13話 筋肉がお仕事 2
んっふふふ……。
早速、スマホで皇を大量に撮らせてもらった……!
愛する自室で、黒いソファに寝そべりながら、私はスマホの画面に見入っていた。
カメラ目線、どこか遠くを見ている横顔、慣れないピース、無表情で完璧な角度の指ハート、そして微笑と指ハート! 笑顔がぎこちなくて可愛い! 萌え!
指を画面の上で滑らせるだけで、いろんな皇が次々に出てくるのが幸せでならない! 顎のラインが綺麗すぎて。これをつまみに酒が飲める!
ツーショットも撮ったが、皇だけの写真を眺める方が幸福度が高い。消してしまおうかと思ったが、なんだか惜しい気もする。表示の順番を変えられたらいいのに。
「キリィ〜〜〜〜!!」
……ジャック。いい気分の時に、のこのこと……。
ジャックは、「相っ変わらず、足の踏み場がねえなぁ」と言いながら、床に散らばる日本酒の瓶を蹴り散らし、私にずかずか近づいてきた。
「近づかないで」
「これを見ろ! ジャパニーズ・土下座!!」
「死んで」
「そんなぁ……。
じゃあ、また欲しいもの言えよ! なんでも持ってきてやる! だから、機嫌直してくれよ、キリィ~!」
「何をしても、私を汚らわしく触ったことは一生許さない」
「好きな相手の体なんて、見たいし触りたいし、むしゃぶり尽くしたいだろ、普通? キリィも本当は俺の体に触りたいって思ってるくせによぉ……。
ほら、いいぜ? 素直になって触れよ、この筋肉を! 愛するキリィにならいくらでも」
「気持ち悪い。死んで」
「とか言って、俺のやったスマホ、嬉しそうに使ってんだよなぁ……。ほんと、可愛い女だぜ。俺のやったもんも飾りまくって…………って、あ⁉
あいつ! キリィの隣にいた野郎! なんで写真飾ってんだ⁉
も……もしかして、キリィ…………! あ、あああああ、あの男を!?!?」
「うるさい」
床の上に散らばっていた空き瓶とつまみのゴミがゆらりと浮かぶ。そして、一斉にジャックの方に向いた。
「去れ!」
ゴミたちがジャックに勢いよく飛びかかる。
「ギィヤァアアアアアアアアア!!!!!」
ジャックは一目散に逃げ出した。ゴミは永遠にジャックを追っていった。
ふぅ。サッパリした。久しぶりに掃除ができた。
さて、「ひおさんぽ」を観て、心も掃除をするとしよう。




