14話 映画の後でお仕事 5
「では、ゲームをしましょう。それで皇さんが勝てたら、一緒に来てもらっても構いません」
「分かりました。なんのゲームですか?」
「愛してるゲームです」
見つめ合い、順番に「愛してる」と言い合い、照れたり笑ったりしたら負け。
ニッポンDANJIがデビューしたての頃、緋王様を含むメンバー五人が動画配信でやっていたゲームだ。緋王様が十八歳とは思えない最高の色気で圧勝した。そしてその動画が爆発的な人気となり、一気に世間の人気を掻っ攫ったのだった。
緋王様はこれを最後に甘い言葉をホイホイと言わないようになったので、緋王様の貴重な甘々胸キュン動画として私は何度も見まくっていた。なんなら昨日も見た。緋王様が「愛してる」と囁くたびに「オッホ!」と噴き出し飛び跳ね倒れた。
つまり、ゲームついでに萌え供給もできる、一石二鳥のゲームということである!
だが私は、さらなる萌え供給と勝利を掴み取るために、特別ルールを追加した。
「本来は言い合うゲームですが、皇さんが私に言うだけにします。私をドキドキさせたら、皇さんの勝ちです」
このルールなら、私が「照れていない」といえば私は負けることがない。完璧。
皇は、口元を覆って少し考えた。
「……分かりました」
「では、はじめましょう」
最高の萌え供給を!
私がじっと見つめると、皇は目をつむって上を向き、すうっと息を深く吸った。はあ……と吐き出し、真剣な顔で私を見た。
ドキッ……。
「……あ、………………。
………あの、『愛してる』だけですか?
『愛しています』、はだめですか?」
なんだそれは!!
どっちでもいい!
いや、よくないか。台詞の選定は大事だ。
「『愛してる』だけです」
いつも敬語の皇がタメ口で愛の言葉を囁いたら萌える。
「分かりました」
皇は、再び目をつむった。そして、目を開くと、さっきよりもまっすぐ――覚悟を決めたような顔で、私を見据えた。
「――愛してる」
ドキッ……!
ま、まだまだ……。こんなのは予想の範囲内!
まだ、顔がいいだけだ!
「……愛してる……」
さっきより少し静かな声音……!
うっ…………! 胸が締めつけられる……っ!
だが、まだまだ……! まだ、いける……!
皇が、黙ってじっと私を見つめる。
謎の沈黙。だが、無性にドキドキしてきた……!
でも、ここで倒れるわけにはいかない……!
負けず嫌いの皇なら、きっと、もっと萌える「愛してる」を繰り出してくるはずだ……!
「…………あの、いったん、すみません」
また「あの」かっ!
「あ」で期待してしまう私の気持ちを返せ!!




