちの元気な声が聞こえた。


「起きたのかいユウガ」


 声の主は孤児院の管理人だった。シスターと呼ばれている。


「……シスター、ごめん。昨日のことは何も覚えてないんだ。急に押しかけたんだろうけど、本当にごめん」


「良いってことさ。お前はいつになっても私の子供だからね。それよりあんな寝方で体は痛くないのかい?」


「いいや。きっと旅の中で慣れたのかもね」


「そう、それなら良いんだけど……」


 突然、ユウガに子供たちが飛びかかってきた。


「ユウガ兄ちゃん! 遊ぼ!」


 ユウガは魔獣を狩る旅に出てからも定期的に帰ってきていた。その度に各地の特産品を持って来たり特製のぬいぐるみを渡したりしていたが、今回は何もない。


「ごめんなぁ皆、今日は何も持ってないんだ」


「別にいいよ! 魔王に勝ったんでしょ! シスターから聞いたよ!」


「う、うん。また今度ぬいぐるみでも作ってやるから、今はクリスと遊んできな」


 クリスはこの孤児院で働いている女性だ。元々この孤児院の出身で、ユウガは妹のように接してきた。血の繋がりは無いが、本当の家族だと思って過ごしてきた。


「クリスなら今は王城で働いてるんだよ」


 シスターの発言にユウガは驚いた。


「確かに計算が早いとは思っていたけど、城で雇用されるほどだとは……」


「あー……一度城に行って会って来なさい。王様に報告しなきゃいけないこともあるでしょう」




 ユウガが王城に着くと、いつもより早く通された。勇者はその強さから弱体化措置をしなければ城の中へ入ることは叶わない。

 だが、いつもより力が入らない感覚があった。警戒されているとユウガは実感した。

 クリスを探す前に、ユウガは玉座の間へ案内された。重厚感のある空間で、空気が重苦しい。


「……ユウシャよ、昨日は済まなかった。本日改めて説明しようと思い、ここへ呼び出した」


 何かを言うでもなく、ユウガは立ち尽くしている。本来なら無礼だが、誰もそのことを指摘しようとはしない。


「まずは親として、国王として、謝罪したい。リリアは子供の頃から王族として何をすべきか叩き込んでいた。だが、私が親としての愛情を上手く注げなかったのだろう。このような事態が発生して申し訳ない」


 国王は玉座から降り、誰も護衛につく様子もなくユウガに近づいてきた。


「言葉だけではなく、行為で謝罪の意を表したい。リリアとその相手には軽い呪いを刻んだ。2人がどこに居るか分かるようになる代物だ」


 ユウガの手に地図を握らせ、国王はまた頭を下げた。


「あとは君に全てを任せる。たとえどのような事になろうが君を悪いようにはしないと誓おう」


 地図を開き、ユウガは涙した。


「……こんなことになるなら、勇者になんてならなければ良かった」

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