13話 筋肉がお仕事 3
火曜日。
月曜日が文化祭の代休だったために、久しぶりに生皇を見ることができた。
うちわを掲げ、『顔みせて!』といつものように素顔を拝む。メガネを取り、前髪を掻き上げる皇に今日も萌えた。朝のハデスの電話攻撃によるストレスが半分減った。
さて、今日はなんのファンサを頼もうか。
毎回同じだと貴重感が薄れるので、このごろは新しいものを取り入れているのだが、やり尽くした感がある。
まだやっていないもの…………。緋王様のライブの時に見かけたものを一つ一つ思い出す。
脳裏にすごいものが浮かんで、思わず、クワッと目が開いた。
『脱いで!』
あのうちわはすごかった。
過激。だが……分かる。
拝みたい。拝み倒したい。
衣装をはだけさせ、美しき肉体を魅せる緋王様のライブ映像に一体何度悲鳴をあげたことか!
この前のライブでは叫びすぎて頭が真っ白になった……!
推しの体は世界一美しいっ!!
私はジャックみたいなムキムキした体は大嫌いだが、緋王様のようないわゆるジャパニーズ・細マッチョは大大大大大好物である。
控えめな筋肉こそ美! 細マッチョイズ造形美!
皇の体も、美しいのだろうか……。
ハグをした時、なかなか引き締まっている感じはした。だが、ただ細身なだけかもしれない。
見たい。気になる。でも、『脱いで!』と要求するなんて、そんな下心を晒す下品なことはしたくない。
そういえば、あと三週間ほどでプールの授業があるという。そこで拝めるのを待とう。
だとすると、今日は何を要求しようか……。
……ん?
そうだ。皇の体の一部分で、素晴らしく美しい部位があるではないか。しかも、そこを見せろと言ったところで『脱いで!』よりも下心感がない!
私ははやる胸に動かされるようにノートにサラサラと要求を書いた。
そして、ちょうどこちらを振り向いた皇に、ノートを見せた。
『鎖骨見せて!』
皇はポカン、とした。はてな顔のまま、シャツのボタンをぷちぷちと外す。
そして、ちらっと襟をめくった。
ぐふっ! よだれが……!
体の底から萌えが込み上がる。口を押さえて慌てて呑み込む。
…………はぁ。
ご馳走様です……。




