11話 文化祭準備でお仕事 6
実験を十ほどし、ようやく解散となった。
下駄箱に行くまでの道は、窓から夕陽の光が差し込んでいた。
豚どもがもぞもぞと話をしている後ろで、私の隣にいた皇がひそりと話しかけてきた。
「すみません、彼らがいることを想定していなくて。今、少し質問してもいいですか」
「いいですが、メガネは外してください」
皇は、おとなしくメガネを外した。
キュン……。
もう、ずっと外していればいいのに……!
「では、一つだけお願いします。
キルコさんは、アイドルで推しはいますか?
以前キルコさんは、アイドルが好きだとおっしゃいました。推しという概念も、そのアイドルから来ているのではないかと思い、可能であればそのアイドルへの感情との比較検討ができればと思い、聞かせていただきました」
「います。ニッポンDANJIの、緋王様です」
皇の足が止まった。
振り返って見ると、凍りついたような顔で立ち尽くしている。
少しすると、唇をきゅっと結んだ。
「……分かりました。後日、具体的な感情を聞かせていただきたいと思いますので、準備の方をよろしくお願いします。
絶対に、彼への気持ちとは違うと、証明しますので」
皇の瞳に炎が灯った。
最高温度の、青い炎が。
かっこいいぃ…………っ!
キュンキュンしながらドキドキする。心臓が、幸せで満ち溢れる。
やはり推しへの愛こそ、最も深く、確かな愛である。




