12話 文化祭で推し事 2
「何やってるの」
チャイナドレス姿で写真を撮られていた時。文化祭運営委員に呼び出され、最終打ち合わせに行っていた皇が帰ってきた。
いつのまにか他クラスからも観客が集まってきていたようで、見知らぬ豚どもが廊下にびっしり詰まっている。皇は、それらを掻き分け、なんとか教室に入って来たらしい。
メガネがずれてまったからか、皇はメガネを外し、前髪を掻き上げた。
うっ……。今日もいい顔…………!
皇が、自分の着ていたブレザーで、私の肩を包んだ。
皇のぬくもり。キュン。
「最終準備の時間だから、みんな着替えて。他のクラスのみんなも、あと二十分ではじまるから、急いで戻って」
皇が冷たい声でそう言うと、豚どもはのろのろと自教室へ帰っていった。我がクラスの豚どもも、ぶうぶう鳴きながら自分の赤い衣装を手に取った。
「何してたんですか」
「ジャパニーズ・コスプレです。衣装係に着て選ぶよう言われて」
「元凶は衣装係ですか。あとで先生に報告しておきます。ひとまず、これが本当の衣装だと思うので、着替えて来てください」
渡された衣装は、体にピッタリと貼りつく白いロングドレスだった。大きく開いた胸に、マントのクリップがついている。胸が窮屈な上に、クリップが食い込んで鬱陶しい。
「い、いい…………っ!」
「なんてプロポーション……!!」
「まさに、女神……!」
「最高です…………っ!!」
「たたた、たにま……! えるでさんの、たにま…………!」
「バスト98、ウエスト54、ヒップ86とみた……!」
パシャパシャと、赤い衣装の豚どもが膝をついて私を撮る。
その時、皇が更衣室から帰ってきた。
はぁ……っ! まるで、アイドル……ッ! 豚どもと同じ衣装だが、全然ベツモノに見える……っ!
緋王様のステージ衣装姿といい勝負! つまり、美しく、かっこいい!!!!
私は、運命写真機で、皇を撮った。私を見たまま呆然と立ち尽くしている皇が写真に浮かび上がる。いい……! 皇のアイドル衣装ブロマイド、ゲット!!
「エルデさん! こっちを!」
「いやいや、こっちを見てください!!」
私に向けられるスマホたちを見て、私は羨ましくなった。
いいな、スマホ……。スマホがあれば、無限に今日の皇を撮れたのに……。




