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死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
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13話 筋肉がお仕事 4

 昼休みのはじめに文化祭関連の集まりがあるとかで、私は先に屋上に向かった。

 フェンスから下を眺めながら、今日はどうやって皇を殺そうかと、ぼんやり思案を巡らせる。


「よぉ、キリィ!」


 背後からの声に驚き振り向く。我が校の制服を纏ったジャックが眼に映る。

 ガシャン!

 ジャックの両手が、私の逃げ場をなくすように、乱暴にフェンスを掴む。

 ジャパニーズ・壁ドン、両手バージョンだ……。

 なんてことだ……。日本の素晴らしきサブカル文化から生まれた萌えシチュエーションのはずなのに……!

 萌えない! まったく萌えない! 嫌悪感しかない!! 心臓の奥がゾワゾワする!


「離れて、気持ち悪い!」


 足で蹴り飛ばしてやりたかったが、こいつの分厚い筋肉に効くはずがない。靴が汚れるのもいやだ。


「そう言うなって。お前の仕事、手伝いに来たんだぜ?

 皇 秀英。あいつ、標的なんだろ?」


 私のいない間に私の部屋に入って資料を盗み見たのか。


「必要ない」


「東洋支部の死神たちが十年間逃し続けた標的、だっけか? さすがのキリィでも手こずってんだろ? 仕事を受けた日から三ヶ月も経ってるじゃねぇか。いつものキリィなら、一瞬でかたをつけるのによぉ。キリィ一人じゃ難しいってことだろ?

 俺があいつを引き付けておいてやる。その隙に魂を回収しろ。俺が手伝ったことは報告しなければいい。手柄は全部キリィのものにすればいい。俺はお前のためならなんでもできるぜ。愛してるからな」


「結構。私一人でできる。余計な手出ししないで」


「いいから一回やってみようぜ? 絶対うまくやってやるからよ。

 あーキリィの体がやわらかくて、やるやる言ってたらムラムラしてきたぜ……

 なぁ、絶対うまくやってやるから、先に一発ヤらせろよ。断り続けてきたことを後悔するくらい、めちゃくちゃに愛してやるぜ、キリィ」


 舐め腐って。

 体の底から、怒りの雷が湧き上がる。

 黒焦げにしてやる――!

 と、思ったその時だった。


「キルコさんから、離れろ」


 皇の手が、ジャックの肩を掴んでいた。


「来たな」


 ジャックはフェンスから手を離すと、肩にある手を振り払い、皇と向き合った。


「制服を着て侵入してきたのか」


「黙れ人間。俺と、決闘しろ!」


 決闘?

 それが「引きつけておく」の意味だったのか?

 馬鹿すぎる……。


 皇は、表情一つ変えず、蔑むような目でジャックを見ていた。


「理由を端的にどうぞ」


「人間ごときが俺に指図するな。キリィのためにお前を殺す。それだけだ!」


 皇は首を傾げた。だが、話が通じないと察して諦めたのだろう。

 冷静にジャックを見据えた。

 


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