(番外編)10話 皇 秀英の重要会議 6
ただ、譲れない条件があった。僕は画面にプランAを映し出した。
「昼食の時間に僕への気持ちを確認しようと思っているから、この時には二人きりにして」
「分かったわ。ただし、むやみに接触しないこと。いいわね?」
「しないよ」
「はぁ。もう本当に、秀ちゃんが人を好きになるなんて、きっと最初で最後よ。彼女を逃したら、お嫁さんと一緒に料理をするという私の夢が潰えるわ……もうほとんど諦めていたのに……。何がなんでも、お付き合いして、結婚してもらうんだから!
秀ちゃん! お付き合いして関係が安定するまでは、絶対、野獣は封印ですからね! 愛とは理性。そしてやさしさ! この言葉をしっかり胸に刻みなさい!」
どうしたんだろう。いつもの母さんと違う。いつもの母さんなら、僕が何かしたいと伝えると、「あら、そう。頑張って」で終わるのに。
それにしても、野獣的行動とは? 下心をそう比喩しているのだろうか。
「愛」については、恋愛だけでなく、母性愛、隣人愛、友人への愛などの定義を分析して本質を理解しているし、それをもとにどのようなふるまいが適切かを研究したから問題ないのに。
「あ、坊ちゃん。一ついいですか」
「はい、どうぞ」
「着物と茶道以外の内容について、全部カチカチ決めないで、当日にキルコさんに決めてもらえばいいんじゃないですか? 自分で決めてやるのが『楽しい』の基本です」
「たしかに、キルコさんは自由な方なので、そうかもしれません。では、茶道以外のものは選択式にします」
「あ、料理は、リクエストありますか?」
「そうね、事前に苦手なものや食べたいものを聞いておくといいかもしれませんよ」
「ほかに何かお手伝いがあればやりますよ。茶室の飾り付けとか」
「なるほど、聞くようにします。
茶室の飾り付けは僕がします。お手伝いをお願いしたいことは明日朝までに準備します。
他はありますか」
「いいえ」
「大丈夫かと」
「まあ、あとは当日柔軟にね」
「お母さんも腕によりをかけてお料理をするわ!」
「では、これで進めます。ありがとうございました」
閉じたパソコンの熱を抱きしめ、息を吐いた。
女性視点の意見をもらえてよかった。もう少し詰めよう。
そして、完璧な日にする。彼女の気持ちを確かめて、次の一歩に進めるように。




