14話 映画の後でお仕事 1
リンリンリンリンリンリンリンリン!
――うるさい!
けたたましい黒電話の音に起こされる。緋王様の主演映画を一作目から七作目まで観ながら萌えて、幸せに寝落ちていたというのに!!
部屋が片付いてしまい、黒電話があらわになっていたせいだった。この電話に出たら、昨晩空けた酒瓶二本とつまみのゴミに埋めておこう。
沈鬱な気持ちで受話器を取る。
「おはようございます、ハデス」
『おはよう、キル・リ・エルデ。で、まだ?』
「何度もお話ししていますが、この件は成功次第私から連絡いたしますので、他のお仕事をしてお待ちください。
ああ、他の仕事といえば、はぐれ死神のジャックが、私の仕事の邪魔をして、あやうく死神の存在を人間に知らしめるところでした。私目当てで私の闇の周りにいるか、日本に来ると思います。一刻も早く捕えてください。私も善処しますので。お互いに頑張りましょう」
ガチャン。
ふん。これでジャックはますます追われる立場となり、しばらく私に近づけまい。ハデスも、2000年の失敗を突きつけられたのだ。私にしつこく、なおかつ厳しく要求するのを控えるだろう。
そもそも、ハデスはジャックを捉えることに2000年も失敗し続けている。それなのに私ばかり責めるのはおかしい。たった三ヶ月様子見していた私を責める資格はハデスにはない。
そう思ったら気が晴れた。そうだ、ゆるゆるやればいい。一日一仕事は必ずしているのだし。
私はもう一度ソファに寝転がった。
こんなに晴れやかな気持ちで今日一日を――そして、何よりも大切な今日の夜を過ごせると思うと、幸せでならなかった。




