14話 映画の後でお仕事 6
「すみません、どうしたらいいのかよく分からないので、ゲームについて調べてもいいですか? それと、脈拍計をつけてもいいですか? キルコさんがドキドキしたかどうかを明確にしないと勝敗が決まらないと思うので。キルコさんの言うドキドキが心拍数の数値でいうとどのくらいなのかも明確にしましょう」
脈拍計は困る……! 一発で終わってしまう!!
「調べても構いませんので、脈拍計はやめてください。このゲームでは普通はつけませんので。正規の方法に則って、自己申告します」
皇は了承して、スマホで調べはじめた。「勝ち方」と書かれたものや、実践動画を五分ほど漁る。ぷつぷつと、「今までの統計から考えて……でもこれは…………」などと呟く。ドキドキとは無縁の研究者の形相だった。
「見つめ合うというルールはそのままという解釈でよろしいでしょうか? それと、言葉以外の行為をするのも可能ですか?」
「お任せします」
「分かりました。では……」
皇が、スマホをポケットに入れた。
やさしく私の右手を取る。そして、自分の胸の近くに引き寄せた。
「……愛してる」
うっは…………! お、王子風⁉ さ、さっきまでと違いすぎる……! 萌え……っ!
ドキドキして、息が浅くなる……!
息を止めようとしていると、手を引かれた。右手が皇の肩に乗せられる。体が皇に近づく。
「愛してる」
ひ〜〜〜〜〜〜っ!!!!
こ、こんな近い距離で、こんないい顔にそんなこと言われたら、やややや、やばい!!
私は、グッと下唇を噛みしめた。耐えろ! 耐えろ私……!
そっと、頬に皇の手が伸びた。ドクンと心臓が跳ねる!
0.1mmの隙間から、皇の手の熱が伝わってくる……!
「……愛してる…………」
ぎゃあああああああ〜〜〜〜!!!!
やばぁああ〜〜〜〜い!!!!
心臓が、ドッドッドッとすごい音で鳴り響く。ドクドクしすぎて、体が動かない! 息さえも、しているか否か分からない……!!
皇の指が、耳を触った。
「ひぇッ⁉」
皇の顔が、近づいた。
鼻と鼻が重なるほど、近い……!
そのまま、皇は私をじっと見つめた。
目の中に、閉じ込められそうになる。
「――……愛してる……」
んぅ――――――ッ!!!!
思わず、肩にきゅっと力が入った。
すべての時間が止まった。
じっと見つめられたまま。
ぶわっと、頭の上まで熱が込み上がった。ばっと顔を両手で隠す。恥ずかしい…………!
「続けます。顔を見せてください」
……ここで「はい」と言えば、さらなる萌えの供給が……!
しかし、これ以上は、もう、心臓がもたない…………っ!
「………………わ……私の、負け、です…………」
さらば日本酒……。
がくりとうなだれる。やっと、心臓の音が聞こえてきた。バクバクが止まらない。
恐るべし、萌えの供給過多……。明日からはほどほどにしよう……。
はあ…………と、皇の長いため息が聞こえた。ちらりと見ると、両手で顔を覆い、うなだれていた。




